5000兆円と金髪ロリサンタで令和日本をぶっ壊す 〜魔法のがま口財布は最強チートアイテムだった!〜

ナガハシ

パニック!

 翌日。


 俺はグーグー寝ている金髪ロリを家に置いて、朝早くに仕事に出かけた。
 すると。


「オカーサン! ネエ! オカーサン! ナンデモッテッチャウノ!?」


 小さい女の子が、お母さんの手を引っ張って何かを叫んでいた。


「サンタサンノプレゼント! ナンデ、ケーサツモッテッチャウノ!?」


 なに……?
 お母さんはせっかくの100万円を、家族三人で300万円分を、警察に届け出ようと言うのか。


「こんな怪しいお金使えるわけないでしょ!」
「ヤダー! カイガイリョコー、イクー!!」


 何ということだ、良いことに使ってもらおうと思ったのに。
 さらには。


「ならんでくださーい! レジにちゃんとならんでくださーい!」


 コンビニの中に、人がギッシリ詰まっていた。
 店員さんが叫んでいるが、あれでは並びようもない……。


「おらぁ! ジジイ! 100万円だせやぁ! もってんだろぉ!」
「ひいい……警察に持っていきましたけど」
「はあ! ふざけんな!」
「じゃあ貯金下ろしてこい! 貯金!」
「いいことしたら、またもらえるんだからよお!」
「誰か助けて……」


 朝のお散歩中のおじいさんが、不良にカツアゲされてる……。
 警察を呼ぼうにも、どこの交番もパンク状態だろう。


 何ていうことだ。
 お金は人を魔物に変えるのか……。
 日本中で似たようなことが起きているだろうが、チキンな俺にできることは限られている。


 がま口財布から変装グッズ。
 そしてスプレー缶を一本……。


「ちょ、ちょっと」
「うわ! なんだおまえ!」


 アノニマスが被っているような怪しいお面だ。
 不良どもはビビっている。
 爺さんがその隙に逃げ出す。
 俺はスプレー缶を不良どもにむける。


「とうがらしすぷれー」
「ぎゃあああああ!」


 不良どもは悶え苦しんだ。
 熊撃退用の超強力スプレー。
 ざまぁ!


 それから俺は、ブルブルと震え上がりながら、何とか職場へと向かった。
 街の通りも、駅のホームも、朝から人で溢れかえり、あちこちで怒鳴り声や叫び声が響いていた。




 * * *




 俺の仕事は物流関連だ。
 配送基地で、荷物の仕分け作業をしてる。
 今日もせっせと、端末の指示に従ってだだっ広い倉庫の中を動き回っているのだが。


「お前もか! もうみんなクビにするぞ!」


 管理社員の人が、電話越しに怒鳴っている。
 臨時休暇を取ったバイトが、これで10人目だ。


 物の流れそのものには、まだ影響は出ていないが、バイト連中が来ないのでいつもの倍は忙しい。
 同僚の一人が話しかけてくる。


「おい、斗志。お前ももらったんだろ?」
「ま、まあな……」


 5000兆円+ロリなわけだが……。


「未だに信じられないんだが……夢でもみてんのか俺」
「いや……ニュースにもなっているし、本当のことなんだろう」


 昼に政府が会見を開いて、出処不明の100万円をすぐに警察に届け出るよう訴えていた。
 さらには、治安維持のために自衛隊が出動している。


 金銭トラブルも日本のあちこちで起こっているらしい。
 スーパーもホームセンターもデパートも、ここぞとばかりに人が殺到して酷いことになっている。


 まるで戦争のようだと、海外のメディアが報じていて、国内のテレビ番組もニュースサイトも、謎の100万円プレゼントの話でもちきりになっていた。


「とにかく今は働こう……」
「そうだな……」


 いまさらジタバタしてもどうにもならない。
 感じとしては、東日本大震災の時によく似ている。
 あの時もコンビニの商品が一時的になくなったりして、パニックになったけど、すぐに元に戻った。


(この国の生産能力を信じよう……)


 もし足りなかったら、もう一度ロリサンタにお願いするまでだ。
 お金以外のものも出てくるからな、あのがま口……。







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