カオルの邂逅旅記
ひとつ目の過去は……。
 カオルは電車の中を一通り眺め終わったあと、心配を通り越してあきれていた。
 なんだこれ……。まるで子供が大好きなおもちゃのような世界ではないか……。
 全く……。一体なんだって言うんだ。大の大人がこんな訳のわからない妄想みたいな世界に入り込んでしまって。
カオルは 、朝の通勤電車に起きた、突如とした不思議な光景に、最初は恐怖に足がすくんでいた。一つも身動きができないぐらいだった。
 しかし、段々とこうしてこの状況に、驚きつつ、どこかワクワクしている自分がいることに客観的に気付いた。
 そしてその事にきづいた瞬間急に冷め、しかもイライラしてきたのだ。ずっと立ちっぱなしなので、足の疲労がピークに達したのもあると思う。
しかも、さっきまで人数でパンパンだったのに、気づけばまばらな人数の人しか乗っていない……。周囲の数少ない人達を見たが、誰一人としてこの異様な光景におどろく人はいなかった。
 カオルは、思いきって声をかけてみることにした。
 近くに立っていた方に話しかけようとして、目を合わせようとするのだが……。
 目が合わない……。
「あの……。」
誰一人として反応しなかった。無視をされた。 なんてことだ。
 全くなんだってこんな意味不明な状態にまきこまれているのだろう。
 カオルは自分がイライラしている状態に少し安心感を覚えた。ちゃんと現実的な感覚を忘れていない。
……?あれ、ちょっと待ってほしい。こんなの冗談じゃない。このままだと、無断欠勤だ。どうみたってこれは会社には向かっていないだろうし。
 大体、今日やるはずだった仕事がいっぱいだったのだ。もう無駄な悩みを増やさないでくれよ。
 もしかしたら、カオルは最近本当に業務量が多くなって疲れていたのかもしれない。自分では気づかなかっただけで。だから、イライラしたり他人に対して冷たい態度をとっていたのではないか。
 カオルはそう思うと、ため息をついてその辺の空いていた席にどかっと座った。
 今、カオルはハナさんに対して冷たい態度をとってしまった時と、同じような無気力状態に陥っていることに気付いた。
 まったく、こんな非常事態におどろく気力さえ残っていないなんて……。
  カオルはただ力なくこの光景を見つめ続けていた。
 
これは一体どこに向かっているんだろう……。
それにしても外の光景はとても美しい光景だった。深い青のなかをピンク色の光やオレンジ色の様々な光が美しくすさまじく輝きながら後ろに移動していった。
 まるで深海の中をものすごいスピードで移動しているかのようだった。周りの人達は、この光景に対して特になんとも思わないようだった。不思議に思っている人はどうやらカオルだけのようで、皆ごく普通に過ごしている。
 こうしてみるとなんだか時代を未来へとタイムスリップして、未来の地球人の過ごし方を覗き見しているような気分にすらなってくる。
 よくある映画などでこんな感じの光を通るシーンがあるし。
 キラキラとした光に囲まれて、カオルは気持ちが落ち着いてきたのか、それとも座って力が抜けたのか、段々と眠たくなってきた。
 背もたれにドカーッともたれた状態のまま、カオルは目が虚ろになってきた。すると前方の通路の先の扉が見えないことに気付いた。
 「……。」
 この車両は一番前ではないので、普通なら前方に扉が見えているはずだった。しかし、扉が全く見えず、白く明るい光しか見えない……。
 なんだこれ……。
 カオルは目が閉じそうになるのを何とか開けようとしながら、また閉じてを繰り返していた。
 さすがにこの状況で寝てしまっては、なにか起きたときに、対応ができない。危ない……。
 最後になんとか身の安全を考慮した考えで起きようと努力をしていたが、その光を見ているうちにカオルはいつのまにか眠ってしまっていた。
 
 
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