Unlucky!
第五十一話 ウィンドドラゴン
「ねえねえ、あんたってなに?」
ヒメが獣のように歯を見せて威嚇する。
対象は葵だ。
「あー、こいつはな」
俺が葵について説明しようとすると、葵に口を押さえられる。
「私は、ぷにゃんぷにゃん。呼びやすいように呼んでください。ここにいるソラソラのクラスメイトにして、恋人です」
ピクリとヒメの眉が動く。何か言い出す前に、俺は忠告する。
「こいつは俺の友人だがそれだけだ」
「というのはソラソラの照れ隠しです」
いやんいやんと葵は頬を押さえながら身をよじらせる。
「違ぇ、おい、ヒメ笑顔でナイフ持ち出すな。お前は戦いは苦手だろ」
「アキタカは私の物なのっ!」
「ヒメ、待ちなさい。アキ兄は私の物なのだけど」
「……ちょっと、それも許せない」
オレンジが瑞希の肩を押さえる。
「師匠、あんたって女たらしよね」
「なんで、フィリアムしかまともな人間がいないんだよ」
師匠とかほざいているが。
「俺は女たらしじゃねえよ。ちゃんと付き合うつもりはないって伝えてる」
効果があるかはともかく。
「へえ? なら今言ってくれば?」
「ああ、わかったよ」
これ以上無駄な時間を使いたくない。
「お前ら話を聞け」
「ようやく、誰にするか決めたようね」
くるりと振り向き、髪をかきあげる瑞希。
「俺はテメェらの誰とも付き合うつもりはねーし、ましてや結婚するつもりもねえっ!」
全員の視線を一手に受けながら俺は断言してやった。
すると、瑞希ははんっと鼻で笑う。
「アキ兄の意志は関係ないのよ」
「私も同意」
「ソラソラ……ホモ?」
「危険な食べ物に手を出すヤツがいるか?」
いった途端に全員が喚き散らした。
フィリアムを除く全員が一斉に叫んで俺を見た。なんでこんなとき仲がいいんだよ。
ダメだ、こりゃ。
俺はがくりとうなだれてフィリアムの元に戻り、
「作戦、会議だったよな?」
こりゃ大変そうだと俺はため息をついた。
次の日。
ある程度作戦を組み立ててから俺たち六人はダンジョンに向かう。
ウィンドドラゴンの討伐。
そして、過去最高の人数でのパーティーだ。
昨日と同じようにウィンドドラゴンが何かを言ってから、戦いは始まった。
「ソラ、頼むわっ」
「任せろ」
目の前に足場を出現させる。
オレンジ、フィリアムが登り、さらに進んでいく。
俺は別方向からウィンドドラゴンへ向かう。
自分の場所、フィリアムの場所。凄まじいスピードでMPを使うがオレンジが頃合を見て回復薬を飲んでくれる。
グラウンドスカイのMP消費、俺のMPの最大値を予めフィリアムには教えてある。
俺がスキルを使った回数をフィリアムは数え、MPを計算してオレンジに教える。
オレンジは回復薬で俺のMPを回復させるということだ。
この戦闘で大変なのはフィリアムだろう。
空に浮かぶウィンドドラゴンは俺たちに風の弾を吐いてくるが、すべて避ける。
ウィンドドラゴンに剣が届く位置まで行き、俺はフォースジャンプを発動する。
ガンエッジを使用し、まずは先制攻撃だ。
「らぁっ!」
剣を一閃。ウィンドドラゴンの鱗は頑丈で大した傷はないが、初めて傷を与えた。
ウィンドドラゴンが邪魔者を叩き落とすように片手を振り回すが、すでに俺はそこにいない。
ジャンプの残り回数を計算しながら、剣を振り足場を出現する。
フィリアム、オレンジには自由に動くように指示している。
俺の視界に入っていれば、状況に合わせて足場を作ってやれる。
ある程度作ると、俺のMPが回復する。
「まずはいっちょくらっときな」
グレネード弾を放つ。
羽に当たり、爆発。ウィンドドラゴンの飛行が乱れ、ふらつく。
隙を見逃さない。
ジャンプ――飛び移り俺はガンエッジを叩きつける。カートリッジブレイクを発動し、銃撃とともに叩きつける。
フィリアム、オレンジも俺の作った足場を利用して攻撃を始める。
強いとは感じなかった。
昨日は一人で戦い、苦戦したウィンドドラゴン。
今は全員に一方的に攻撃される雑魚だ。
時々来る攻撃はなるべく避ける。
受けて爆発するような攻撃もあるからだ。
とはいえ、何かあればオレンジのポーション、瑞希も回復魔法を使える。
パーティー、仲間。それがいるだけで、ここまで変わるとはな。
「いくよっ!」
地上からヒメの声が届く。
「アキ兄たち離れなさいっ」
瑞希たちの魔法の準備が終わったようだ。
「あ、ソラソラはそこにいてもいいですよ?」
三人が巨大な魔法陣をそれぞれ浮かび上がらせる。
ヒメは雷、瑞希は氷、葵は火。
「さっさと飛び降りろっ!」
ダメージはなくても巻き添えにされたくはない。
ウィンドドラゴンの翼に雷が落ちる。怯んだ体に無数の氷の槍が突き刺さり、小さな太陽がウィンドドラゴンに落ちる。
ウィンドドラゴンは逃げることも出来ず、すべての魔法を浴びる。
そして、その間にもフィリアムはスナイパーライフル、俺は足場を作って射撃する。
「ほんと、タフね」
瑞希が汗を拭うような動作とともに、そんな呟きを漏らす。
まだまだ、こちらには余裕がある。
ウィンドドラゴンの体力はもう少ない。
「さっさと決めるぞ」
俺が叫び、足場を作り、ウィンドドラゴンに接近する。
周囲から剣、拳、銃による連続攻撃。
ウィンドドラゴンが振り払うように暴れたら、一度離れ魔法の援護を受けてから追撃する。
残り体力が三分の一をきったところで、計画通り一気に攻める。
「マグナム弾、くらっときなっ!」
マグナム弾をセットしたままフルバーストを発動。
すさまじい衝撃に腕が跳ね上がるが、20発のマグナム弾がウィンドドラゴンに当たり、一気に体力を削る。
「ショットガンフルバースト!」
フィリアムの持つショットガンから大量の銃弾がばらまかれる。
がんがんウィンドドラゴンの体力が減っていく。
「天空掌底撃!」
オレンジが右手を一気にひき、衝撃すべてを乗せて叩きつける。
ウィンドドラゴンがぐらつく。
「もういっちょっ!」
ヒメが大きな竜を召喚して、ブレスを吐かせる。
「ブリザードランス!」
瑞希の唱えた魔法。
氷の嵐がウィンドドラゴンを巻き込み、槍を生みだし突き刺していく。
「メテオハンマー!」
葵の魔法――拳の形をした隕石が氷の嵐から逃れたウィンドドラゴンの頭に振り落とされる。
ウィンドドラゴンの体力がわずか。
ボスはHPが赤くなるとキレる。だからこそ、その前に一気にケリをつける予定だった。
いや、これで終わりだな。
まだ僅かに体力を残したウィンドドラゴンの目が赤くなる。
俺は目の前に足場を作り、拳銃を構える。
リロードを終えた拳銃。入っている銃弾はマグナム弾だ。
ウィンドドラゴンの頭につきつけ、
「Unlucky!」
フルバーストを発動する。右腕が弾け飛びそうになり、発射された銃弾がウィンドドラゴンの頭に突き刺さる。
ウィンドドラゴンが一際大きな悲鳴をあげて、落下する。
戦場に落ちたウィンドドラゴンはゆっくりと一度起き上がり、何かの紋章を残して消えた。
俺がそれを拾い上げると、
『すべてのドラゴンは倒された――これより、最後のダンジョンが解放される。場所は始まりの街。ドラゴンを倒した証を持つものだけが通ることの出来る最終ダンジョンにて、私は待つ』
私、というのはこの世界の創始者だろうか。
とにかくだ。
これで、この世界ともお別れか。
仲間、か。
ヒメが獣のように歯を見せて威嚇する。
対象は葵だ。
「あー、こいつはな」
俺が葵について説明しようとすると、葵に口を押さえられる。
「私は、ぷにゃんぷにゃん。呼びやすいように呼んでください。ここにいるソラソラのクラスメイトにして、恋人です」
ピクリとヒメの眉が動く。何か言い出す前に、俺は忠告する。
「こいつは俺の友人だがそれだけだ」
「というのはソラソラの照れ隠しです」
いやんいやんと葵は頬を押さえながら身をよじらせる。
「違ぇ、おい、ヒメ笑顔でナイフ持ち出すな。お前は戦いは苦手だろ」
「アキタカは私の物なのっ!」
「ヒメ、待ちなさい。アキ兄は私の物なのだけど」
「……ちょっと、それも許せない」
オレンジが瑞希の肩を押さえる。
「師匠、あんたって女たらしよね」
「なんで、フィリアムしかまともな人間がいないんだよ」
師匠とかほざいているが。
「俺は女たらしじゃねえよ。ちゃんと付き合うつもりはないって伝えてる」
効果があるかはともかく。
「へえ? なら今言ってくれば?」
「ああ、わかったよ」
これ以上無駄な時間を使いたくない。
「お前ら話を聞け」
「ようやく、誰にするか決めたようね」
くるりと振り向き、髪をかきあげる瑞希。
「俺はテメェらの誰とも付き合うつもりはねーし、ましてや結婚するつもりもねえっ!」
全員の視線を一手に受けながら俺は断言してやった。
すると、瑞希ははんっと鼻で笑う。
「アキ兄の意志は関係ないのよ」
「私も同意」
「ソラソラ……ホモ?」
「危険な食べ物に手を出すヤツがいるか?」
いった途端に全員が喚き散らした。
フィリアムを除く全員が一斉に叫んで俺を見た。なんでこんなとき仲がいいんだよ。
ダメだ、こりゃ。
俺はがくりとうなだれてフィリアムの元に戻り、
「作戦、会議だったよな?」
こりゃ大変そうだと俺はため息をついた。
次の日。
ある程度作戦を組み立ててから俺たち六人はダンジョンに向かう。
ウィンドドラゴンの討伐。
そして、過去最高の人数でのパーティーだ。
昨日と同じようにウィンドドラゴンが何かを言ってから、戦いは始まった。
「ソラ、頼むわっ」
「任せろ」
目の前に足場を出現させる。
オレンジ、フィリアムが登り、さらに進んでいく。
俺は別方向からウィンドドラゴンへ向かう。
自分の場所、フィリアムの場所。凄まじいスピードでMPを使うがオレンジが頃合を見て回復薬を飲んでくれる。
グラウンドスカイのMP消費、俺のMPの最大値を予めフィリアムには教えてある。
俺がスキルを使った回数をフィリアムは数え、MPを計算してオレンジに教える。
オレンジは回復薬で俺のMPを回復させるということだ。
この戦闘で大変なのはフィリアムだろう。
空に浮かぶウィンドドラゴンは俺たちに風の弾を吐いてくるが、すべて避ける。
ウィンドドラゴンに剣が届く位置まで行き、俺はフォースジャンプを発動する。
ガンエッジを使用し、まずは先制攻撃だ。
「らぁっ!」
剣を一閃。ウィンドドラゴンの鱗は頑丈で大した傷はないが、初めて傷を与えた。
ウィンドドラゴンが邪魔者を叩き落とすように片手を振り回すが、すでに俺はそこにいない。
ジャンプの残り回数を計算しながら、剣を振り足場を出現する。
フィリアム、オレンジには自由に動くように指示している。
俺の視界に入っていれば、状況に合わせて足場を作ってやれる。
ある程度作ると、俺のMPが回復する。
「まずはいっちょくらっときな」
グレネード弾を放つ。
羽に当たり、爆発。ウィンドドラゴンの飛行が乱れ、ふらつく。
隙を見逃さない。
ジャンプ――飛び移り俺はガンエッジを叩きつける。カートリッジブレイクを発動し、銃撃とともに叩きつける。
フィリアム、オレンジも俺の作った足場を利用して攻撃を始める。
強いとは感じなかった。
昨日は一人で戦い、苦戦したウィンドドラゴン。
今は全員に一方的に攻撃される雑魚だ。
時々来る攻撃はなるべく避ける。
受けて爆発するような攻撃もあるからだ。
とはいえ、何かあればオレンジのポーション、瑞希も回復魔法を使える。
パーティー、仲間。それがいるだけで、ここまで変わるとはな。
「いくよっ!」
地上からヒメの声が届く。
「アキ兄たち離れなさいっ」
瑞希たちの魔法の準備が終わったようだ。
「あ、ソラソラはそこにいてもいいですよ?」
三人が巨大な魔法陣をそれぞれ浮かび上がらせる。
ヒメは雷、瑞希は氷、葵は火。
「さっさと飛び降りろっ!」
ダメージはなくても巻き添えにされたくはない。
ウィンドドラゴンの翼に雷が落ちる。怯んだ体に無数の氷の槍が突き刺さり、小さな太陽がウィンドドラゴンに落ちる。
ウィンドドラゴンは逃げることも出来ず、すべての魔法を浴びる。
そして、その間にもフィリアムはスナイパーライフル、俺は足場を作って射撃する。
「ほんと、タフね」
瑞希が汗を拭うような動作とともに、そんな呟きを漏らす。
まだまだ、こちらには余裕がある。
ウィンドドラゴンの体力はもう少ない。
「さっさと決めるぞ」
俺が叫び、足場を作り、ウィンドドラゴンに接近する。
周囲から剣、拳、銃による連続攻撃。
ウィンドドラゴンが振り払うように暴れたら、一度離れ魔法の援護を受けてから追撃する。
残り体力が三分の一をきったところで、計画通り一気に攻める。
「マグナム弾、くらっときなっ!」
マグナム弾をセットしたままフルバーストを発動。
すさまじい衝撃に腕が跳ね上がるが、20発のマグナム弾がウィンドドラゴンに当たり、一気に体力を削る。
「ショットガンフルバースト!」
フィリアムの持つショットガンから大量の銃弾がばらまかれる。
がんがんウィンドドラゴンの体力が減っていく。
「天空掌底撃!」
オレンジが右手を一気にひき、衝撃すべてを乗せて叩きつける。
ウィンドドラゴンがぐらつく。
「もういっちょっ!」
ヒメが大きな竜を召喚して、ブレスを吐かせる。
「ブリザードランス!」
瑞希の唱えた魔法。
氷の嵐がウィンドドラゴンを巻き込み、槍を生みだし突き刺していく。
「メテオハンマー!」
葵の魔法――拳の形をした隕石が氷の嵐から逃れたウィンドドラゴンの頭に振り落とされる。
ウィンドドラゴンの体力がわずか。
ボスはHPが赤くなるとキレる。だからこそ、その前に一気にケリをつける予定だった。
いや、これで終わりだな。
まだ僅かに体力を残したウィンドドラゴンの目が赤くなる。
俺は目の前に足場を作り、拳銃を構える。
リロードを終えた拳銃。入っている銃弾はマグナム弾だ。
ウィンドドラゴンの頭につきつけ、
「Unlucky!」
フルバーストを発動する。右腕が弾け飛びそうになり、発射された銃弾がウィンドドラゴンの頭に突き刺さる。
ウィンドドラゴンが一際大きな悲鳴をあげて、落下する。
戦場に落ちたウィンドドラゴンはゆっくりと一度起き上がり、何かの紋章を残して消えた。
俺がそれを拾い上げると、
『すべてのドラゴンは倒された――これより、最後のダンジョンが解放される。場所は始まりの街。ドラゴンを倒した証を持つものだけが通ることの出来る最終ダンジョンにて、私は待つ』
私、というのはこの世界の創始者だろうか。
とにかくだ。
これで、この世界ともお別れか。
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