5000兆円と金髪ロリサンタで令和日本をぶっ壊す 〜魔法のがま口財布は最強チートアイテムだった!〜

ナガハシ

予兆

 マネーショックは長くは続かなかった。
 一週間ほどで、日本人の消費行動は落ち着きを見せたのだ。


 むしろその反動で、その後の消費が落ち込んだ。
 やはりというか、俺たち配った120兆円の大部分は貯蓄に回されたのだ。


 銀行に預けられたお金が、一気に80兆円くらい増えたので、金融機関に影響が出た。
 預金が増えると、預金者に払う利子の額も増える。
 ただ預かりっぱなしでは、銀行は損をしてしまうのだ。


 そこで銀行は国債の買い入れに走った。
 すると、長期金利とやらが下がって、今まで無かったほどの低い数字になった。
 どうやっても利益を出せなくなった銀行は、預金に手数料をつけることまで検討しだした。


『量的緩和の額を減らします』


 すると、日銀総裁の人がそんなことをいい出した。
 それだけで長期金利とやらが上がった。
 この人、神なんじゃないかと俺は思ったね。


「俺は、これからはまっとうに生きようと思うよ」


 職場の同僚がそんなことを口にした。
 今までまっとうに生きていなかったのか。


「返納しておけば、もう100万もらえたのにな……」
「そういうことかよ」


 200万円欲しさに、100万円を返納するバカタレが続出したわけだが……。
 結局、もう一度100万円プレゼントして落ち着いてもらうことになったよ。
 本当に、人間ってやつは。


「サンタさんが聞いているかもしれないぞ、そのセリフ」
「はっ……! そうだったか……!」


 そうじゃよ、正直に生きるのが一番じゃよ。
 ん? ジジイ口調が伝染ってしまっておる……。


「初詣には行ったか?」
「ああ、すごかったな」
「賽銭箱に札束なげる人なんて、初めてみたよ」
「神社とお寺は儲かっただろうな」


 少しずつではあるが、景気のいい話もちらほら出てきている。
 ワインとか地ビールとか、少し高めのものが売れるようになってきて、それは当然、生産者の経営にも良い影響を及ぼしていることだろう。


 このまま、良い方向に向かってくれればよいのだが……。
 何故だか悪い予感がしてしまうのは何故なのか。


「今日、どっかで飲んでかね?」
「お、いいねー」


 そんな嫌な予感を払拭すべく、俺はその日、仕事仲間と銀座に行った。







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