Unlucky!
第十二話 雑魚ばっかり
買った武器、防具をしっかりと装備してから、西の大地へ。
新しく購入した拳銃は以前と比較すると見た目が大分マシになった。
どこか疲れた印象を与えていた『疲れたハンドガン』。泥がついたような見た目の悪さだったが、今俺が持つ拳銃は『ゴブリンガン』。
拳銃のダメージに影響しやすい器用の値にプラス補正を与えてくれ、おまけに攻撃力も10ほどある。
弾丸も購入したかったのだが、金の余裕がないので、ひとまずは初めにもらった『通常弾Lv0×∞』を使用していくつもりだ。
西の大地の地面は水分が少なく、草もほとんどない。木などはあっても、葉がついていなかったりと緑が少ない。
遠くには高台などもあり、そこはどうやらダンジョンらしい。
うっかり迷い込まないように気をつけよう。ここからまっすぐ進むと第二の街に着ける。瑞希たちはそこを拠点にしていると思われるので、なるべく近づかないようにしたい。
少し進むと、モンスターが出現。すべてウルフだ。
平均Lv10。第二の街に近づけば近づくほど敵も強くなる。今の俺はこの辺りがちょうどいい。
「ガガウウ!」
三体のウルフが突っ込んでくる。全体的に動きが速い。
先手は敵に譲る。近くになると、一気に加速。噛み付いてこようとしたので、タイミングを見計らい膝蹴りを顎下にぶつける。
早いが、見切れない速度じゃねえな。
カウンターが成功したようで、今の一撃で倒せた。
ウルフB、Cが左右から噛み付いてくる。
俺に近いBの前足を掴む。噛み付こうと首を伸ばしたが、横に放り投げる。ウルフCにぶつかり二体は転がる。
態勢が崩れたウルフだが、すぐに立て直す辺りさすが魔物だ。
わざわざ敵に近づく理由もない。離れた位置から、スキルレベルをあげるためにダブルショットを連射。
ドロップアイテムはクエストに必要なウルフの毛皮だ。
アイテムは手に入ったが、せっかくだからもう少し狩りを続ける。
今度は一体。実験的にクリティカルアッパーを試してみたい。
これは何の武器でも発動するのだろうか。
クリティカルアッパーと念じると銃が光る。
ウルフが飛び掛ってきたのを避けて拳銃で殴る。スキルが発動したのか空に撃ちあがる。俺の体が追尾しないから、ちゃんと修正されているようだ。
スキルを使用しても自分でぶつける必要がある。これは中々嬉しい。
勝手にシステムがサポートして体が動いてしまうのだと思ってた。少なくとも以前のはそうだった。
こりゃ、プレイヤースキルがある程度ないと厳しいゲームというのは確かだな。
だが、本当に自分でファンタジーな技を使っているのだと思えて楽しい。再使用時間を終えるまでは格闘とダブルショットで敵を倒す。
再使用時間が終わり、もう一体ウルフが出てきたので今度は少し使い方を変えてみる。
(足に……クリティカルアッパー)
スキルを発動すると足が光る。なるほど、クリティカルアッパーはどこにでも使えるようだ。
利き足である右足が光ったのは、そちらを強く意識したからだろうな。
ウルフは基本的に飛びついて噛み付くだけの単調な野郎だ。
回し蹴りを放つと、ウルフは不自然に空にあがり粒子になる。
「肩慣らしにもならねえ、雑魚ばっかりだな」
レベルが上がったところで切り上げる。幼女に癒されに行こっと。
土手に向かう途中でウルフの毛皮を出す。
あまりふわふわしていなく、むしろ肌触りが悪い。
これも鍛冶師なら防具に作り変えられるが、好んで着たくはない。
だが、現在来ているゴブリン装備はなぜか着心地がいい。
……防具になる時点で、何か特殊な加工があるのかもしれない。
「あっ、ありがとう! これでママにマフラー作るんだっ、えへへ」
「嫌がらせだな」
「あ、報酬だよ。はい、これ」
「なんだこれは?」
報酬は……『幼女の加護』というネックレスだ。
つけていると、麻痺、眠り、混乱を10%の確率で防ぐらしい。
序盤にしては性能はいいのかもしれないが、微妙だ。状態異常はもっとたくさんあるからな。だけど、幼女が護ってくれるんだ。つけないわけにはいかない。
幼女は先ほどの俺との事件は何もなかったように、初めて会った頃のように水切りをして遊んでいる。
俺は近づいて、片手をあげながら、
「あー、この後俺と……」
さすがに、ナンパするのはいくらNPCだからってやめたほうがいいか。
そうだよな。相手は下手したら幼稚園児くらいだ。さすがにこれは犯罪になる。
「デートしないか?」
常識なんて知るか。俺は純粋に幼女が好きだ。
「えー? あと10年経ったらね」
えへっと無邪気な笑顔に癒されながら、
「普通、それは俺の台詞なんだがな」
午後は適当に西の大地で狩りを行った。クエストはまだあるが、後にした。
夜。少々遅くまで狩りを行っていたので午後9時になりようやく夕飯を食べた。
シャワーを浴びて、スキルやステータスを確認しながらそろそろ寝ようかと宿で伸びをしていると。
来た、予想通り瑞希の報告が。
もう、あいつはこれを日課にでもする勢いだ。日記なんか、三日でやめてたからそろそろ飽きるだろうと思っていたのだが。
「どうした?」
本日はテレビ電話で、瑞希の顔もしっかり映っている。
髪と瞳の色が違うだけで、結構変わるもんだな。
緑の瞳がしっかりと俺を見つめている。
『元気そうね。今日の報告はまず、脱出クエストね』
確か、ドラゴン討伐だったか。
俺がこくりとうなずくと、瑞希が続ける。
『西の塔攻略が始まったわ』
「西の塔?」
『掲示板相変わらず、見ていないのかしら?』
「ああいう雰囲気はあまり好きじゃないんだ」
と、言うと「情報は大事よ」と文句のようなモノをたれながら続ける。
『ドラゴン――アースドラゴンが住んでるのよ。オープンベータではここまでしか倒せなかったのだけど。全部で10階だてで、10階にアースドラゴンがいるの』
『私たちも……行った』
右端でオレンジ髪が見切れている。
メトロノームのように定期的に揺れるのは何か意味があるのだろうか。
酔ってきそうだ。
『行ってきたのよ。だけど、あんたには教えてあげないからねーだっ』
むきーと頭の上でツノを作って遊んでいるのは銀髪女。
だが、小さくてほとんど見えない。俺はきょろきょろと首を動かし、
「なんか、声が聞こえるけどチビはいないのか?」
『チビじゃないっ!』
ぴょんとジャンプして、オレンジの後ろに一瞬現れる。
だけど、次には消えて『あ、足ひねったぁ~!』とごろごろ転がる音が。
『……』
「……」
『それで、攻略に向かったのよ』
なかったことにして、瑞希が普通に会話を再開。
俺もアレには触れたくない。
「ああ、どうだったんだ?」
『それが、オープンベータの時よりも敵が強くて歯が立たなかったのよ。今は第二の街を越えた先でレベルあげが行われているわ』
そんな、急がなくてもいいのにな。肩の力を抜いて、ゆっくり進めばいいのさ。
「そうか。せいぜい頑張ってあげるんだな」
『なんで、上から目線なのよ』
「何を隠そう。今の俺は17レベルだからな」
『私は22よ』
「ゲームのやりすぎは良くないぞ」
『アキ兄もね』
瑞希がふふんとちょっと得意げな顔だ。
俺も肩を竦めて、悔しそうな表情を浮かべてやる。
「報告は以上か? なら、俺はそろそろ眠りたいんだが」
『一緒に?』
「別にいいぜ、今からそっちに向かおうか?」
俺がニヤニヤすると、瑞希はゆっくりと頬を上気させて慌てたように横を向く。
唇をすぼめて、素早く言う。
『お、おやすみ、また明日』
「ああ、おやすみ」
あいつは、案外そういう話は苦手だ。
ベッドに入る前に、今日の出来事を思い返す。
色々収穫があったな。レベルも上がり、装備も大幅に強力になった。
だが、なんと言っても幼女の加護が一番だろうな。
アクセサリとしていいのではなくて、あの幼女からもらったことが大事なのだ。
新しく購入した拳銃は以前と比較すると見た目が大分マシになった。
どこか疲れた印象を与えていた『疲れたハンドガン』。泥がついたような見た目の悪さだったが、今俺が持つ拳銃は『ゴブリンガン』。
拳銃のダメージに影響しやすい器用の値にプラス補正を与えてくれ、おまけに攻撃力も10ほどある。
弾丸も購入したかったのだが、金の余裕がないので、ひとまずは初めにもらった『通常弾Lv0×∞』を使用していくつもりだ。
西の大地の地面は水分が少なく、草もほとんどない。木などはあっても、葉がついていなかったりと緑が少ない。
遠くには高台などもあり、そこはどうやらダンジョンらしい。
うっかり迷い込まないように気をつけよう。ここからまっすぐ進むと第二の街に着ける。瑞希たちはそこを拠点にしていると思われるので、なるべく近づかないようにしたい。
少し進むと、モンスターが出現。すべてウルフだ。
平均Lv10。第二の街に近づけば近づくほど敵も強くなる。今の俺はこの辺りがちょうどいい。
「ガガウウ!」
三体のウルフが突っ込んでくる。全体的に動きが速い。
先手は敵に譲る。近くになると、一気に加速。噛み付いてこようとしたので、タイミングを見計らい膝蹴りを顎下にぶつける。
早いが、見切れない速度じゃねえな。
カウンターが成功したようで、今の一撃で倒せた。
ウルフB、Cが左右から噛み付いてくる。
俺に近いBの前足を掴む。噛み付こうと首を伸ばしたが、横に放り投げる。ウルフCにぶつかり二体は転がる。
態勢が崩れたウルフだが、すぐに立て直す辺りさすが魔物だ。
わざわざ敵に近づく理由もない。離れた位置から、スキルレベルをあげるためにダブルショットを連射。
ドロップアイテムはクエストに必要なウルフの毛皮だ。
アイテムは手に入ったが、せっかくだからもう少し狩りを続ける。
今度は一体。実験的にクリティカルアッパーを試してみたい。
これは何の武器でも発動するのだろうか。
クリティカルアッパーと念じると銃が光る。
ウルフが飛び掛ってきたのを避けて拳銃で殴る。スキルが発動したのか空に撃ちあがる。俺の体が追尾しないから、ちゃんと修正されているようだ。
スキルを使用しても自分でぶつける必要がある。これは中々嬉しい。
勝手にシステムがサポートして体が動いてしまうのだと思ってた。少なくとも以前のはそうだった。
こりゃ、プレイヤースキルがある程度ないと厳しいゲームというのは確かだな。
だが、本当に自分でファンタジーな技を使っているのだと思えて楽しい。再使用時間を終えるまでは格闘とダブルショットで敵を倒す。
再使用時間が終わり、もう一体ウルフが出てきたので今度は少し使い方を変えてみる。
(足に……クリティカルアッパー)
スキルを発動すると足が光る。なるほど、クリティカルアッパーはどこにでも使えるようだ。
利き足である右足が光ったのは、そちらを強く意識したからだろうな。
ウルフは基本的に飛びついて噛み付くだけの単調な野郎だ。
回し蹴りを放つと、ウルフは不自然に空にあがり粒子になる。
「肩慣らしにもならねえ、雑魚ばっかりだな」
レベルが上がったところで切り上げる。幼女に癒されに行こっと。
土手に向かう途中でウルフの毛皮を出す。
あまりふわふわしていなく、むしろ肌触りが悪い。
これも鍛冶師なら防具に作り変えられるが、好んで着たくはない。
だが、現在来ているゴブリン装備はなぜか着心地がいい。
……防具になる時点で、何か特殊な加工があるのかもしれない。
「あっ、ありがとう! これでママにマフラー作るんだっ、えへへ」
「嫌がらせだな」
「あ、報酬だよ。はい、これ」
「なんだこれは?」
報酬は……『幼女の加護』というネックレスだ。
つけていると、麻痺、眠り、混乱を10%の確率で防ぐらしい。
序盤にしては性能はいいのかもしれないが、微妙だ。状態異常はもっとたくさんあるからな。だけど、幼女が護ってくれるんだ。つけないわけにはいかない。
幼女は先ほどの俺との事件は何もなかったように、初めて会った頃のように水切りをして遊んでいる。
俺は近づいて、片手をあげながら、
「あー、この後俺と……」
さすがに、ナンパするのはいくらNPCだからってやめたほうがいいか。
そうだよな。相手は下手したら幼稚園児くらいだ。さすがにこれは犯罪になる。
「デートしないか?」
常識なんて知るか。俺は純粋に幼女が好きだ。
「えー? あと10年経ったらね」
えへっと無邪気な笑顔に癒されながら、
「普通、それは俺の台詞なんだがな」
午後は適当に西の大地で狩りを行った。クエストはまだあるが、後にした。
夜。少々遅くまで狩りを行っていたので午後9時になりようやく夕飯を食べた。
シャワーを浴びて、スキルやステータスを確認しながらそろそろ寝ようかと宿で伸びをしていると。
来た、予想通り瑞希の報告が。
もう、あいつはこれを日課にでもする勢いだ。日記なんか、三日でやめてたからそろそろ飽きるだろうと思っていたのだが。
「どうした?」
本日はテレビ電話で、瑞希の顔もしっかり映っている。
髪と瞳の色が違うだけで、結構変わるもんだな。
緑の瞳がしっかりと俺を見つめている。
『元気そうね。今日の報告はまず、脱出クエストね』
確か、ドラゴン討伐だったか。
俺がこくりとうなずくと、瑞希が続ける。
『西の塔攻略が始まったわ』
「西の塔?」
『掲示板相変わらず、見ていないのかしら?』
「ああいう雰囲気はあまり好きじゃないんだ」
と、言うと「情報は大事よ」と文句のようなモノをたれながら続ける。
『ドラゴン――アースドラゴンが住んでるのよ。オープンベータではここまでしか倒せなかったのだけど。全部で10階だてで、10階にアースドラゴンがいるの』
『私たちも……行った』
右端でオレンジ髪が見切れている。
メトロノームのように定期的に揺れるのは何か意味があるのだろうか。
酔ってきそうだ。
『行ってきたのよ。だけど、あんたには教えてあげないからねーだっ』
むきーと頭の上でツノを作って遊んでいるのは銀髪女。
だが、小さくてほとんど見えない。俺はきょろきょろと首を動かし、
「なんか、声が聞こえるけどチビはいないのか?」
『チビじゃないっ!』
ぴょんとジャンプして、オレンジの後ろに一瞬現れる。
だけど、次には消えて『あ、足ひねったぁ~!』とごろごろ転がる音が。
『……』
「……」
『それで、攻略に向かったのよ』
なかったことにして、瑞希が普通に会話を再開。
俺もアレには触れたくない。
「ああ、どうだったんだ?」
『それが、オープンベータの時よりも敵が強くて歯が立たなかったのよ。今は第二の街を越えた先でレベルあげが行われているわ』
そんな、急がなくてもいいのにな。肩の力を抜いて、ゆっくり進めばいいのさ。
「そうか。せいぜい頑張ってあげるんだな」
『なんで、上から目線なのよ』
「何を隠そう。今の俺は17レベルだからな」
『私は22よ』
「ゲームのやりすぎは良くないぞ」
『アキ兄もね』
瑞希がふふんとちょっと得意げな顔だ。
俺も肩を竦めて、悔しそうな表情を浮かべてやる。
「報告は以上か? なら、俺はそろそろ眠りたいんだが」
『一緒に?』
「別にいいぜ、今からそっちに向かおうか?」
俺がニヤニヤすると、瑞希はゆっくりと頬を上気させて慌てたように横を向く。
唇をすぼめて、素早く言う。
『お、おやすみ、また明日』
「ああ、おやすみ」
あいつは、案外そういう話は苦手だ。
ベッドに入る前に、今日の出来事を思い返す。
色々収穫があったな。レベルも上がり、装備も大幅に強力になった。
だが、なんと言っても幼女の加護が一番だろうな。
アクセサリとしていいのではなくて、あの幼女からもらったことが大事なのだ。
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