5000兆円と金髪ロリサンタで令和日本をぶっ壊す 〜魔法のがま口財布は最強チートアイテムだった!〜

ナガハシ

消えたロリサンタ

 そんなこんなで、俺はがま口財布の中身をほぼ使い切った。


 世界的に見て、先進国では量的緩和・財政拡大の機運が高まっている。
 俺のしたことは、結局その後押しにすぎないのだった。


 しかし、世界を平和に出来たとは言えないだろう。
 まだまだ人類は、多くの問題を抱えたままだ。


 だからだろうか。
 俺が翌日、目を覚ました時に、金髪ロリサンタの姿は無かった。


「ふ……」


 なんとなく、初めからわかっていたことだがな。
 あんな美しい金髪ロリが、俺なんかの嫁になるはずがないのだ。


 ベッドから起きて、窓のカーテンを開けると、真っ白な雪の光りが差し込んできた。


「メリークリスマス……」


 俺は古びた別荘の中で一人、そう呟いた。


 がま口の財布の中には、まだ100兆円だけ残っている。
 今までやってきたことの規模を考えれば、まるではした金のように思えるが、それでも俺が一生かかっても使い切れないほどの額である。
 そのうち何か、良い使い道を思いついた時に使うとしよう。


 そろそろこの別荘も引き払って、元いた安アパートに戻るとしよう。
 そして新たな働き先を見つけるのだ。
 一人の日本人に対して10件の求人がある今、仕事を探すのはそう難しいことでは無いはずだから……。


 しかし……。


 気づけば俺の頬に、一雫の涙が伝っていた。


「なぜだ……」


 5000兆円分のお金と物資で、やりたい放題やったのに。
 沢山の子供たちの笑顔も見ることが出来たというのに。
 何故こんなにも、薄ら虚しい気持ちでいるのだろう。


「そうか……」


 俺は、本当に欲しかったものだけは、手に入れることが出来なかったのだな。
 ヘンテコリンな、金髪ロリサンタ。
 あの少女と過ごした他愛もない日々こそが、俺にとっての何よりの宝だったのだ。


「バカヤロウ……」


 期待させるだけ期待させておいて。
 まあ、女なんてみんなそんなもんか……。
 昔の男のことなんて、全部忘れてしまうんだ……。


「バカヤロウ……!」


 こんな虚しい思いをするくらいなら、いっそ最初から会わなければよかった。
 あんな変な願い事、こ汚い靴下に入れて飾るんじゃなかった。
 ちくしょう!


「俺はまだ、お前の名前すら知らないんだぞー!」


 一年も一緒にいて、こんな間抜けな話はない。
 この、金髪ロリサンタめー!


「俺の心を返しやがれ―! うおおおおおおーー!!」


 俺は雪の降る音だけが深々と聞こえる窓の向こう。
 あらん限りの声で叫んだ。


――なんじゃい、騒がしいのう。


 そんな声が、返ってくるのではないかと、胸のどこかで期待して――。







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