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オール1から始まる勇者

木嶋隆太

妹視点 第十五話



 さっきの戦闘を少し思い出して大きく息を吐く。
 時間をかけて戦闘すれば勝てたかもしれない。


 けど、危険をおかしてまですることじゃない。
 攻撃を食らわないのが一番で、ダメージを受けそうなら退避する。あたしが決めた、撤退の線引きだ。
 だって痛いの嫌だしね。
 あたしたちは一階層で休憩しながら作戦会議を行う。


「魔法を打ってくる敵がでて来るなんて、面倒になって来たね」


 今までも敵が全く使っていなかったわけではないけど、ここまで攻撃的な魔法はなかった。
 前衛、後衛に分かれ、きちんと連携をとってくる相手は初めてなんだよね。
 面倒でもあったが、それの対策を考えていると少し気分が高揚する。
 新しいタイプの敵であっても、あたしたちは攻略の方法を考えられる程度の実力はある。
 ゴブッチと咲葉の二人が考えるように顎に手をやる。
 あたしの肩にのっていたクワリもばたばたと前方を飛行する。


「魔法はどうしたらいいのかな、クワリ、わかんない?」


 精霊であるクワリに質問をする。
 彼女に聞けば、結構なことがわかり、クワリは今回もしたり顔である。
 精霊だから頼りになるんだよね。


「一応、対策はいくつかありますわよ」
「ほんと!? 教えて!」
「わたくしが知っているものですと、魔法をぶつけて相殺する、魔法を作っているときに妨害する、作り上げられた魔法の構成に干渉して、破壊する、ですわね」
「うへぇ、頭痛くなって来たよ……」


 なんだか難しい感じだ。
 相殺のような、力づくの言葉は好きだが、そこから先のクワリの言葉はあまり耳に届いていない。


「一番簡単なのは魔法をぶつけての相殺ですわね。力技ですので、誰でもできますのよ」


 それが一番だけど今のあたしだと、二つしか魔法を作れない。
 そうなると、攻撃に回す魔法がなくなってしまう。


「それじゃ、残りは?」
「相手が練っている段階で何かしらの魔法であったり、魔力をぶつけてかき乱しますのよ。最後の干渉も似たようなものですわ。作り上げられた魔法の構成だけを弄り、破壊しますのよ」
「うーん……」


 なんとなく、魔法使いとして言っていることはわかる。
 魔法にはたくさんの構成情報があるから、そのうちの少しだけでも変えられれば恐らく魔法は効果を発揮しなくなるだろう。


 ただ、それを実際にやるにはある程度の練習が必要になると思う。
 練習したくても、実戦の中でやる必要がある。あたし以外、魔法を使える人がいないし。


「応急処置的には、沙耶のたくさんある魔力で無理やり沙耶の魔法陣を展開してしまうのもありかもしれませんわね」
「それって、何かあるの?」
「魔法陣の範囲内なら、魔力干渉が行いやすくなりますわ。ただ、魔法陣に常に自分の魔力を供給する必要がありますわ」


 それじゃあ、根本的な解決にはならないかなぁ。
 今後も敵が魔法を使ってくると思うから、いまここで確実に魔法を処理できるようにしておかないとならない。
 うーん、どこで魔法の妨害の練習をしようか……。


「沙耶、自分で自分に魔法を打つというのはできないのか?」


 悩んでいると咲葉が唐突にそんなことをいって来た。


「えーと、まあできると思うけど」
「それじゃあ、あれだ。自分に向けてあのスタンダードな魔法を放てばいいんじゃないか?」
「あー。そっか」


 基本魔法なら、あたしが魔法を構成しているわけではないため、どういったものかの練習くらいにはなるかな。
 失敗したら危険な気もするけど、まあ大丈夫かな。


 そうと決まればとりあえずやってみよう。
 ヒートバレットを放ち、ある程度飛ばしてからこちらはと戻す。迫ってくるそれをみて、魔法の分析を行う。
 すべてがわかりやすく、構成を見ることができる。アナライズを使用すると、魔法構成がばっちりと脳内へと流れてくる。
 どこを弄ればいいのか、簡単なのは魔法のサイズか。あたしはありったけの魔力をぶつける。魔法への干渉は……確かに難しい。


 一度目は魔法が当たりそうになって慌てて回避した。


 二度、三度と繰り返していぐなかなかなうまくはいかない。
 気づけば咲葉とゴブッチは八階層でレベル上げをしている。
 あたしの訓練をみていてもレベルアップはできないからね。


 しばらく魔法への干渉練習を繰り返すが……さすがに一日でどうにかできるものじゃないよ、これ。
 ずっと考えていると頭が痛くなってくるよ。


「なかなかうまく行きませんわね」
「うん。魔法の構造はわかっても、一瞬で魔力をぶつけて、組み替えるなんてちょっと無理だよ」


 そうなると、やっぱり魔法をぶつけての相殺が一番楽かもしれない。
 魔力の消費はあるかもしれないが、まあ仕方ないだろう。


 自分にヒートバレットを放ち、それをみてから魔法を作る。
 相手の魔法をみてから対応できるようにしないと、はっきりいって対応できるとは言えない。


 ヒートバレット程度ならみてからでも相殺可能だ。それでギリギリだから速度か威力のある魔法がとんで来たらどうしようもないかもしれない。
 とにかく、あたしは魔法構築速度を早くしないと、どっちにしろ魔法を使う魔物には対応できない。
 ……むう、魔法使いは大変だ。


 必死に練習していき、構築しては放ち自分に戻ってきたヒートバレットへ魔法をぶつける訓練を行う。
 そうしていると、段々と無駄な部分が削れていく。魔法を作るときの意識するべき場所がわかっていく。


「そういえば、沙耶。あの宝箱を作り変える魔法はなんなんですの?」


 訓練している途中で、クワリがそんなことを言ってきた。
 作りかえる魔法? なんだっけ……ああ、あれかな?
 って、うわぁ! 魔法を放っていたのを忘れていた。
 慌てて横にとんでから、クワリに顔を向ける。


「リトライのこと?」
「そうでさわ。あれは、ものの再構築をしているのではありませんの?」
「……そう、なのかな?」
「わたくしもはっきりとはわかりませんわ」


 リトライは泡のようなものを作りだし、宝箱にぶつけることで再度その中身を入れ替えることができる。
 ただ、その原理はさっぱりだ。
 魔法であり、魔物相手につかっても効果がないのはわかっているが、それでは魔法にはどうなのだろうか。


 リトライの説明では、宝箱の中身を入れ替えるようなものだと思った。
 ただ、このダンジョンの宝箱の仕組み自体が少し考えれば不思議なものであるのはわかる。
 一定時間ごとに出現する宝箱の中身には、様々なものが入っている。宝箱の中身は、ダンジョンの魔力で作り上げられるのだ。


「リトライは、もしかして無理やり宝箱の状態を構築される前に戻しているってこと?」
「……そう、かもしれませんわね」


 宝箱の中身を変えるという点だけで使用していたが、もしかしたらこの魔法はもっと強力なのかもしれない。
 一度破壊してくれれば、それでいい。
 試して見る価値はあるかもしれない。
 リトライの魔法を、宝箱以外には使ったことがなかった。
 ヒートバレットを放ち、あたしはリトライを用意する。


 迫り来るヒートバレットに向けて、リトライを使用する。
 白い泡が出現し、ヒートバレットにあたる。
 ヒートバレットがその瞬間消え、新たに魔法を構築しようとする。
 アナライズでその様子は手に取るようにわかる。


 魔法の再構築は行われない。
 行われるはずがない。
 再構築をおこなったところで魔力がないのだから魔法は完成しない。


 ……うまくいった。
 とはいえ、相手が気づいてもう一度魔法に干渉したらあっさりと再構築されてしまうかもしれない。
 もともは自分の魔法なのだから、干渉自体は他人の魔法にするよりかは簡単だ。


 そんなとこまで考えるのは、通用しなかったらでいいかな。
 今は、リトライの魔法で魔法を無効化できるのがわかったのだから、それでよしとしよう。
 あたしはガッツポーズをしてからクワリに笑みを向ける。


「クワリ、よく気づいたね」


 クワリがあたしの肩にのったので、軽く頭をなでる。


「まあ、わたくしもこのくらいはやらないと、ですわ」


 クワリが小さな手で髪を払った。
 そうこうしていると、咲葉たちも戻ってくる。
 

「沙耶、調子はどうだい?」
「ばっちり! いまのあたしに敵はないよ!」
「そうかい。そういえばさっき魔物を倒したら新しい魔法を習得したみたいなんだよ。あとで確認してくれないかな?」
「もちろんだよ」


 新しい魔法かぁ。少し楽しみだ。
 と、ゴブッチも片手をあげる。


「あっしも覚えたっすよ!」


 そうなんだ。これは次の戦いが楽しみだ。
 じりじりと強くなっているのがわこって、あたしは笑みを浮かべずにはいられなかった。
 ひとまず、休憩を挟んでからあたしたちは第九階層へと向かった。

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