黒鎧の救世主

木嶋隆太

第七十七話 決戦前夜

 ここはどこだ?
 智也はクリアになっていく思考から今まで何が起こっていたのかを思い出し、意識を覚醒する。
 目を開けると、異世界にある自分の部屋だった。


 ある意味見慣れた光景。そして、全員が死んでいくあの光景を思い出し、智也は発狂しそうになる。
 呼吸が乱れ、智也は苦しい胸を押さえる。


「トモヤ、早く来なさいよ。朝ごはん先に食べちゃうわよ?」


 そう言って、智也の部屋にクリュが入ってくる。この会話は、ミルティアを助けられなくて戻ってきたときのものだ。
 五体満足のクリュ。どこも怪我をしていない、ぴんぴんのクリュを見て智也は目尻から涙がたまる。
 よかった、ちゃんと過去に戻ってこれている。


「ど、どうしたのよ? 怖い夢でもみたの!?」


 クリュが動転して、あわあわと手を動かしている。


「よかった、クリュ! 生きてるんだよな!」


 生きているのを確認するために、智也はクリュに抱きついた。


「ちょ、何よ! やめろ、痛い! もっと優しくしなさいよっ」


 智也には見えていないが、クリュが叩こうと拳を構える。だが、顔を赤くしてから、もぞもぞと体を動かすだけだ。


「わ、悪い!」


 殴られるのを覚悟した智也だったが、クリュは意外にも顔を赤くしたまま何も言わなかった。
 熱でもあるのだろうかと智也は不安になったが、あの時のクリュは健康だった。


「別に抱きつくのはいいわよ。いきなりどうしたの?」
「……朝食、だったよな?」
「抱きつかないの?」
「……悪かったから、そんなにからかわないでくれ」


 クリュの相変わらずの性格の悪さに苦笑しながらも、戻ってきたと認識できた。クリュが怒ったように頬を膨らましたが、智也は自分の反応がクリュを満足させられなかったのだろうと理解した。


 階段を下りると朝食のいい匂いがした。正直、さっきの今であまり腹はすいていないし、入るかどうかも分からない。
 吐き出す恐れもあるので、無理をしない程度に食べる。


「二人とも、少し話したいことがあるんだけど、いいか?」
「そうなんですか? 話から食べますか?」
「いや、もしかしたら食事が喉を通らなくなるかもしれないから、飯を食べてからにしよう」


 クリュも納得してくれたようで、目の前の食事に目を輝かせている。
 魔王の出来事を忘れるように、震えだしそうな体を押さえつけながら、最低限の食事をする。
 アリスの食器洗いを手伝い、全員がソファに座って楽な態勢になる。


「二人とも、魔王について、俺が知ってることを話したいと思うんだ」


 智也はそれから、魔王について話をする。まずは自分が体験したミルティアたちの話など、クリュたちが知らない情報をどんどん伝えていく。
 質問も受けつけて、情報を提供していく。
 アリスとクリュは最初は驚いていたが、段々と問題の大きさを理解して真剣な表情になる。
 最後に、次元の扉を開いてこの時間に戻ってきたことを伝えて、智也はふうと息を吐き出す。


「あんたは、これからどうするの?」
「魔王は、たぶん、そのうち復活するから、絶対に倒す」


 前は智也が復活の手伝いをしたようなものだが、全開での復活ではないと言っていた。
 下手に先延ばしにして、魔王がより力をつけて復活してしまったら、本当に勝ち目がなくなる。


「倒すって、封印するしか方法はないんじゃないの?」
「いや、今の俺なら、出来る。俺にしか出来ないとも言えるけどな」


 リリムさんから教わった技術の中で、勇者が使っていた技を一つ覚えた。それを使えば、魔王も倒すことが可能なはずだ。
 過去の勇者よりも、智也のほうが時間操作の才能は高い。


「とりあえず、俺はリリムさんのところに行こうと思う。魔王について、話がしたいんだ」
「分かりました。それじゃあ教会にワープしますか?」


 クリュも準備はいいようで、頷く。智也たちはアリスに触れてワープで教会にたどり着く。
 レベルアップを受ける人間は少なく、それらを無視して智也はリリムさんの元に向かう。


「リリムさん!」
「どうしたんですか、トモヤさん?」


 智也の大きな声に少し驚いている。智也はリリムさんにしか聞こえないよう、小さく声を出す。


「……魔王」
「……なるほど」


 下手に周りに聞こえて、変な不安を与えないための手段だ。リリムさんはしっかりと聞き取り、神妙に頷く。
 リリムさんが知っているのなら、もっと早く聞きにいけばいいと智也は少し後悔していた。


「あなたは、未来のトモヤさんですか?」
「……はい」


 どこまで知っているのだろうか。もしかしたら、すべてかもしれない。


「……詳しい話は、奥でしましょうか」


 リリムさんに案内されたのは、教会の奥だ。


「あの人たち、なんでリリムさんと話をしているんだ?」
「……リリムさんの彼氏か? いやいや、そんなのありえないよな」


 そんな会話と視線を浴びた智也は、仲間二人からも訝しんだ目を向けられる。
 リリムさんについていくと、住み込んでいる人も多いようで、人の行き交いが多い。全員同じように、智也を見て眉をひそめている。
 リリムさんの人気の高さを初めて知った。階段を二つ上った先の部屋で、リリムさんが立ち止まる。
 鍵を開けて扉をあける。かなり大きく、家具やベッドなど生活に必要なものは一通り揃っている。
 一官の神官だけあり、待遇もいいようだ。


「魔王の話に行きたいところですが、その前に色々とやらなければならないことがありますね」


 リリムさんはクリュとアリスに視線を移す。


「クリュさんとアリスさんは、学園に行ってヘレンさんとプラムさんを呼んできてくれませんか?」
「なんであたしたちがやるのよ」
「二人とも頼む」
「仕方ないわね。アリス行くわよ。リリムだっけ? あんたトモヤに変なことするんじゃないわよ」
「クリュさん、変わり身が分かりやすいです」


 アリスははぁと息を吐いて、ワープを使った。二人きりになったところで、リリムさんは申し訳なさそうに表情を暗くする。


「あなたには謝らないといけないことがありますね」
「……別に構いませんよ」


 内容は分かっている。智也は、リリムさんの口から聞かずに、その内容を告げる。


「いえ、そういうわけには行きません」


 リリムさんがぺこりと、


「はい……無関係のあなたを異世界から召喚してしまい、すみません」


 綺麗にお辞儀をする。恨みがないといえば嘘になるが、今はそこまで怒ってもいない。


「リリムさんが……スキルを持った人間をこの世界に呼んだ。いや、元々は、この世界のどこかにいるスキルを持った勇者を探し出すために、召喚魔法を使ったが、異世界の俺が召喚された」


 リリムさんの記憶ごと、力の使い方を教わったのですべてが分かっている。


「はい。そもそも、私が召喚魔法を使ったのは今から百年前にも関わらず、召喚されたのはつい最近なんですよね。私の中にある勇者の力が不自然に働いたのでしょうかね?」
「リリムさんも、勇者の力が使えるんですか?」


 記憶を掘り返す作業に手間取る。自分にあまり関係しない記憶は、掘り起こすのに時間がかかってしまうので、聞いた方が早い。


「まあ、そうですが、昔に比べて劣化していますね。勇者の力は繊細なものですから、子孫にも受け継がれなかったようですしね」
「そうなんですか……」


 この世界にいた勇者に子孫がいるのなら、それと協力すればもっとラクに魔王と戦えるだろう。
 智也の考えはあっさりと砕かれてしまったが、エフルバーグのことを思い出す。


「ところで、エフルバーグってなんなのですか?」


 一度死んだと思われていたエフルバーグ。奴が持つ力は勇者のものであるのははっきりと分かっている。
 時間操作により、死ぬ前の体に戻せばいい。そうすれば、勇者は最初に消費するべきMPさえあれば、すべてが元に戻る。
 リリムさんはうーんと顎に手を当てる。


「この大陸から離れた場所にある、結界で阻まれた大陸がありますよね? あそこには人が住んでいますが、魔王によって支配されています。それがあの結界です。兵士は家族を人質にとられており、巫女を殺さなければ、彼らの家族は一人ずつ殺されていきます。すでに、ほとんど人は残っていませんが」
「それってもしかして、青服兵のことですか?」


 どこか狂気に満ちた青服兵が不意に脳内に浮かび上がった。


「そうです。そして、そこで作られたと思われるホムンクルスがエフルバーグです」


 智也の謎が解明されていったところで、部屋の空間が歪みアリスたちが姿を現す。


「な、なんですの、いったい」


 ポカンとしたままのヘレンがリリムさんを見て、うひょっ! と声をあげかさかさと後退する。


「い、一官のリリムさんじゃないありませんの! やめてくださいましっ! 最近悪いことはしてませんのよ!」
「……ヘレン姉さんは知らないことが多すぎる」


 プラムがはぁと額に手を当てている。


「ヘレンさん、今日は叱るために呼んだわけじゃありませんよ」


 にこりとリリムさんが優しく微笑むと、ヘレンはさらに怯えてしまった。会話から察するに、普段から怒られているようだ。
 プラムはちらとリリムさんを見て、何かを察したように口を動かす。


「どうかしましたか?」
「どこか、巫女に似ている雰囲気を持っていると思っていたけど、確証はしていなかった」
「私も一応は巫女、みたいなものですよ。いい目をしてますね、プラムさん」


 リリムさんはヘレンが全く現状を理解できていないのを確認したところで、巫女たちにこれから行うことを話し始めた。
 魔王の封印が弱まっているので、その魔王を再封印するという名目でクリュたちは集められた。
 ソウルバインドのスキルが必要になるなど、魔王に関する話を終えたところで、ヘレンがキラキラと瞳を輝かせた。
 彼女がこういった話を好きなのは知っていたので、智也は呆れながらもいつも通りの彼女に安堵していた。


 一通りの話を終え、智也たちは空き部屋に案内される。明日の作戦決行まで、ここで待機だ。
 その後、リリムさんは天破騎士に会いに向かった。この作戦を説明するようだ。
 出された夕食を終えた智也はどうにも誰かといると暗くなりがちな表情を見せてしまうので、一人で部屋に向かった。
 魔王との戦いに対して、そこまでの恐怖は感じていないが、智也には別の悩みがあった。


(明日が……最後、なんだよな)


 智也は過去の勇者の記憶をリリムさんから受け取ったことにより、魔王を封印する手段ではなく、倒す手段を獲得していた。
 それをリリムさんも気づいているはずだ。
 智也の召喚魔法の契約は、魔王の封印、討伐だ。それを終えた瞬間、智也を縛るものはなくなり、自由の身になる。それは、地球に戻されることを意味している可能性がある。


 異世界の契約がどのようになっているのか、それは智也もリリムさんも知らない。だからこそ、智也はクリュたちには何も伝えていなかった。
 コンコンとノックが響く。智也は気配からクリュだと判断する。


「クリュ、どうしたんだ?」
「あんたも随分と勘がよくなったわね」


 扉を開けて入って来たのはやはりクリュだった。風呂上りなのか、髪が僅かに湿っていて頬は上気している。
 ベッドに座っている智也の横に腰掛けたクリュへ顔を向ける。


「で、何か用事でもあるのか?」
「少し、眠くなかったから」


 とはいえ、日常的な話が思いつかなかった智也は明日の話をすることにした。


「どう思った、魔王について」


 クリュははあとため息を吐いて、長くなり始めた髪の先を指に絡める。


「正直、この国を救うため、だなんて思いたくはないわね。あたしの両親を殺したんだから、許せるはずがない」
「……そうだよな」


 どこのクリュも似たようなことを考えているようだ。
 クリュからしてみれば、なぜという気持ちが先行しているだろう。


「ねえ、あんたって過去とか未来とか行けるんでしょ?」
「ああ、今はな」


 昔はそこまで自由に出来なかった。クリュはふふっと嬉しそうに笑って、智也の手を掴んだ。
 なぜ掴まれたのかと智也は静かに焦っていた。


「じゃあ、昔にあたしを助けたのは、やっぱりあんただったのかもね」


 そういったクリュはニコリと微笑んで智也はさらっと流しそうになってんん!? と目を見開く。
 クリュがさりげなく指をからめてきようとしたのをやんわりと外しながら、智也は訊ねた。


「ど、どこで会ったんだ?」


 地球でクリュと出会う機会はない。だとすれば、過去に戻ったときかとも思ったがそんな近い過去に戻った覚えはない。


「私が小さい頃に、この前いった里近くの街でよ。あたしが北の国で過ごすようになったのも、あんたのおかげよ」
「お、おかげ? ちょ、ちょっと待ってくれ話が繋がらないんだが……っ」


 北の国なら、おかげではなく、せいだろと智也は思った。
 智也は疑問がぶくぶくと溢れてきたので、深く突っ込んでみた。


 クリュの話をまとめると、それは本当に智也であったのか疑問に思える内容だった。
 クリュが逃亡生活をしている際の話だった。
 クリュが殺されかけたところを颯爽と智也が助けに来たらしい。仮面を被っていて本当かどうかは分からないが。
 その後、エフルバーグとであった智也はエフルバーグにクリュを預けてそのまま北の国で生きたらしい。
 それを聞いた智也は何とも言えない表情だった。
 本当に智也なのか、これから先にそうなるのかは知らなかったが、とにかく智也であったことは間違いないとクリュは断言している。


 智也が本当に智也ならば、北の国、エフルバーグに預けるとは思えないのだが、と智也はやや視線を上に向けていた。
 クリュはなぜかそれを嬉しそうに話している。


「……俺はまだ助けたことないんだけど」
「そうなの? でも、絶対あれはトモヤよ。あたしがトモヤを見間違えるはずないわ」


 それは、本当に自分なのか? 智也の心の中にそんな疑問が生まれたが、嬉しそうにしているクリュに言っても信じてもらえない。


「さっきの答えの続きだけど。あたしね、この国のために魔王を倒すつもりはさらさらないわよ」
「まあ、そうだよな」


 クリュはアリスやヘレンたちのために戦うのだろうと智也は予想している。


「大切なものがあるから。あたしは、あんたやヘレン、後は、まあ、プラムやアリスも一応入れてやるけど……そんな人たちが大切に思えるから、戦おうと思えたのよ」
「……お前も成長してたんだな」


 智也はどこか感慨深くその一言を呟いた。クリュが苛立ったように頬を膨らませて、脛を軽く蹴ってきた。
 それから、苛立ちを捨てるように頬にたまった空気を吐き出す。


「トモヤ……あんた、何か隠してるでしょ」
「いや、別に……」


 嘘だ。智也は地球に戻ってしまうかもしれないことをクリュたちに言っていない。クリュに見破られるとは思っていなかったので、表情に驚きが表れてしまっている。


「嘘ね。あんたがあたしのことを分かるようにあたしもあんたのこと一杯分かってるのよ?」


 智也は迷ったが、すぐに話そうと切り替えられた。


「帰るかもしれないんだ。魔王を倒したら、地球に」


 大切な仲間だからこそ、話しておかなければならない。
 クリュは予想できていたのか、それほどの驚きはない。あるのはむしろ、悲しみだった。


「そうなんだ。帰る、のよね」


 見慣れないクリュの表情に、智也は何かを言わなければと、思いつく言葉を口にしていく。


「勝手だよな。お前たちを見守るとか何とか言っておいて。北の国から連れ出したのも俺が無理やりみたいなものだったし」
「あー、そういうのやめなさい。あたしはあんたに恩はあるけど、恨みなんてないわよ。もう、十分、色々してもらったし」


 クリュは嬉しそうに目を細めた。


「よかったじゃない。ずっと戻りたかったから迷宮の探索に力を入れてたんでしょ?」
「そうなんだけどな。いざ、戻れるかもって思ったら、分からなくなったんだよ。贅沢な悩みなのは分かってるけどさ、地球に戻りたかったのはあっちの世界には大切な人がいるからだ」


 クリュが大切な人と聞いて瞳を揺らした。家族のことを思い出させてしまったかもしれないと、早口に続ける。


「それに、地球は安全なんだ。だけどこっちの世界にも、地球と同じぐらい大切な人が出来たし、自衛は出来るようになった。向こうに戻ってせっせと働くよりか金も入るだろうしな」


 智也の心にはこちらに残りたい気持ちも生まれていた。クリュにそれを伝えると、クリュはしかし首を振った。


「……あんた、家族は大切にしなさいよ。何かあっても、あたしは自分の身は自分で守る。だから、あんたは帰りなさい」


 クリュの目は真剣で鋭く尖っている。智也は、強く言うことはしないで妥協案だけを伝える。


「ああ、分かってる。全部帰れなかったときの話しだ。帰れなかったときは俺がヘレン、プラムそれに、お前やアリスを守る」


 それが全員と結んだ約束だ。智也が言うとクリュはかっと頬を染めた後に、口をぼそぼそ動かした。


「で、でも戻るまではあたしが一番だからね、守るの」


 クリュが頬を膨らませるようにして、そういったので智也は笑顔で頷く。


「あんたにこれ、預けておくわ」


 そう言って、クリュはネックレスを取り出す。


「なんでだよ。それはお前の大切なものだろ」
「あたしの大切なものだからよ。一番危険な、あんたに預けておくのよ」


 クリュは智也の手を掴み、ぐっと握らせてくる。


「もしも、俺が元の世界に戻っちまったらどうするんだよっ!」
「だから、預けるのよ」
「どういうことだよ?」


 智也は疑問に思いながら、手に入ったネックレスに目を向ける。クリュは不安そうに


「……あんたに、忘れてほしくないの。ヘレンにもちゃんと話して許可もらってきてるわよ」
「忘れる、わけないだろ」
「それでも、何年、何十年もしたら、どんどん忘れるちゃうでしょ? その時に、思い出してほしいのよ」
「……分かった。絶対に返しに行くからな」


 地球に戻れたとしても、必ず戻る方法を見つける。クリュは嬉しそうに耳を赤くして、それからはしばらく他愛ない話をした。智也の地球のことがほとんどで、クリュは楽しそうに聞き入っていた。


「ふぁぁあ」


 クリュは大きなあくびを手で隠して、それから智也の顔を押す。見るなとばかりに押された智也は、視線を外しながら、


「そろそろ寝る時間だな。明日も忙しいだろうし……」
「そう、ね」


 クリュは返事をしながらも、中々動かない。


「どうしたんだ?」
「ここで……寝たら駄目?」


 クリュが恥じらいを見せ、智也は一瞬やましいことを考えてから首を振る。


「昔とは違うだろうが。ベッドは一人用で狭いし」


 何より嫌だろ? という言葉は、正面きって否定されるのが嫌だから飲み込んでおいた。
 クリュは怒ったように頬を膨らませて、ベッドから立ち上がった。


「……そういう意味じゃないわよ。分かった、部屋に戻るわ」


 クリュが素早く、部屋の扉まで向かい、


「全く、アリス全然駄目じゃない」


 ぼそっとアリスを罵倒していたが、智也は意味が分からないと首を捻る。
 不満そうにしていたクリュの背を見届けた後、智也は自分の変化に驚いてた。
 安定していなかった心が気づけば、落ち着いているのだ。
 クリュと話をして、安心できるようになっていた。昔には考えられなかったことだ。


「寝るか!」


 声を大きくして、智也はベッドに飛び込むようにして疲れを癒すために深い眠りについたのだ。

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