イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜

新海 律希

第30話 新しい力の知識を得ました

「レイさーん……」
「こら、名前呼び」
「レ、レイー」
「よーしよしよし」
 犬のように撫でる。

 と、ここで何かを思い出すセレス。
「そういえば、レイ……?」
「ん? 何?」

「前大技練習してたの見たんですけど、もしかしてさっきの3連がそれだったんですか?」
「いやー? 奥の手は本当にとっておきの場面に残しておかなくちゃねー」
 まぁ、実際はそれ使えるだけの暇がなかったってだけなんだけど。

「なんですかーこっちは本気でやったのにー」
 セレスの頬が膨れてる。何コレ、可愛い。

「そりゃー私が本気でやってセレスに負けるわけないもんねー」
 嘘です、強がりです。なんで意地張ったんだろ。

「わ、私だって余力ありましたもーん」
「こんなボロボロで?」
「ありました!」

「よしよーし。私はセレスに負けないよー」
 私はセレスを撫でる。何コレ、心地いい。
「なんでですかー!」

「ね、セレスシンのこと好きでしょ」
「えっ!?」
「でしょ?」
「正直よく分かりませんけど……」
「気になってはいる」
「……はい」

「だよねー。でもシン、鈍感ではないんだよ? ちゃんとアプローチとかには気付くの。でも何故か気付かないふりしてたり、かと思ったらほんとに気付いてなかったり、よくわかんないんだよ。今までそういうの何回も見てきたから分かるけど」
「じゃ、じゃあ私のことも気付いてたり……?」
「いや、あの感じのシンは全く気付いてないよ」

「え……」

「てか、私達に恋愛感情を少しでも持っているかどうか……とりあえずペットのような可愛さとかは感じてるだろうけど」
「な、なんで分かるんですか?」
「そりゃ幼馴染み舐めないでよ。これでもシンの思ってることくらい分かるんだから」

「すごいですねー幼馴染み」
 セレス感心してるなー。

「だから分かるんだけど、今私達がシンと親しいのは間違いないよ? この世界で1番親しい、それは確実。でもね、シンまじの方で全く恋愛感情持ってないんだよ」
「なんか、好きかそうじゃないか以前に、女子としてちょっと凹みますね……」
「そうなんだよ、最近特に困ってるの」

「え、なんでですか?」
「だってセレス可愛いし、性格だって……」
「もしかして嫉妬してます?」
「…………」

「あーやっぱりレイだってシンのこと好きなんだー」
「違うの! ただ……」
「幼馴染みとしてシンを渡したくない?」
「……心読んだ?」
「いえいえ、そんなこと出来ませんから」

「……セレス、私はセレスに提案をしようと思ってる」
「……なんですか?」
「正々堂々とどっちがシンを勝ち取るか勝負しよう」
「いいですね」
「正直、シンはどっちも取らないとかありえるけど……」
「あ、さっき恋愛感情ゼロって言ってましたもんね……」

 ほんと、恋愛感情と友愛感情があって100ポイントあったとして、友愛感情に全振りしたようなもんだもん。

「でも、気付かせるために告白を急いだりはしませんよ。それでシンのことバタバタさせても嫌ですし」
「お、セレスも同じ考えだったか」
「レイもですか」

「幼馴染みとしてのこの関係を気に入っちゃってるしね」
 自分を蔑むような笑いをしながらそう言う。

「私は今は仲を深めて距離をある程度縮めていくことを目的にしておきます」
「じゃあ、私は今まで通りシンをからかおうかな。この世界ではあんまりしてないけど、前は隙さえあったらシンのことからかってたんだー」
 もはやシンとそういう関係になろうという考えがない私とセレスである。

「なんか、楽しそうですね」
「じゃあ、暇があったら私とセレスでからかってみよ? 私が始めるから、セレスはそれに乗ってきてよ」
「で、出来ますかね?自信ないです……」
「からかうことは即OKなんだね」
 まるでからかった人の反応が面白くて笑ったように笑う。

「あ、いえ……ちょっと面白そうだったので……」
「こんな会話シンにバレないようにしなきゃね。バレたらまたデコおしされちゃうよ」
「デコおし?」

「あぁ、からかった私によくシンがやる事なんだけどね、人差し指と中指を第2関節まで曲げて、それで額に触ってその後ポンッって押すの。シンにとってのお仕置きみたいなものだよ。痛くないから楽だよー」
「雑談してる時にも相手のことを気遣ってるんですね。シンらしいです」

「それ、シンには言わないようにね。調子乗っちゃうから」
「ですね」
 セレスは口に手を添えて笑う。1つ1つ仕草が可愛いなぁ! このやろー!

「ちなみに付け加えると、シンはこれかなり親しい相手にしかやらないから、これされたらかなり前進だよ」
 ウインクを添えてそうアドバイスする。

「そうなんですか、次の目星が立ちましたね。というか、そんなアドバイスしていいんですか?」
「別に私は独占する気とかはないから。もちろんシンが他の人を選んでそれを無理やり私に変えさせるとかもしないから」
 まぁ、ケチはつけるけど。そう小声でその後に付け加える。

「私も多分そうです」
 セレスの笑顔、相変わらず可愛いなぁ……シン、時間かけずに惚れてまうんやないやろか?

「おーいお前らいつまでそこでそうやってるんだー? 勝敗はどうなったー?」
 そういえばかなりここで話してたな……。しかも倒れて私がセレスを抱きしめたまま。

 ここがコンクリートで出来てて良かったよ。砂まみれはやだし。

 私達は頑張って立ち上がり、エクス先生に結果を伝える。
「セレスの勝ちでしたー!」
 ある程度体力は回復したが、傷は全くそうではないようで、すごく痛む。

 いて、いてててててて。

 先生が私達の状態に気付いてこちらに来てくれる。
「お前らもまぁまぁ暴れたな」
 先生が指を指した先には、シンの時程ではないが荒れた地面。そしてその後指した先には、私達のボロボロの制服。

「……先生、よろしくお願いします」
「お、お願いします……」
 私が開き直って頼むと、セレスは申し訳なさそうに頼む。

「はぁ……なんでお前らは模擬戦する度にそう制服をボロボロにするんだ……」
 エクス先生はもう諦めた様子で、地面を直し、私達の制服も直し、魔力や傷も治す。
「スフラギラ」

「ありがとうございます」
 ペコッとお辞儀をしてお礼を言う。

「特にお前ら2人には苦労させられそうだ……」
(またこの2人を世話しなきゃなのか……これもなんかの運命かな……)

「あれ、みんなはどうしたんですか……」
 みんながどこにもいないから気になり、最後まで言ったところで、みんなはどうしたのかが分かった。

「あぁ、お前らが始めるとみんなもやる気になって別の場所で生徒同士でやり始めたんだよ。いやーお前らには感謝するよ。俺も景気付けにあの二人を選んだんだけど、あそこまでやって逆にやる気を削ぎ落とすとは思ってなかったからなー」
「シンはトラブルメーカーですね」
 私がシンの称号を決める。

「トラブルメーカー、シンですか……シンも気に入るんじゃないですかね?」
 恐らくこの場にシンがいたら誰が気に入るか! とツッコミを入れるだろう。このセレスの発言をシンにも聞かせたいよ。

 ―――――――――

「そろそろ完全に回復したかな……」
 しばらくベッドで休んでいると、やっと全回復した感覚がする。

「ん……」
 とその時、ちょうどマギアスが目を覚ます。

「大丈夫? マギアス」
「あ、あぁ」
 半身を起こして辺りを見回し、状況を理解するマギアス。

「なんか、ごめんね。やりすぎちゃって」
「いや、俺もごめん。でも本気で驚いたよ。シンがあそこまでやるなんて。アレを使っても勝てないとは……」

 いや、実はあれは俺がやったことじゃないんですけど……。
 多分あの夢に出てきたあいつがやったことなんだよ……。

 俺は詐欺をしたような罪悪感を感じる。

「そういえば、最後のアレって何なの?」
「あぁ、共振融合のことか?」
「きょ、共振融合……?」
 なんだそれ、聞いたことも食べたこともないぞ。

「ん? 知らない?」
「うん、全く」
「……ちなみにどこで共振武器を手に入れたんだ?」
 少し考えた後、そう質問してきた。

「ウェンズさんのお店だよ」
「……なるほど。それじゃ知らないのも無理はないか」

「ど、どういうこと?」
 納得した様子のマギアス。ど、どういうことだよ……教えてくれよぉ。

「じゃあ、まず共振融合について教えるよ」
「お願いします」

「共振融合ってのは、自分の共振武器と簡単に言えば融合することだ。自分の中に取り込むような感じ」
「ふむふむ」

「その融合後の能力は人それぞれ。何でも出来るオールラウンダーだったり、何か1つに特化した一点特化型だったりな」
「へぇ。ちなみにどんなのに特化してるのがいるの?」

「色々だなー。纏いや魔法、体術だったり身体を何かに変換したり、十人十色だ。でもその人の正確に寄るとか聞いたことあるな」
「色んなのあるんだ」

「でも1つだけ全てに共通してるものがある。それは全身体能力が大幅に上昇すること」
「大幅にか。それってどうしたら発動すんの?」

「発動条件は自分の共振武器の名前を発言して自分の魔力を共振武器に、共振武器の力を自分の身体に均一に通すことで出来る」
「意外と簡単そうだな」

「いや、この共振武器が持ってる共振力は魔力とは別物なんだ。それに共振武器の力は半端ない。制御するのもかなり高難度だよ」
「やっぱ難しそう……」

「更にそれを均一に通さなきゃいけないしな。まぁ、それが出来たら簡単に発動するよ」
 面白そうだな。プロットに教えてもらおう。

「……もしかして今、やってみようとか思ってるか?」
「あ、うん。そうだけど」
「それはやめとけ」
 きっぱりと断言された。
「え、なんで?」

「共振融合で制御を間違えて命を落とすことも少なくないからな。初めてやる人なんてそうなる人はざらにいる」
「命を……」
 なるほど。だからウェンズさんはこのことを教えてくれなかったのか。間違えても挑戦したりしないように。

「だからこれはやめとけ」
 顔を動かさず、目だけをこちらにやって忠告する。

 うわ、横顔もイケメン……。

「確かに、俺も命を落としたくないし、すぐには試さないよ」
「やるのはいいけど、慎重にな。まぁシンだったらすぐに出来ると思うけど」
「ん? なんで?」

「あ……いや、それが出来る俺に勝ったんだから、シンも出来るかなって思っただけだよ」
 マギアスは冷や汗を隠し、それに俺は気付かない。

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