イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜
第60話 モテなくなった原因
『さて、途中結果を発表しましたが、ここからは明日の種目説明をしましょう。明日の競技は、『限界闘技』です!』
あ、観客の歓声がない。
ははーん、さては声を出し疲れたな?
『ル、ルールは、代表者の限界が訪れるまで、我々の用意したモンスターを倒していき、その持続時間、またパフォーマンスによっても加点が成されます! そのポイントがそのまま学園に入ります! ちなみに、モンスターは魔法で作り出したものなので、客席などに被害が行くことはありませんのでご安心を!』
「持久力が大事な競技だね……」
「あ……そうですね」
気付かないうちに先輩が隣に来ていたことに若干悔しさを感じたが、真剣な顔つきの先輩に対して素直に返す。
『では、これから各学園メンバーの皆さん代表者をお決めください! そして報告し次第自由行動とします!』
「じゃあ誰かこれやりたいって人いたりする?」
響く声が止むと、決めるために希望者がいるか確認するが、先輩の予想通り手を挙げる人はいない。
そりゃそうだ。こんな疲れそうなもの……やりたい人なんてそうそういないだろ。
先輩もそれが分かっているからか、言葉から疑問の感情は受け取れなかった。
むしろ、この質問を終わらせて早く決めようとの意思が受け取れた。
「……やっぱいないか。ならじゃんけんで決めよっか! シン君が言うにはじゃんけんでは恨みっこなしみたいだし!」
……恨みっこなしにも限度はあるけどね?
「分かりました。でも、マギアスと先輩は抜いていいですよ? もう一つ出てるんですから」
「あ、そう? ありがと」
そしてマギアスとシェル先輩を抜いた俺達4人でじゃんけんをすると、見事にレイが一人負けした。
「う……!」
その現実が受け入れられず、驚愕したように固まる。
硬直が解けると今度は絶望し、俺に縋るような目線を向けてきた。
もしもこれで俺がやるような方向に傾いたら嫌なので、レイから目を背ける。
「うぅー……」
背けた瞬間、背後から怪奇な気配と声が聞こえ、反射的に身体が震える。
そして恐る恐る後ろを向くと……。
「……うわぁっ!!」
あと少しで鼻が付きそうな距離に、光魔法で影を作り、心霊のようになっているレイがいた。
思わず驚き腰を抜かすが、違和感に気付き、立って姿勢を直すとでこ押しした。
「何やってんだあほ」
ほんとに何やってんだ。
「てかそんなふざける余裕あるなら手助けとか必要ないよね?」
「ふぇ!? いや、あるよ! ものすっごくある!」
「余裕がない人は顔を照らしてホラー感なんて作りません」
「はい……」
俺に叱られてか、それとも手助けがないことに対してか、しゅんと落ち込むレイ。
……はぁ。
「……ほら、明日1日買い物でもなんでも付き合うから」
他人がこの会話を聞いたら、そんなことで納得するか? と思うかもしれないが、俺とレイの場合は問題ない。
今までレイとどこかに出かけたことはもちろん何度もある。
でも、2人で何かを買いに行ったことはない。いつもマキがいたから。
レイと2人で行くと、ある結果が目に見えているんだ。
レイはショッピングモール系のところに行くと、毎回お店をぐるぐる回って一緒にいる人を疲れさせる。
それだけ? と、初めて聞く人は思うかもしれない。
でも、それだけでも……疲れさせるの次元が一般的なものとは違うんだよッ!!
マキがいると、レイを抑制してくれて、そうなることはなかったけど。
だからレイと2人で行ったことはない。
レイも俺と2人で買い物をしたことがないことはもちろん分かっていて、前から2人で行こうとは誘われていた。
無論俺は全力で拒否したけど。
ちなみに、レイのその行動が、容姿はものすごくいいのにモテない原因。
……いや、モテなくなった原因か。
「ほんと!?」
今まで拒否していた俺が、急に承諾したことに驚くとの同時に喜ぶ。
「……いつもこれくらい純粋なら可愛いんだけどなぁ」
「……ん? 何? なんだって?」
「え? あれ、今声に出てた?」
若干悲痛な嘆きが浮かぶと、それに連動するかのように、心の中でだけ思ったと思っていたが、実は口に出していた。
それに戸惑うが、レイはそれを気にも留めなかった。
「何? シンは私のことを可愛くないと思ってたの? 性格も顔も?」
「いや、性格は可愛くないけど顔は可愛いってば……」
「性格は可愛くない?」
妙な圧を出して俺を圧倒してくるレイ。
おかしいな? 貶してから褒めると感じる嬉しさが大きいって聞いたことあるんだけどな?
……ごめん嘘。ただ圧倒されて正直に言っちゃっただけ。
「か、可愛いです……」
「よし」
俺が可愛いと発すると、納得し、満悦したように胸を張るレイ。
―――――――――
レイが絶望したり、希望を持ったりと、色々な感情が表に出た次の日、約束通り2人で出かけることになり、今は宿の前で支度完了するのを待っている。
「同じ宿なんだから部屋行けばいいのに……あれか? もしかして待ち合わせは大事とかいうやつ?」
あのラブコメでよくあるパターンかね?
いや、気持ちはなんとなく分かるけども……。でもあれは、女性が男性のことを恋愛的に好きが前提でしょ?
……もしかして、レイが俺のことを?
ふと脳裏に浮かんでしまった説を、俺は慌てて拒否した。
……いやいやいやいや。
……いやいやいやいやいやいやいやいや。ないってば。
だってあのレイだよ?
それに、もし仮にそうだとして、そんな時俺はどうすればいいか分からない。
……やめよ。すぐに『この子、もしや俺に気があるんじゃ!?』って勘違いするような男子高校生にはなりたくない。
イタイからね。
「……流石にないか」
さっきまで慌ただしかった心を一旦落ち着かせると、当然の答えが浮かんできた。
その答えを自嘲気味に吐き出しながら、レイとは今のこの関係が気に入っている事実を再確認した。
でも、もし……もし、本当にそうだとしたら……俺はどうするんだろう。その事実を、受け入れられるかな?
レイを傷付けないで済むかな?
恋愛的に……好きなのかな?
「シンお待たせ―」
俺が暗い雰囲気で思考に耽っていると、レイが小動物のようにひょっこりと現れた。
「ん、来たか」
普通なら、ここは待ってないよー、とか。これは少数だと思うけど、早く来い、とかなんだろう。
前者は俺も同意だ。なんせ全然待ってないんだから。
そして後者……1ミクロンも賛同出来ないッ!!
だって今回は励ますために行くけど、やっぱレイと2人だよ!?
前に行った時は観光だったからそうなることはないって安心してたけど、今回は買い物メインだよ!?
それなら少しでも遅く来てその時間を減らすしかないじゃん!
だからまとめると、もっと遅く来て欲しかった。だから全く待ってない。
「……なんか残念そうだね? もしかして私に来て欲しくなかったの?」
普段、こういう場面ならレイはからかい口調でこういうことを言ってくるはず。
でも今回は、そんなことはなく、本当に不安そうに聞いてきた。
……そんなん、答えは1つしかないだろ……バカ。
『うん、来て欲しくなかった』
……純粋にそう言えるだけのメンタルが俺にあるはずがないんだよなぁ……。
「来て欲しかったから。そんな顔すんなバカ」
来て欲しいと発言したのがどうしても恥ずかしく、照れ隠しも兼ねてでこ押ししながら軽い攻撃口調でそう言ってしまった。
「えへへ……」
「ん、どうした?」
お仕置きしたのに、なんだかちょっぴり嬉しそうなレイがいたので、なんでそうなったのか気になった。
「んー? なんでもなーい」
嬉しさを噛み締めるような、そんでもって、俺を煽るように隣に来て、そのまま歩き出した。
その後ろ姿は……なんだか、愉しそうだった。
それを見て、娘が遊んでいるのを傍観している父親のように温かい気持ちになった。
「ちょっと、シン? 早くしないと置いてくよー?」
「あーうん。分かったよ」
レイに呼ばれ、小走りで隣に着くと、一緒に歩き出した。
……置いて行ってくれても良かったんだけどな。
やはり、最後まで俺の考えから不服は消えなかった。
あ、観客の歓声がない。
ははーん、さては声を出し疲れたな?
『ル、ルールは、代表者の限界が訪れるまで、我々の用意したモンスターを倒していき、その持続時間、またパフォーマンスによっても加点が成されます! そのポイントがそのまま学園に入ります! ちなみに、モンスターは魔法で作り出したものなので、客席などに被害が行くことはありませんのでご安心を!』
「持久力が大事な競技だね……」
「あ……そうですね」
気付かないうちに先輩が隣に来ていたことに若干悔しさを感じたが、真剣な顔つきの先輩に対して素直に返す。
『では、これから各学園メンバーの皆さん代表者をお決めください! そして報告し次第自由行動とします!』
「じゃあ誰かこれやりたいって人いたりする?」
響く声が止むと、決めるために希望者がいるか確認するが、先輩の予想通り手を挙げる人はいない。
そりゃそうだ。こんな疲れそうなもの……やりたい人なんてそうそういないだろ。
先輩もそれが分かっているからか、言葉から疑問の感情は受け取れなかった。
むしろ、この質問を終わらせて早く決めようとの意思が受け取れた。
「……やっぱいないか。ならじゃんけんで決めよっか! シン君が言うにはじゃんけんでは恨みっこなしみたいだし!」
……恨みっこなしにも限度はあるけどね?
「分かりました。でも、マギアスと先輩は抜いていいですよ? もう一つ出てるんですから」
「あ、そう? ありがと」
そしてマギアスとシェル先輩を抜いた俺達4人でじゃんけんをすると、見事にレイが一人負けした。
「う……!」
その現実が受け入れられず、驚愕したように固まる。
硬直が解けると今度は絶望し、俺に縋るような目線を向けてきた。
もしもこれで俺がやるような方向に傾いたら嫌なので、レイから目を背ける。
「うぅー……」
背けた瞬間、背後から怪奇な気配と声が聞こえ、反射的に身体が震える。
そして恐る恐る後ろを向くと……。
「……うわぁっ!!」
あと少しで鼻が付きそうな距離に、光魔法で影を作り、心霊のようになっているレイがいた。
思わず驚き腰を抜かすが、違和感に気付き、立って姿勢を直すとでこ押しした。
「何やってんだあほ」
ほんとに何やってんだ。
「てかそんなふざける余裕あるなら手助けとか必要ないよね?」
「ふぇ!? いや、あるよ! ものすっごくある!」
「余裕がない人は顔を照らしてホラー感なんて作りません」
「はい……」
俺に叱られてか、それとも手助けがないことに対してか、しゅんと落ち込むレイ。
……はぁ。
「……ほら、明日1日買い物でもなんでも付き合うから」
他人がこの会話を聞いたら、そんなことで納得するか? と思うかもしれないが、俺とレイの場合は問題ない。
今までレイとどこかに出かけたことはもちろん何度もある。
でも、2人で何かを買いに行ったことはない。いつもマキがいたから。
レイと2人で行くと、ある結果が目に見えているんだ。
レイはショッピングモール系のところに行くと、毎回お店をぐるぐる回って一緒にいる人を疲れさせる。
それだけ? と、初めて聞く人は思うかもしれない。
でも、それだけでも……疲れさせるの次元が一般的なものとは違うんだよッ!!
マキがいると、レイを抑制してくれて、そうなることはなかったけど。
だからレイと2人で行ったことはない。
レイも俺と2人で買い物をしたことがないことはもちろん分かっていて、前から2人で行こうとは誘われていた。
無論俺は全力で拒否したけど。
ちなみに、レイのその行動が、容姿はものすごくいいのにモテない原因。
……いや、モテなくなった原因か。
「ほんと!?」
今まで拒否していた俺が、急に承諾したことに驚くとの同時に喜ぶ。
「……いつもこれくらい純粋なら可愛いんだけどなぁ」
「……ん? 何? なんだって?」
「え? あれ、今声に出てた?」
若干悲痛な嘆きが浮かぶと、それに連動するかのように、心の中でだけ思ったと思っていたが、実は口に出していた。
それに戸惑うが、レイはそれを気にも留めなかった。
「何? シンは私のことを可愛くないと思ってたの? 性格も顔も?」
「いや、性格は可愛くないけど顔は可愛いってば……」
「性格は可愛くない?」
妙な圧を出して俺を圧倒してくるレイ。
おかしいな? 貶してから褒めると感じる嬉しさが大きいって聞いたことあるんだけどな?
……ごめん嘘。ただ圧倒されて正直に言っちゃっただけ。
「か、可愛いです……」
「よし」
俺が可愛いと発すると、納得し、満悦したように胸を張るレイ。
―――――――――
レイが絶望したり、希望を持ったりと、色々な感情が表に出た次の日、約束通り2人で出かけることになり、今は宿の前で支度完了するのを待っている。
「同じ宿なんだから部屋行けばいいのに……あれか? もしかして待ち合わせは大事とかいうやつ?」
あのラブコメでよくあるパターンかね?
いや、気持ちはなんとなく分かるけども……。でもあれは、女性が男性のことを恋愛的に好きが前提でしょ?
……もしかして、レイが俺のことを?
ふと脳裏に浮かんでしまった説を、俺は慌てて拒否した。
……いやいやいやいや。
……いやいやいやいやいやいやいやいや。ないってば。
だってあのレイだよ?
それに、もし仮にそうだとして、そんな時俺はどうすればいいか分からない。
……やめよ。すぐに『この子、もしや俺に気があるんじゃ!?』って勘違いするような男子高校生にはなりたくない。
イタイからね。
「……流石にないか」
さっきまで慌ただしかった心を一旦落ち着かせると、当然の答えが浮かんできた。
その答えを自嘲気味に吐き出しながら、レイとは今のこの関係が気に入っている事実を再確認した。
でも、もし……もし、本当にそうだとしたら……俺はどうするんだろう。その事実を、受け入れられるかな?
レイを傷付けないで済むかな?
恋愛的に……好きなのかな?
「シンお待たせ―」
俺が暗い雰囲気で思考に耽っていると、レイが小動物のようにひょっこりと現れた。
「ん、来たか」
普通なら、ここは待ってないよー、とか。これは少数だと思うけど、早く来い、とかなんだろう。
前者は俺も同意だ。なんせ全然待ってないんだから。
そして後者……1ミクロンも賛同出来ないッ!!
だって今回は励ますために行くけど、やっぱレイと2人だよ!?
前に行った時は観光だったからそうなることはないって安心してたけど、今回は買い物メインだよ!?
それなら少しでも遅く来てその時間を減らすしかないじゃん!
だからまとめると、もっと遅く来て欲しかった。だから全く待ってない。
「……なんか残念そうだね? もしかして私に来て欲しくなかったの?」
普段、こういう場面ならレイはからかい口調でこういうことを言ってくるはず。
でも今回は、そんなことはなく、本当に不安そうに聞いてきた。
……そんなん、答えは1つしかないだろ……バカ。
『うん、来て欲しくなかった』
……純粋にそう言えるだけのメンタルが俺にあるはずがないんだよなぁ……。
「来て欲しかったから。そんな顔すんなバカ」
来て欲しいと発言したのがどうしても恥ずかしく、照れ隠しも兼ねてでこ押ししながら軽い攻撃口調でそう言ってしまった。
「えへへ……」
「ん、どうした?」
お仕置きしたのに、なんだかちょっぴり嬉しそうなレイがいたので、なんでそうなったのか気になった。
「んー? なんでもなーい」
嬉しさを噛み締めるような、そんでもって、俺を煽るように隣に来て、そのまま歩き出した。
その後ろ姿は……なんだか、愉しそうだった。
それを見て、娘が遊んでいるのを傍観している父親のように温かい気持ちになった。
「ちょっと、シン? 早くしないと置いてくよー?」
「あーうん。分かったよ」
レイに呼ばれ、小走りで隣に着くと、一緒に歩き出した。
……置いて行ってくれても良かったんだけどな。
やはり、最後まで俺の考えから不服は消えなかった。
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