異世界転生した悪役魔女のリセットライフ
第一章 ゲームの世界に来ちゃいました!
「この魔女ってほんとクズだよね」
昼休み、いきなり女友達がひとつのゲームを私に見せてきた。
私の学校で今超絶流行ってるのがこの『fairy tale LOVE』という新感覚の恋愛RPGゲームだ。その中で特に注目を浴びてるのが物語の鍵を握るであろう敵キャラの魔女、“ミッシェル・エドワーズ”。そのキャラがとんでもなく意地が悪いんだよね。ヒロインの目の前にことごとく現れて勝負を挑むんだけど、その方法が...。
いきなり砂をかけて目を瞑った隙に攻撃したり、ヒロインが光の魔法を使ったら鏡を取り出して妨害したりなど...。その時に毎回登場人物が現れて助けてくれるんだけど。ハッキリ言って、このキャラの良いところなんてないんじゃないかな。
てかアンタ魔女でしょ。魔女なら魔女らしく普通に魔法で勝負しなさいよと、何度思ったことか。だけど、その魔女は最後に処刑されちゃうんだよな...その時に初めてヒロインに抱いていた感情をぶちまけるの。
『家族とずっと仲良しで、良い仲間に恵まれていて、そして好きな人と結ばれて...そんなアンタがずっと羨ましかった』って。
そう言った直後、魔女は処刑されてこの物語は幕を閉じるの。
「でも、私はこの魔女嫌いになれないかな」
確かに性格悪いし、ヒロインの男を奪おうとする最低な女だけど...この魔女の気持ちも分かるから...。
だから、完全に嫌いになんてなれないよ
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とは言ったけど、この魔女にしてくださいとは言ってなーい!
学校帰り、超とばしてる車に撥ね飛ばされて私は死んだ。
だけど、私は目を覚ました。
そして、見えた先にあったのはどこかで見たことがある場所だった。
そっか、この場所に見覚えがあるなんて当たり前なんだ。
だって、此処は...
私が毎日明け方まで遊んでる『fairy tale LOVE 』の世界なんだから!
そして、私が転生したのはこの帽子、この服装...間違いない、“ミッシェル・エドワーズ”だ!
なんで、よりにもよって転生先がゲームの世界で、あの結末を迎える悪役魔女なの?!もっと、色んなキャラがいるじゃない。メルリちゃんとか、クレアちゃんとか!ヒロインにしてなんて贅沢は言わないから、悪役だけは止めてください!
このままじゃ、私...。
処刑されて終わっちゃう!
現実世界で死んだのに、此処でも死ぬなんてそんなの絶対嫌!
私が一人、これからの事を想像して項垂れてると、向こうの草むらが音を立てて揺れた。
「だ、誰?!」
もしかして、私の追手?!
嘘、早く逃げなきゃ...。
このゲームでも確かミッシェルは逃げてたはず。だけどその内捕まってしまい、あの結末を迎えた...。
え、じゃあちょっと待って?と言うことは、最終回目前?もう手遅れのとこまで進んじゃったの?
とにかく逃げなきゃ。だけど私の足は、震えてるのか思うように動く事が出来なかった。
―もうダメ...!―
私はきゅっと目を閉じた...だけど返ってきた言葉は、
「貴女、大丈夫?!」
―へっ?―
ゆっくり目を開けるとそこに居たのは...
この物語のヒロイン、“ベル・クォーツ”だった。
「なんで、此処に居るの?貴女の運命の方はどこ?」
「え、運命?何言ってんの?大丈夫?」
え、だってこの時にはもうヒロインとその運命の相手は結ばれてるはず。
「私はベル・クォーツ、貴女は?」
え、私の事を知らない?
って事は、此処はまだ私とヒロインが出会う前?!
じゃあ私、追われてないんだ。
よかったぁ~…。
安心したら、いっきに全身の力が抜けてその場に座り込んでしまった。
「え、え?本当に大丈夫?」
ヒロインは私に手を貸して立つのを手伝ってくれた。
優しい、流石はヒロイン。
「ごめんなさい...私は、ミッシェル・エドワーズよ」
最初が肝心だから、嫌な印象を与えないためにもとびっきりの笑顔で自己紹介をしなきゃね。
だけど、ヒロインは私の顔を見るなりわぁっと目を輝かせていた。
―え、なに?―
「貴女、笑った顔とっても可愛いわね!」
貴女の方こそ、その笑顔とっても眩しいわよ。
だけど、ヒロインの言いたい事は分かる。私が転生したミッシェル・エドワーズは、顔だけは誰もが認める美少女なんだから。あんな性格じゃなかったら大喜びしてるんだけどね。
「じゃあ、貴女の事はミッシェルって呼んでいい?私の事も呼び捨てで構わないから」
ゲームでは、ヒロインの言葉の選択などは全て私にかかってるからこんな風にヒロインと話すなんてなんだか新鮮だ。そして、ヒロインがこんなにも親しみやすいだなんて知らなかった。
そんなヒロインが呼び捨てで良いって言ってるんだからお言葉に甘えちゃおっかな。
「えっと、改めましてよろしく...ベル。」
「...照れた顔も可愛いわね!」
...ちょっと変わったとこがあるのも初めて知った。
「ミッシェルは、なんでこんなとこにいたの」
「え、それは...」
そんなの、知るわけないじゃない!出来たら私が知りたいわよ。でも、ベルになんて言えばいいの?絶対変な子って思われるじゃない。
「ん~と、散歩?」
「へぇ、ミッシェルって散歩が好きなのね」
つい疑問符を付けてしまったけど、よかった怪しまれてないみたい。だけど、我が儘性悪女から散歩好きの森ガールに進化しつつあるけど。
いや、これで良いんじゃない?
そうよ、ベルはまだ私の事を知らないんだから性格が違ったって怪しまれないはず。いいえ、絶対に怪しまれないわ。
「そう言うベルはどうしてこんな人通りが少ない場所に居るの?」
「私ね、もうすぐしたら新しい学校に通うんだ。そこさ、僚生活だから此処には暫く来れないなぁって」
そっか。ベルは確かそこで、恋人候補の男子やメルリちゃん達、かけがえのない友達と出会うんだよなぁ。最初は魔法が上手く使えないベルを気に食わない人達だったけど、ベルの温もりを知った皆は徐々にベルを受け入れていく。...ほんと、良い話よね。
でも私、ミッシェルは学院に通ってないからその光景を見ることが出来ない...。
―くっ、良いシーンを間近で見れないなんて―
皆に助けられながらも学院の中でどんどん成長していくベルと、ずっと孤独で温かみを知らないまま今日まで生きてきたミッシェル。
そんな孤独で人の気持ちが分からない彼女だからこそ『なんで、魔法もまともに使えないあの子が...?』ってずっと思ってたのかもしれない。
あぁ、ダメだ~…こんな、ミッシェルの事ぜーんぶ分かってますみたいな口聞くから本当にされちゃったのかな?
「ミッシェルは、どこの学校に行くの?」
か、考えたこともなかった。そういえば、ミッシェルってまともに学校に行ってたのかな?
「もし、まだ決まってないなら...私と同じ学校に行かない?」
え、誰と同じ学校?...ベルと?
「ダメ、だよね?」
「.....ダメ、じゃないけど」
普通はミッシェルとベルは同じ学校に通ってないんだけど、そこまで大幅に世界を変えても大丈夫なのかな?
ちらっとベルを見たら、私にお願いポーズをとっていた。
―うっ、断りづらい―
まぁ、なんとかなるよね。
「えぇ、分かったわ」
「本当に?!」
ベルがそこまで喜んでくれるなら別に良いかなって思えてきちゃう。どんな事がこれから起きても全部、ぜーんぶ回避してハッピーエンドを目指せば良いだけだし。
全員が幸せな世界って考えただけでもわくわくするでしょ?
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