イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜

新海 律希

第18話 シンVSレイ

「でもシン君とレイ運ないよね。こんな時期に入学なんて」
 とそんなことを唐突にクレアが言った。

「「え、なんで?」」
「だって今2月下旬だよ? あとちょっとでクラス替えテストだし」

「クラス替えテスト?」
「この学園では年の終わり毎にクラス替えテストを行って次の学年のクラスが決まるんだよ」
 先生が答えてくれた。

「クラスが違うと何かあるんですか?」
「上位のクラスほど注目されて就職とかしやすくなる。差別みたいだけど上位クラスのやつの方が功績を称えられやすいな」

 なるほど。でもこんな短期間に2回もテストとか、確かに運ないな。めんどくさい

「ちなみにテストはあとちょうど20日後な」
「内容はなんなんですか?」
「入学試験と同じ」
 あ、でもそれならまた先生と戦えるかも。よしっ!
 ガッツポーズをしながらそんなことを思う。

「ねぇシン」
 呼ばれた方を見るとレイが居た。

「どうした?」
「テスト予習も兼ねて1戦交えない?」
「いいけど急だな」
 なんで俺ってこんなに闘い申し込まれるんだ? まぁ、先生のお陰で全回復したからいいけど……。

「レイさんってシンのなんなの?」
 アレクが聞いてきた。……これだけ聞くと修羅場みたいだな。

「幼馴染みだよ」
「あぁなるほど」
「シンの幼馴染みってことは同じくらい強いのか!?」
 薄々感じてたけどザックって戦闘狂なのか?

「正直分かんないかな。レイとは闘ったことないから」
「じゃあこれが初か。楽しみだなシンの幼馴染み!」
「一応レイは纏いを2つ使えるから強いと思うよ」
 ピースサインを裏返したサインをしながら話す。
「2つ。それはすごいね」

「シーンいつまで話してるのー?」
「あ、ごめん」
「じゃあ僕達はまた観戦するよ」
 また見られるのかよ……。

「んじゃあまた俺が審判するな。シンは体調大丈夫か?」
「大丈夫です」
「ならいいや。んじゃ、構え!」
 俺は日影、レイは右手に雷華、左手にアポロンを持っている。

「雷纏い捌ノ型 八咫烏《やたがらす》!」
 同時に8つの雷の弾丸が襲ってくる。

「影纏い捌ノ型 八咫烏《やたがらす》!」
 こちらも八咫烏で相殺。

「隙あるよ? シン」
 気が付くとレイがすぐ側に来ていた。まじか!

「雷豪 剣《つるぎ》の形《けい》」
 銃に雷が纏い、剣のようなものになった。
 いや、何それ!!

「まさか、オリジナルの魔法を作ったのか……?」
 エクセレトスが驚いたようにそう呟いた。

 その剣で俺の事を襲ってくる。
 俺は影同化して10メートルほど後ろに行く。

「雷纏い漆ノ型 迅雷《じんらい》!」
 あれ、そう言えばレイって陸ノ型までしか使えないんじゃなかったか……?
 え、いつの間に使えるようになった?

 その動揺のせいで直撃してしまった。
「がはっ……!」
 人って痛い時ほんとにがはっとか言うんだな……。

 てかあっつ……!
 雷のせいで軽い火傷を負ってしまった。

 とりあえずレイの不得意なはずの近接戦に持ち込むか。

 俺は跪いた体勢から前傾姿勢になり、
「影纏い漆ノ型 迅一閃」

 俺の刀はレイに当たる……前に勢いが無くなりレイに当たるはずがその前に止まってしまった。

 原因は風。レイがこっちに突風を放ってきたのだ。

「影纏い弐ノ型 穿輪《せんりん》!」
「雷纏い参ノ型 万雷《ばんらい》の圧《あつ》!」

 例えるなら雷の壁のようなものが迫ってきている。距離があるほど大きくなるものだ。

 ……これ圧倒的にこっちが不利だな。
 そう思って俺は爆発で煙を起こしてレイの視界を塞いで体勢を立て直すことにする。

「エクリクシ・カプノス」

「うわぁ……やなことしてくるー……」

 俺は煙の中で探査魔法を使う。自分の魔力を伸ばしてって他の魔力とあたったら大体誰がどこにいるか分かるってだけだけど。

 ……いた。でも、レイも俺の居場所は掴んでるだろうしな。ここは竜飛鳳舞《りゅうひほうぶ》で行こう。

「肆ノ型 竜飛鳳舞《りゅうひほうぶ》」
「雷豪 剣《つるぎ》の舞《まい》」
 レイの周りを雷の剣が舞っている。
 これじゃ攻撃が通らない……。

 唯一レイの上空は空いているが、あからさまに誘ってきてるんだよな……。

 でも、他に出来ることはないし、誘いに乗るか!
 俺はレイの上空に向かって跳躍し、狙いを定める。

「参ノ型 獄撥《ごくばち》!」
 打ち付けるような攻撃。さぁ、どうくる?

「参ノ型 万雷《ばんらい》の圧《あつ》 八方《はっぽう》!」
 捉えていたレイの姿が消え、俺の周り360度に万雷の圧が現れる。

 そうきたかっ……!
 俺は獄撥《ごくばち》を中止し、心を落ち着かせる。そして本気で集中する。
 これからする技は、本気で集中しなければ今の俺には使えない。

「……影纏い陸ノ型 極夜《きょくや》」
 その瞬間、迫ってきていた雷が全て消えた。俺はそのまま着地するが、極夜は使ったままだ。

「っ! 雷纏い伍ノ型 雷電波《らいでんは》!」
 それも、俺の間合いに入った瞬間に消えた。

 極夜は、自分の間合いに攻撃が届いた瞬間に反応し、相殺させるもの。全方位が対象なので、集中力も、消費魔力も半端ないことになる。

 短時間ならそれほど魔力は食わないが、色々と燃費が悪い技なのでそう安安とは使えない。まぁ、燃費が悪い分効果がすごいんだが。

 っと、流石にもうやめとこう。使いすぎるとそれだけで魔力切れになってしまう可能性が大いにあるからな。

「影纏い壱ノ型 影牙《えいが》!」
 影を纏わせ攻撃に移ろうとした時、レイは何かを思いついたような素振りを見せた。

「フォス・フルゴル!」
 レイによって俺の方向に煌びやかな光が広がる。
 目くらましのつもりか? それなら探査魔法使えばいいだけの話だから無意味だな。

 俺は目を瞑りながらもレイの居場所を感知し、切りかかる。

「雷豪 剣《つるぎ》の形《けい》」
 レイは迎え撃つが、これだったら俺の纏いの方が威力は上だ。もらった!

 と、思った矢先、俺はレイに押し負けた。
「!?」
 なんでだ? 威力なら俺の方が全然上だったはず……。

「なんで!? って顔してるね。特別に教えてあげるよ。今私がやったのは試験の時エクセレトス先生がやったのと同じこと。光で照らして影を消すっていう方法。だからほら、刀見てごらん? 影が消えてるでしょ?」
 ……ほんとだ。纏わせていた影が消えていた。だから押し負けたのか。

「まぁ、これがほんとに効くのかは初実践だったからぶっちゃけ賭けだったけど」

「なるほどな。なら多分2つは突破法があるな」
「それはどんな?」

「まず1つ、これは賭けでしかないが、相手が先生みたいにそこの空間全てを照らせない場合だな。影は光が強いほど濃くなる。確かに光がありすぎて影の居場所がなくなったら無理だが、そうじゃなかった場合は影は存在できる。だからその場合は逆に強い攻撃出来るかもな」

「確かに相手の未熟さに賭けるしかないから賭けだね。2つ目は?」

「影魔法の出力を上げることだな。今の俺なら魔法で影を少しくらいは生み出すことが出来る。その出力を光に負けないくらい高めれば光があっても影は使える」
「なるほどねー。でも、それは今のシンには出来ないでしょ?」
「痛いとこ突いてくるなー」

「そういえばじゃあなんでさっきのは残ってた影使わなかったの?」
「俺もあれで使えなくなるとか思ってなかったから使おうとしなかったんだよ」

「あぁ。ま、次からはシンの周り全て照らすようにするよ」
「うわ、面倒なことしてくる。まぁ今の俺だったら照らされても大丈夫だけどな」
「どういうこと?」
「すぐに分かる……よっ!」
 言い終わるのと同時に影を刀に纏わせレイに向かっていく。

「オラ・フォス」
 俺の周りだけ全て照らされる。そのせいで纏っていた影は消えてしまった。

 俺はこの時、つくづく思った。あぁ、プロットが言ってたのはこういう時の事だったんだな……と。
 そしてもう1つ、やっぱプロットには感謝しきれないくらい恩があるな……と。

 俺の頭の中で、前の出来事が思い出される。

 ―――――――――

「おい、シン」
「ん? 何?」

「お前の影纏いだけじゃ、すぐに壁にぶつかるだろ。そういう時お前はきっと対処しきれないだろうからな。だからそういう時のために一応これも覚えとけ」
「これって?」

「今から見せるからちゃんと見とけまずは基本の技。ちゃんと見てろよ?」
「あぁ」

 ―――――――――

「冰纏い壱ノ型 冰剣戟《ひょうけんげき》!」
 冰を纏った日影がレイに向かって連撃を叩き込む。

 冰纏いは氷纏いの上の格のもの。極級の最上位に入るものだ。

「あぁっ!」
 纏っている冰を調整して切れないようにはしているからレイは打撃を受けたような痛みを感じているだろう。

「シン……今の技って……」
 尻もちをつきながら心底びっくりしたような表情でレイが聞いてくる。

 それに対して俺は……
「使える纏いが1つじゃないのはお前だけじゃないってことだな」
 ニカッと笑いそう答えた。

 レイも俺につられたのかフフッと笑い、
「そっかそっか。シンもいっぱい成長してるんだよねー」
 立ち上がり、付いた埃を払いながらそう言った。

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