宇宙人に転生した私、万能パワーで無敵に宇宙を大冒険!

ゆにこーん / UnicornNovel

9話 カムバック・マイボディ

《アラート! アラート! 船内に重大な損傷が発生しました。船員は直ちに脱出してください》

 クレータみたいに陥没した床。
 亀裂の入った天井。
 バラバラに散らばった機械。

 ただ思いっきり床をぶん殴っただけ、それだけでこれだけの破壊力って。
 ダークマターの威力、恐るべし!

 ホントはゴミクズの顔面をぶん殴ろうかと思ったんだけど。でも変態に直接触るのは気持ち悪いんだもの。
 チコタンくらいのカワイイちゃんだったらいくらでも触るんだけどね。

 とにかく思いっきりやってやったわ!
 っていうか、思いっきりやりすぎた!

「ソーラ凄いです! けど凄すぎです、めちゃくちゃです」

「うん、ちょっと反省中」

 まあでも、敵は皆気絶してるし、ゴミクズも吹っ飛んだみたいだし。
 ユイタソちゃんの敵討ちっていう目的は達成出来たっぽいから、結果オーライじゃない?

「くそ、何が起きた……?」

 っと思ったら、ゴミクズ発見。
 しぶといな、まだ生きてたんだ。

《アラート! アラート! 船内に重大な損傷が発生しました。船員は直ちに脱出してください》

「重大な損傷だと!? これが特異点の力か……致し方ない、オペレーションコントローラー、起動しろ!」

《オペレーションコントローラー、起動しました。ゲスーチ様、ご指示を》

 ん? オペレーション……なんて?
 今のよく分からないやりとりは何?

「転送装置を起動しろ! 私と特異点を本部へ転送するのだ、急げ!!」

《承知しました、転送準備を開始します》

 あ、なるほど。声だけでいろいろ操作出来る便利なやつか。
 それで転送装置って言った? それってワープのことだよね。

「チコタン、もしかしてあのゴミクズ、逃げようとしてる?」

「はい、このままだと逃げられます!」

 やっぱりあのゴミクズ、私から逃げようとしてるんだ。
 さっきまで散々威張ってたくせに、ピンチになったら自分だけ逃げるって、どこまでもゴミクズだね。

「そう簡単に逃がすわけないでしょ!」

 今度は直接ぶん殴って、宇宙の果てまで吹っ飛ばしてやる!
 ホントは触りたくないけどね!

 よし、ダークマター、もう一度私の周りに──。

「あっ、ひゃあぁ!?」

 チコタン!?
 ちょっ、マズい!
 つかまってるよう言ってたのに、手を離しちゃったの?

 凄い勢いで空気が外に吸いだされてる、壁が剥がれて船内が宇宙空間にむき出しになってるんだ。
 このままだとチコタンも宇宙空間に放り出されちゃう!

《転送開始まで五秒前……四秒……三秒……》

 三秒!? ちょっと早くない?
 ゴミクズの方も時間がないし、どうしよう!?

「ソーラ!」

「チコタンッ」

「ソーラ、私のことはいいです、自分の体を!」

 ……私は何を迷ってるの?
 迷うことなんて何もないでしょ?
 考えるまでもない、やるべきことは一つだけ!

「チコタン、つかまって!」

「ソーラ! でも体がっ」

「いいから、早く!」

「はっ、はい!」

 掴んだ!
 もう離さない!

「ソーラ、どうして……?」

「私とチコタンはもう友達でしょ? 友達を助けるなんて当たり前じゃない。友達を見捨てるやつはゴミクズ以下だからね!」

 地球でも宇宙でも、命より優先することなんて、あっていいわけがない。
 それが友達の命だったらなおさらね。
 一瞬でも迷った自分が情けないよ。

「ソーラあぁっ」

「ほら、泣かなくていいから、もう離さないでね」
 
 チコタン、うちゅカワイイことこの上ないよ。
 もう、カワイ過ぎる! 大好き!!

「ハッハッ、愚かな! 私を捕らえるチャンスを逃したな?」

 もう、ムカつくなあ! 大嫌い!!

「この船は沈む、貴様等も宇宙空間に放り出されて死ぬのだ。だが安心しろ、特異点は我々ヴェーゼが最大限有効に活用してやる」

《転送、開始します》

「もう会うこともないだろう。さらばだ、特異点の娘よ!」

《転送、完了しました》

 消えた。
 ゴミクズが消えた。
 ムカつく。けど、チコタンの命には代えられないしね。
 次に会ったときはボッコボコにしてやるから!

「ソーラ、このままだと宇宙空間に投げだされます!」

「大丈夫、私にくっついて離れないでね」

「はひいぃ」

 カワイイ……じゃなくて、ちゃんと集中しなくちゃ。
 ダークマター、私とチコタンを守って!

「これは……凄いですっ」

 おお、バリアーだ。
 丸いバリアーが私達を包んでる。
 うん、私もチコタンも平気みたい。
 流石ダークマター、上手くいってよかった。

 このバリアーがあれば、私とチコタンは宇宙空間でも無事にいられるね。
 私とチコタンは──。

 って、ちょっと待った!
 忘れてた! 私の体は?

「ソーラ、あそこを!」

「え? あ!」

 あった、私の体!
 まだ水槽に入ったまま機械に繋がってる。

《緊急事態のため、特異点の保護機能を最大に設定します》

 保護機能を最大! それは助かる、グッジョブ電子音声さん!

《続いて、本部への転送を開始します》

 よしよし、しっかり保護してもらって、本部へ転送を開始だね……。
 本部への転送?

「あのままだとソーラの体も転送されてしまいます」

「うえぇ!?」

 ダメダメ、それは絶対ダメ!

《転送、開始します》

 待って私の体ー!!

《転送、完了しました》

 ノオォー!!

 カムバーック! マイボディー!!

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