猫たちの惑星
人々の生態 -博士-
「わたしネコの耳が欲しいの!」
6歳の女の子とその母親が診療所にやってきた。
母子ともに、いかにも高価そうな人工ミンク毛皮のコートを着ている。
「この子ったら、朝から晩までネコ耳のことしか考えてませんのよ。まあねぇ、こんな年頃ですから仕方の無いことですわ。それでですね、わたくし思いますの。小さい頃に叶えられなかった願いは、例えそれがどんな些細ことであれ、その人の一生に消えることの無いシミを残すのですわ。わたくしこの子にそんな思いはさせたくありませんの。そのためにも先生の技術をお借りしたいのです」
付けまつげとアイシャドウで、顔の半分くらいが埋め尽くされているのではないかと思われるご婦人は、そう言った。
特に反対する理由も無かったので、すぐに施術を始めることにした。
「ちょっとチクっとします」
女の子の腕にナノマシンを注入する。
青白く光る液体だ。
次に、用意しておいたネコの体に同じもの注入をする。
試験用に繁殖させた白ネコだ。
そして女の子とネコに「光の部屋」に入ってもらう。
「少しジッとしていて下さいね」
コントロールパネルを操作し、システムを立ち上げる。
異性体融合 対象《人》 目的物《猫の耳》。
各種パラメーターを設定し、赤い色をした開始ボタンを押す。
光の部屋の照明が点灯し、そのエネルギーと光量子情報を得てナノマシンが活性化する。
ネコの体内に注入したナノマシンが、耳の部分に集中し、細胞組織を分解・蒸発させていく。
蒸発したネコ耳の成分は、呼吸とともに女の子の体内に侵入し、頭皮の狙った部分に蓄積し、徐々に耳の形を生成していく。
神経の接続も滞りなく行われ、30秒ほどで施術は終了する。
既に女の子の意志で自由に動かすことが出来るはずだ。
「うわーい」
扉のロックを解除すると、女の子は自分の頭に生えたネコ耳をつかみながら躍り出て、嬉しそうにクルクルと回った。
「あらぁ、よかったわねー。先生! まったくもって素晴らしい技術ですわ!」
「喜んでいただき、光栄です」
受付で報酬を受け取り、母子を見送る。
診察室に戻るとそこには、まったくもって当然のことではあるのだが、耳を無くした猫がいる。
すっかり丸い頭になった白猫が、キョトンとした顔をして佇んでいた。
とりあえずエサをあげよう。
6歳の女の子とその母親が診療所にやってきた。
母子ともに、いかにも高価そうな人工ミンク毛皮のコートを着ている。
「この子ったら、朝から晩までネコ耳のことしか考えてませんのよ。まあねぇ、こんな年頃ですから仕方の無いことですわ。それでですね、わたくし思いますの。小さい頃に叶えられなかった願いは、例えそれがどんな些細ことであれ、その人の一生に消えることの無いシミを残すのですわ。わたくしこの子にそんな思いはさせたくありませんの。そのためにも先生の技術をお借りしたいのです」
付けまつげとアイシャドウで、顔の半分くらいが埋め尽くされているのではないかと思われるご婦人は、そう言った。
特に反対する理由も無かったので、すぐに施術を始めることにした。
「ちょっとチクっとします」
女の子の腕にナノマシンを注入する。
青白く光る液体だ。
次に、用意しておいたネコの体に同じもの注入をする。
試験用に繁殖させた白ネコだ。
そして女の子とネコに「光の部屋」に入ってもらう。
「少しジッとしていて下さいね」
コントロールパネルを操作し、システムを立ち上げる。
異性体融合 対象《人》 目的物《猫の耳》。
各種パラメーターを設定し、赤い色をした開始ボタンを押す。
光の部屋の照明が点灯し、そのエネルギーと光量子情報を得てナノマシンが活性化する。
ネコの体内に注入したナノマシンが、耳の部分に集中し、細胞組織を分解・蒸発させていく。
蒸発したネコ耳の成分は、呼吸とともに女の子の体内に侵入し、頭皮の狙った部分に蓄積し、徐々に耳の形を生成していく。
神経の接続も滞りなく行われ、30秒ほどで施術は終了する。
既に女の子の意志で自由に動かすことが出来るはずだ。
「うわーい」
扉のロックを解除すると、女の子は自分の頭に生えたネコ耳をつかみながら躍り出て、嬉しそうにクルクルと回った。
「あらぁ、よかったわねー。先生! まったくもって素晴らしい技術ですわ!」
「喜んでいただき、光栄です」
受付で報酬を受け取り、母子を見送る。
診察室に戻るとそこには、まったくもって当然のことではあるのだが、耳を無くした猫がいる。
すっかり丸い頭になった白猫が、キョトンとした顔をして佇んでいた。
とりあえずエサをあげよう。
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