異世界転生した悪役魔女のリセットライフ
第六章 覚悟
合格した人はそのまま帰宅せずに寮に案内される。私もその一人だった。寮の二階の部屋に通された私は、案内係の人が帰っていくのを見届けた後、部屋のベッドで項垂れていた。
学園全体に宣戦布告をした私は、悪い方で有名になってしまった。きっと私の印象は最悪だ。
やってしまった、本当にやってしまった...。happyENDを目指すと決めたとこだったのに。このままじゃbadENDまっしぐらだ。
明日は学園生活初日。こんな事ででうまくやっていけるの?
「ミッシェル、入るよ?」
ノックと声が同時に聞こえてきた。声で誰なのか分かるから静かに待ってると、予想通りの人物が中に入ってきた。
「親に合格の通信してきたよ」
「ありがとう、ベル」
ベルも無事合格出来たみたいで、ベルの親に通信をしてきたらしい。通信とは、一階にある機械で向こうと顔を見合わせながら連絡する事が出来るの。この世界にはケータイ電話がないからどこでも連絡は出来ないけど、その代わりあれがあるから結構助かる。
「.....ミッシェル、まだ気にしてるの?」
「だって~...」
ベルは私がずっと入学試験での出来事を気にしてる事を分かっていて、それでずっと慰めてくれていた。
「私は、カッコ良かったと思うよ」
「ベルは、本当に優しいね」
そうやってベルはずっと私の側に居て慰めてくれる。私はそんなベルの強さと優しさが羨ましい。
「私は、ミッシェルの方が優しいと思うけどな」
「えぇ?!い、いや私は全くと言って良い程優しくなんかないよ!」
会長に間違ってる宣言を堂々としちゃったし。プライドが高いエヴァンに全生徒が居る前でだよ?気をつかえない私に優しさを持ち合わせてるとはどうしても思えなかった。
「大丈夫だよ。私がミッシェルを守るから」
その言葉に私の胸は大きく波打った。そんな事言われたら、女でもときめいちゃうよ。もしかして、わざと?わざとなの?!
.....ベル、恐ろしい子。
「あ、ありがとうベル。」
「うん、やっぱミッシェルは笑った方が可愛いね」
ベルは暫く部屋に居てくれたんだけど、ベルだって明日の準備があるだろうし―もう、大丈夫―と言って帰ってもらう事にしたんだけど、部屋を出ていくまでに何度も私の方をちらちらと気にしていた。本当に大丈夫なのに、ベルは心配性だな~...。
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「なんか、騒がしいな」
朝から私の部屋のドアを物凄い音を立てて叩いてる音が聞こえてきた。
一体、朝早くから何の用があるの?
眠い目を擦りながらドアを開けると、そこには慌てた様子ベルが立っていた。
「おはよ、ベル」
「うん、おはよ。...凄い髪だね」
だって仕方ないじゃない。ミッシェルの髪、ストレートなのに寝癖が超付くんだもん。
大丈夫、学園に行くまでには完璧にしとくから。
「ミッシェル、早く着替えて学園に行かなきゃ!」
「え?でも、時間まだあるじゃない」
「初日は30分早めに始まるんだよ。案内係の人から聞かなかったの?」
案内係の人...?そういえば、何か言ってたような気がする。昨日は色々あったからぼっーとしててちゃんと聞いてなかった。
「.....ベル、ちょっと待ってて」
そう声を掛けて孟スピードで準備に取り掛かった。いつもの魔女服に着替え、髪もとかすと綺麗な金髪のストレートに戻った。
「はぁ、はぁ...お、お待たせ」
部屋の外で待機してるベルのとこに慌てて行くと、息切れが凄い私をベルは驚いた表情で見ていた。
「そんなに慌てて準備しなくても良いのに」
「そう言う訳にはいかないわよ。最初が肝心だし。遅刻魔のレッテル貼られたくないもの。」
「.....遅刻魔?レッテル?」
ベルは慌てなくても良いって言ってくれてるけど、本当にそう言う訳にはいかないの。遅刻魔のレッテルを貼られたら、色々と終わっちゃうもの。
未だに訳が分からないと言った様に首を傾げてるベルを連れて階段を駆け下りると隣の学園に向かった。
学園の門を潜ると、あっちこっちから視線を感じた。それだけでも気分が悪い。女生徒達は冷めた目を向けてきて、男生徒達もニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながらこちらを見ていた。
急に居たたまれない気持ちになり、俯きがちになりそうな私の手をベルが優しく掴んで引っ張ってくれた。
そのお陰で、人の目を気にせずにその場を通りすぎる事が出来た。
人通りが少ないとこまで来ると、ベルがいきなり私の手を両手で包み込んだ。
「ミッシェルは気にしないで前だけを見てれば良いんだよ。会長に自分の気持ちをまっすぐ伝えたみたいにさ」
私は、ベルの手が好きだ。
ベルの手に触れてると安心出来る。
他の人物とはまた違った優しくて暖かい力...。
それが、ベル・クォーツだから。
「私、ベルの事好きだよ」
「きゅ、急にどうしたの?」
「ちょっと言ってみたくなっただけ」
いきなり告白みたいに告げた私にベルは少し戸惑いを見せてたけど、言いたかったのは事実だし仕方ないでしょ?
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「新入生の諸君、ごきげんよう。」   
エヴァン会長が相変わらず高いとこから私達生徒を見下ろしながら挨拶をしていた。
「此処に無事、入学出来た君達だが此処は実力主義の学園。君達の能力に合わせてクラス分けをさせてもらった。魔法など学業が特に優れてる者はⅠ組、Ⅰ組には少し劣るが次に優れてる者はⅡ、続いてⅢ、Ⅳ、Ⅴの順に分けてある。クラス分けはこの通りだ。」
エヴァン会長の合図と共に男性二人が大きなボードを持ってきた。そこには名前が書いてある。
私はどこのクラスかな。私の実力からしてⅠ組、Ⅱ組は絶対有り得ない。じゃあⅣ、Ⅴのどっちかだろうな。
そう思ってた私の考えは大きく外れることになるんだけど。
目線をⅣ組、Ⅴ組のとこにやって見てみても私の名前は全くない。じゃあ、Ⅲ組のとこだろうか。Ⅲ組のとこに目線をやる時、ふとⅠ組が目に写り込んだ。Ⅰ組は他のクラスと比べて生徒の人数が少ない。だから直ぐに表示されてる名前が分かった。私が良く知ってる人達...。メインキャラクターがそのクラスに揃っている。そこにはベルの名前もあった。
そして、その横には私の名前が何故かあった。
―見間違いよね―
もう一度Ⅰ組の生徒の名前を最初から見てみても、やっぱりそこには私の名前が。
「やった、ミッシェルと同じクラスだ!」
ベルが横で他人事の様に呑気にしてる。
いや、実際他人事なんだけど。
「ミッシェル、三年間よろしく」
「三年間?」
「話聞いてないの?三年間、決まった同じ教室で暮らすんだよ?それは私達1年だけじゃなくて上級生も同じ教室なんだから」
.....て、事は。
三年間皆から色んな意味で注目されるって事?!
私は、注目されるのが嫌いだ。それは悪い意味では勿論だけど、良い意味であっても周りから見られるのは良い気がしない。
そして今、私は皆から注目を浴びる事になる。生徒会長に歯向かった事と、周りが良い意味で目立ちすぎてそんな中に何の魔力も持たない一般人が入るんだ。皆納得しないに決まってる。
「ミッシェル、だんだん顔色悪くなってない?」
対策練らなきゃ。無理に等しいけど。じっとしているよりはマシ。
「えっと、ミッシェル?....聞いてないか。」
三年間、たった三年間だもの。ベルだって隣に居てくれるし、私は独りじゃないんだから。
そう思ったら気持ちが幾らか落ち着いてきた。
「よーし、やってやるんだから!」
「ちょっ、ミッシェル?!」
此処が学園のド真ん中だという事をすっかり忘れて叫んでしまった私はまたもや注目を浴びてしまった。
先生達が睨んでるけど今だけは気付かないふりをしとこう。
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