レアスキル「TS」は、普通に考えて「ダンジョン攻略」には役に立たない
普通にTS
――チュンチュン
「うーん……」
朝が来た。
来てしまった。
今日も普通に残業地獄だ。
嫌だなぁー。
会社行きたくないなー。
いっそ退職届出して、探索者になろうかな……。
そんなことを考えつつ、俺はむくりとベッドから起き上がる。
「うーん……?」
なんだかエッチな夢を見た気がするが、不覚にも忘れてしまった。
ただ、ガチャを回した記憶だけはある。
確か「TS」だったと思うのだけど。
股の間が痒い。
ポリポリとかく。
すると、なんとも言えない違和感があった。
すべすべぷにぷに、柔らかい……。
「ん?」
慌てて自分の股を覗き込む。
するとそこには、おパンティーに包まれたうら若き乙女の下半身があったのだ。
おっと、俺はいつの間にこんなべっぴんさんを連れ込んだんだ……。
「いや、ちょっとまて……これは」
しかしそれは、間違いなく俺の足だった。
胸を弄るとそこには2つの柔らかいものがついていた。
乳房だ。
大きすぎず小さすぎず、丁度俺好みのサイズだった。
俺はいつもシャツとトランクスで寝ているのだが、シャツは女物になっており、トランクスはおパンティーになっている。
どういうことだ。
何が起こった。
慌てて部屋を飛び出して、洗面所に向かう。
そして鏡に自分の姿を映してみる。
「あー……」
元ヤンの姉貴を一回り小さくしたような女がそこにいた。
俺は昔から目付きが悪いとよく言わるのだが、女になったせいか少しはその目付きも和らいでいる。
しかし、髪は完璧なブリーチのかかった金髪だった。
こうなると本当に、姉貴と瓜二つだ。
「おいおいおい……」
TS――。
そう言う意味だったか。
「あー、ねみぃー、仕事だりぃー」
おっと、姉貴がやってきた。
俺と同じようなことを考えているな。
幼少のころは、よく電気あんまをかまされた。
嫌になるほど弟思いの、良い姉貴だ。
いや、確実に俺の性格を捻じ曲げた張本人だな。
どうする、こんな姿見られちまった日には……。
「んほ!?」
さすがの姉貴も、突然現れた美少女に面食らったようだ。
どうするか。
ひとまず、おはようさんしておくか。
「よ、よお姉貴、いい朝だな」
「ぶほー! おめー! ウノかー!」
俺と同じ、おパンツシャツスタイルの姉は、そう言って俺に抱きついてきた。
「わははははー! なんだよこれー! ちょー可愛いんだけどー!」
「う、うぶぶぶ……! 姉貴! 苦しいから!」
「うはー! メスみたいな声しちまってよー! うけるー!」
と言って姉貴は、俺の髪の毛をワシャワシャとかき回してきた。
悪い姉貴ではないのだが、ちょっとばかし、スキンシップが過ぎる。
無駄にデカい乳で口と鼻を塞がれて、呼吸困難に陥る。
ん? でもなんか、妙に固くないか?
(む、むむむ……?)
俺はまた、新たなる違和感に包まれたのだった。
これは乳房というより、マッスル……筋肉ではあるまいか?
「おもしれー! 一体どんなガチャひいて……ん?」
どうやら、姉貴も気づいたようだ。
声が随分と、野太くなっている。
「な、なにー! わたしが男じゃねーかー!」
俺とともに鏡に映っていた人物は、いかにもやんちゃくれと言った感じの、筋骨たくましい兄貴だったのだ。
「うおおお……! ゾウさんもちゃんとついているぞおおー! どーなってんだー!」
「な、なんだ? まさか姉貴もTS引いたのか?」
「なんだよそれ! 私はまだガチャな夢はみてねーぞ……ってあれ、消えた」
トランクスをおっぴろげて、その中身を覗いていた兄貴は、なぜだかすぐに、普通の姉貴に戻ってしまった。
おパンティーの中を覗き込んでいる姉貴の姿は、なんとも言えずシュールだ。
「な、なあ。さっき本当に男だったよなー?」
「あ、ああ……どうなってんだろうな」
「ちょっとさあ、もう一度ハグっていいか?」
「え? まあ……いいけど、お手柔らかにな……」
そして再び俺に抱きついてくる姉貴。
するとすぐに、その姿はやんちゃくれ兄貴に変化したのだった。
「お、おおー!?」
ついでに言えば、着ている下着が上下とも男物に変化している。
そうかこの「TS」というスキル、触れた対象を何でもかんでも「性転換」できてしまうのだ。
そして俺自身は、ずっと性転換したままなのだろう。
常に自分に触れているようなものだからな。
「やったじゃねーか! やべえスキル当たっちゃったな!」
「いや……しかし、どう使えばいいんだ、こんなスキル」
実用性って意味じゃ、皆無に等しいような気もするのだけど。
「よし、お姉さんが教えてあげよう!」
「どうすんの?」
「今からお姉さんとベッドにゴーだ!」
「なんでだよ!」
何が悲しくて兄貴になった姉貴とベッドインしなきゃいけないんだよ!
「そりゃあウノ、あんたは女になった、そしてあたしは男になれる。だったらまずヤルことはなんだ?」
「まてまてまて! あんた弟を何だとおもっている!」
「いやあー、おねーさんも色々と試してみたいから、できればこのまま部屋までついて来て欲しいんだがー」
「何を試すってんだよ!」
「そりゃあ、男のナニたるかを身をもって知るというだな……」
「アホー!」
もうー、この痴女さんめー!
「つうか、仕事に遅れるわ! 着替えてくる!」
「え、仕事行くの? それで!?」
「当たり前だろ! 沢山やることあるんだよ!」
「マジ!? ウケる!」
俺は、逃げるようにして部屋に戻った。
というか俺……このままだといつか、男に抱かれなきゃいけないの……?
やだなあ……。
あれ? でも待てよ。
女を男にしてしまうのだから、つまり女は男になってしまうのだ。
俺は普通に女が好きなストレートだが、いざ事に及ぶとなると相手は男になってしまうのか……。
うーん、複雑だ……。
あれこれと考えつつ、恐らくはサイズが合っていないだろうスーツを着る。
するとどうだ、男物のはずのスーツが、普通に女物に変化したではないか。
いかにも仕事ができそうな、金髪スカートスーツ姿なOLの誕生だ。
「いやー、ちょっとついていけんなー」
平常心には自信がある方だったが、流石に普通ではいられなかった。
目眩がするのを抑えながら、俺はリビングへと向かった。
飯を食っていたオトンとオカンが、盛大に味噌汁を吹いたのは言うまでもない。
「うーん……」
朝が来た。
来てしまった。
今日も普通に残業地獄だ。
嫌だなぁー。
会社行きたくないなー。
いっそ退職届出して、探索者になろうかな……。
そんなことを考えつつ、俺はむくりとベッドから起き上がる。
「うーん……?」
なんだかエッチな夢を見た気がするが、不覚にも忘れてしまった。
ただ、ガチャを回した記憶だけはある。
確か「TS」だったと思うのだけど。
股の間が痒い。
ポリポリとかく。
すると、なんとも言えない違和感があった。
すべすべぷにぷに、柔らかい……。
「ん?」
慌てて自分の股を覗き込む。
するとそこには、おパンティーに包まれたうら若き乙女の下半身があったのだ。
おっと、俺はいつの間にこんなべっぴんさんを連れ込んだんだ……。
「いや、ちょっとまて……これは」
しかしそれは、間違いなく俺の足だった。
胸を弄るとそこには2つの柔らかいものがついていた。
乳房だ。
大きすぎず小さすぎず、丁度俺好みのサイズだった。
俺はいつもシャツとトランクスで寝ているのだが、シャツは女物になっており、トランクスはおパンティーになっている。
どういうことだ。
何が起こった。
慌てて部屋を飛び出して、洗面所に向かう。
そして鏡に自分の姿を映してみる。
「あー……」
元ヤンの姉貴を一回り小さくしたような女がそこにいた。
俺は昔から目付きが悪いとよく言わるのだが、女になったせいか少しはその目付きも和らいでいる。
しかし、髪は完璧なブリーチのかかった金髪だった。
こうなると本当に、姉貴と瓜二つだ。
「おいおいおい……」
TS――。
そう言う意味だったか。
「あー、ねみぃー、仕事だりぃー」
おっと、姉貴がやってきた。
俺と同じようなことを考えているな。
幼少のころは、よく電気あんまをかまされた。
嫌になるほど弟思いの、良い姉貴だ。
いや、確実に俺の性格を捻じ曲げた張本人だな。
どうする、こんな姿見られちまった日には……。
「んほ!?」
さすがの姉貴も、突然現れた美少女に面食らったようだ。
どうするか。
ひとまず、おはようさんしておくか。
「よ、よお姉貴、いい朝だな」
「ぶほー! おめー! ウノかー!」
俺と同じ、おパンツシャツスタイルの姉は、そう言って俺に抱きついてきた。
「わははははー! なんだよこれー! ちょー可愛いんだけどー!」
「う、うぶぶぶ……! 姉貴! 苦しいから!」
「うはー! メスみたいな声しちまってよー! うけるー!」
と言って姉貴は、俺の髪の毛をワシャワシャとかき回してきた。
悪い姉貴ではないのだが、ちょっとばかし、スキンシップが過ぎる。
無駄にデカい乳で口と鼻を塞がれて、呼吸困難に陥る。
ん? でもなんか、妙に固くないか?
(む、むむむ……?)
俺はまた、新たなる違和感に包まれたのだった。
これは乳房というより、マッスル……筋肉ではあるまいか?
「おもしれー! 一体どんなガチャひいて……ん?」
どうやら、姉貴も気づいたようだ。
声が随分と、野太くなっている。
「な、なにー! わたしが男じゃねーかー!」
俺とともに鏡に映っていた人物は、いかにもやんちゃくれと言った感じの、筋骨たくましい兄貴だったのだ。
「うおおお……! ゾウさんもちゃんとついているぞおおー! どーなってんだー!」
「な、なんだ? まさか姉貴もTS引いたのか?」
「なんだよそれ! 私はまだガチャな夢はみてねーぞ……ってあれ、消えた」
トランクスをおっぴろげて、その中身を覗いていた兄貴は、なぜだかすぐに、普通の姉貴に戻ってしまった。
おパンティーの中を覗き込んでいる姉貴の姿は、なんとも言えずシュールだ。
「な、なあ。さっき本当に男だったよなー?」
「あ、ああ……どうなってんだろうな」
「ちょっとさあ、もう一度ハグっていいか?」
「え? まあ……いいけど、お手柔らかにな……」
そして再び俺に抱きついてくる姉貴。
するとすぐに、その姿はやんちゃくれ兄貴に変化したのだった。
「お、おおー!?」
ついでに言えば、着ている下着が上下とも男物に変化している。
そうかこの「TS」というスキル、触れた対象を何でもかんでも「性転換」できてしまうのだ。
そして俺自身は、ずっと性転換したままなのだろう。
常に自分に触れているようなものだからな。
「やったじゃねーか! やべえスキル当たっちゃったな!」
「いや……しかし、どう使えばいいんだ、こんなスキル」
実用性って意味じゃ、皆無に等しいような気もするのだけど。
「よし、お姉さんが教えてあげよう!」
「どうすんの?」
「今からお姉さんとベッドにゴーだ!」
「なんでだよ!」
何が悲しくて兄貴になった姉貴とベッドインしなきゃいけないんだよ!
「そりゃあウノ、あんたは女になった、そしてあたしは男になれる。だったらまずヤルことはなんだ?」
「まてまてまて! あんた弟を何だとおもっている!」
「いやあー、おねーさんも色々と試してみたいから、できればこのまま部屋までついて来て欲しいんだがー」
「何を試すってんだよ!」
「そりゃあ、男のナニたるかを身をもって知るというだな……」
「アホー!」
もうー、この痴女さんめー!
「つうか、仕事に遅れるわ! 着替えてくる!」
「え、仕事行くの? それで!?」
「当たり前だろ! 沢山やることあるんだよ!」
「マジ!? ウケる!」
俺は、逃げるようにして部屋に戻った。
というか俺……このままだといつか、男に抱かれなきゃいけないの……?
やだなあ……。
あれ? でも待てよ。
女を男にしてしまうのだから、つまり女は男になってしまうのだ。
俺は普通に女が好きなストレートだが、いざ事に及ぶとなると相手は男になってしまうのか……。
うーん、複雑だ……。
あれこれと考えつつ、恐らくはサイズが合っていないだろうスーツを着る。
するとどうだ、男物のはずのスーツが、普通に女物に変化したではないか。
いかにも仕事ができそうな、金髪スカートスーツ姿なOLの誕生だ。
「いやー、ちょっとついていけんなー」
平常心には自信がある方だったが、流石に普通ではいられなかった。
目眩がするのを抑えながら、俺はリビングへと向かった。
飯を食っていたオトンとオカンが、盛大に味噌汁を吹いたのは言うまでもない。
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