カオルの邂逅旅記
遊び
カオルはたった一人電車に残され、先ほどの女装をした男性の言葉をずっと反芻し続けていた。
『自分のことなんてあなたが一番よくわかっているでしょう』
 まるで、塾に行かずにさぼった息子に諭すかのような、そんな言い方だった。
 真っ黒な髪をした幼い自分が涙目ぬぐっている姿が頭に浮かんだ。
「……。いや、自分にわかるわけがないじゃん……。」
カオルはそう呟いた。
 そもそも、寝ていれば勝手に違う場所に飛ばされるような、こんな理屈の通らない訳のわからない世界に放り込まれて、一体どうしたらこの世界から抜けだせられるのか?
 そういうことを聞きたかったのに。それって大切なことだろう。
 自分がなにかひどく間の抜けたことを言ったみたいな、そんな言い方だった。
 ガタンゴトン……。ガタンゴトン……。
カオルは座席に持たれてしばらくの間外の景色を眺めがら、昔のことを思い出していた。
 アンパンマンのアイスクリーム機器。テレビでCMに流れるたび、ほしいなぁと思っていた。
 小さいときって、ああいうお菓子を作る系のおもちゃによく憧れていたよなあ。
 大人になった今はもうさすがに、ああいうものをほしいと思ったことはないけど。
 まぁでも、子供というものは、いや、子供に限らず、ああいうものは買ってすぐ無駄にしてしまいがちだからなぁ。
 そういや、大きなぬいぐるみを欲しがった時も、おばさんは苦い顔をしていたなぁ。
『ちゃんと大事にするの?』
確かに、子供の時に欲しがるぬいぐるみなんて、大人になるまでずっと愛用し続ける人なんていないだろう。
 ぬいぐるみに限らず、カオル自身が大人になってから、こういったものを欲しがらなくなったその理由の一つに、そもそも、買ってもそれによって、自分自身の身になるかならないかを考えてしまうからなんだろうな、と思った。
アンパンマンのアイスクリーム機を買って、新しくアイスクリームを作って食べたところで、どうせすぐ飽きるだろうし。
 アイスクリームとか、お店にいけばいくらでも美味しいものとか、買うことができるし。
 「……。」
 緩やかな夕日の美しい景色を見つめながら、しばらく電車に乗り続けた。カオルは周りをみた。子供の時に来た時は苦い記憶だったけど、今こうしてみると、こんなに懐かしい良い雰囲気がでていたなんて……。
 「……。」
 今、買っても意味がないんだろうなぁ・・・。
ふとカオルは、そんなことを思った。
でも意味がなくてもいいから今度買ってみようか……。昔はほしかったんだから……。
 カオルはそう考えながら、またしても段々眠くなってきていることに気付いた。
 カオルは幼いカオルと、今の大人のカオルが一緒になってアイスクリーム機器を作っている姿を想像した。
 小さいカオルは美味しそうに目を輝かせながら、アイスクリームを食べている、そして、それを見守っている大人のカオルがいる。それはまるで自分の息子を見つめているかのように優しい眼差しだった・・・。
 そんなことを考えながら、カオルはまたしても深い眠りに落ちていった。
『自分のことなんてあなたが一番よくわかっているでしょう』
 まるで、塾に行かずにさぼった息子に諭すかのような、そんな言い方だった。
 真っ黒な髪をした幼い自分が涙目ぬぐっている姿が頭に浮かんだ。
「……。いや、自分にわかるわけがないじゃん……。」
カオルはそう呟いた。
 そもそも、寝ていれば勝手に違う場所に飛ばされるような、こんな理屈の通らない訳のわからない世界に放り込まれて、一体どうしたらこの世界から抜けだせられるのか?
 そういうことを聞きたかったのに。それって大切なことだろう。
 自分がなにかひどく間の抜けたことを言ったみたいな、そんな言い方だった。
 ガタンゴトン……。ガタンゴトン……。
カオルは座席に持たれてしばらくの間外の景色を眺めがら、昔のことを思い出していた。
 アンパンマンのアイスクリーム機器。テレビでCMに流れるたび、ほしいなぁと思っていた。
 小さいときって、ああいうお菓子を作る系のおもちゃによく憧れていたよなあ。
 大人になった今はもうさすがに、ああいうものをほしいと思ったことはないけど。
 まぁでも、子供というものは、いや、子供に限らず、ああいうものは買ってすぐ無駄にしてしまいがちだからなぁ。
 そういや、大きなぬいぐるみを欲しがった時も、おばさんは苦い顔をしていたなぁ。
『ちゃんと大事にするの?』
確かに、子供の時に欲しがるぬいぐるみなんて、大人になるまでずっと愛用し続ける人なんていないだろう。
 ぬいぐるみに限らず、カオル自身が大人になってから、こういったものを欲しがらなくなったその理由の一つに、そもそも、買ってもそれによって、自分自身の身になるかならないかを考えてしまうからなんだろうな、と思った。
アンパンマンのアイスクリーム機を買って、新しくアイスクリームを作って食べたところで、どうせすぐ飽きるだろうし。
 アイスクリームとか、お店にいけばいくらでも美味しいものとか、買うことができるし。
 「……。」
 緩やかな夕日の美しい景色を見つめながら、しばらく電車に乗り続けた。カオルは周りをみた。子供の時に来た時は苦い記憶だったけど、今こうしてみると、こんなに懐かしい良い雰囲気がでていたなんて……。
 「……。」
 今、買っても意味がないんだろうなぁ・・・。
ふとカオルは、そんなことを思った。
でも意味がなくてもいいから今度買ってみようか……。昔はほしかったんだから……。
 カオルはそう考えながら、またしても段々眠くなってきていることに気付いた。
 カオルは幼いカオルと、今の大人のカオルが一緒になってアイスクリーム機器を作っている姿を想像した。
 小さいカオルは美味しそうに目を輝かせながら、アイスクリームを食べている、そして、それを見守っている大人のカオルがいる。それはまるで自分の息子を見つめているかのように優しい眼差しだった・・・。
 そんなことを考えながら、カオルはまたしても深い眠りに落ちていった。
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