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オール1から始まる勇者

木嶋隆太

第十七話





 四十八階層は敵こそ強敵であったが、複数で出ることはない。
 出現の感覚も多くはなかったので、冷歌が先に行く階段を見つけてからはスムーズに探索を進められた。 問題は次だ。


 第四十九階層は、やはり俺の睨んだ通り、四十六から四十八までの階層の魔物が同時に出現しやがる。
 俺と冷歌は瞬きも許されないような連戦の中で、先へと進んでいく。


「冷歌! 今敵がすくねぇし、さっきの探知魔法は使えるか!?」
「わかったぜ! 頼むから、守ってくれよ!」
「ああ、できる限りはな!」
「全力で! 頼むぜ!」


 彼女を背中に隠しながら、俺は向かってくるたぬきとソルジャースケルトンヘビーをにらみつける。
 こいつらが組むと本当に厄介だ。
 たぬきが武器を生み出すし、スケルトンは素で攻撃力が高い。
 振りぬかれた剣を受け止めるが、衝撃に腕がしびれそうになる。すかさず霊体をまとい、たぬきの放ってきた剣を打ち抜く。


 まっすぐに返してやるとスケルトンに刺さる。
 スケルトンが叫びながら体を低くして突っ込んでくる。それを援護するようにたぬきが剣を生み出して放り投げてくる。
 見事な連携だ。だけど、もう何度か見たコンボでもある。


 低姿勢のスケルトンの刀がすっと俺の懐へと伸びてくる。俺とスケルトンの剣が交差する。
 力と力のぶつかりあいだ。霊体をまとった俺の力ならば、スケルトンに対しても一方的な暴力をぶつけられる。


 スケルトンの剣とぶつかると、すっと刀が戻された。
 ……全力ではなく、俺の攻撃を誘うような動きだ。即座に反応して、俺も剣を戻すと、もう一方の刀が俺の左側から迫る。


 鞭のように、長い腕がしなる。刀が光を反射させながら俺の側頭部をとらえようとする。
 一撃はもらってやろう。踏み込んで俺が頭上から長剣を振り下ろすとの、スケルトンの刀がぶつかるのはほぼ同時だ。
 だが、一つ分の防御で俺が上回っている。スケルトンの体を両断するのは、紙を切るのと同じだ。


 大きく息を吸い込む。呼吸している暇が無駄だ。
 この呼吸を最後に、仕留めきってみせる!
 放られた二本の剣のうち、一本を切り飛ばし、もう一つの柄をつかむ。
 魔物の姿を見せたスカイソードに噛みつかれるより先に、たぬきへと投げ返す。
 たぬきが生み出した剣で受ける間に、距離を詰める。


 眼前まで迫り、たぬきの剣ごと真っ二つにする。
 中から現れたやせたたぬきが、すかさず距離をあけるのを、俺は地面を殴りつけて攻撃する。
 迷宮の足場が砕け散る。再生はすぐだが、破片がたぬきへと迫る。


 がれきの処理に手を回したたぬきへ、跳躍する。両手で握りしめた剣をふりおろすと、たぬきに回避もさせない。
 俺には一切の攻撃魔法がない。遠距離の敵相手に、俺一人では厳しい戦いになることも多い。
 ならば、どうやって戦闘を行うか。迷宮の破壊を行うのが手っ取り早い。


 迷宮内を破壊するのは困難であるが、それでも全力を出せばどうにかなる。
 一瞬で再生されてしまうため、壁を破壊して移動するなどは無理だが。


 あとは、戦闘での勘を取り戻すことだ。とっさに最適な動きが先週ではほとんどできなかったが、今はそれができる。
 やはり実戦から距離をあけるというのは危険だ。いや別に俺は戦闘を生業にするわけでもねぇんだけど。


「……なんとか、次の階層までの道を見つけたぜ!」
「ほんと、ありがとな。おまえがいなかったら、たぶん俺はここで永遠に戦う羽目になってたぜ」
「お互い様だっての。……これで、ようやくお兄ちゃんのもとに行けるんだからな」


 決意を含んだ彼女の表情に、俺もうなずきを返す。
 ……次元のはざま、か。第五十階層にあるのだろうか。
 そこにたどり着く前に、おそらくはボスと戦闘を行う必要があるんだけどな。


 連戦は続いていく。
 俺の疲労よりかは、冷歌のほうが目立つ。
 彼女はそれでもなお、魔法を使い続ける。俺に魔力があるのなら、分けてやりたいくらい俺のサポートに徹してくれている。
 階段を見つける。そのときには、彼女の息がだいぶ上がっている。


「冷歌、もう魔物は無視していくぞ!」


 背後に再び出現したのは、たぬきが二体に、スケルトンが二体。
 さすがにあれを相手にするのは骨が折れる。


「う、……わかったぜ! 魔法――」
「はいらねぇ! 俺が抱えて、一気に!」


 冷歌の体をつかみ、下りる階段めがけて俺は両足に霊体を展開して思い切り地面を踏みつける。
 本来敏捷がないために、霊体では速度にかかる補正はない。
 それでも、このように攻撃として無理やりに加速することは可能だ。……とはいえ、まるで制御はできない、まっすぐに突っ込む自殺技にしかならない。


 踏みつけた衝撃で霊体が消滅する。だが、俺たちの体は爆発的な加速を見せる。
 階段を転げ落ちるようにしながら、冷歌がすっと氷の壁を作り出す。俺は冷歌を抱きかかえるようにして、そのまま霊体をまとう。
 氷の壁を砕いて、霊体が消滅する。同時に速度も殺され、俺たちはとりあえず第四十九階層を突破した。
 ……なんつー、魔境だ。


 異世界でもこれほどの連戦はしてこなかった。そもそも、こんな高階層まで迷宮に入ったことがなかった。
 踊り場にて腰を下ろしたところ、冷歌がこちらへと視線を向けてくる。


「何が、魔法はいらねぇだぜ。なかったら、こんな疲労状態のまま第五十階層行きだったぜ?」
「そのときは、ボスを見て引き返せばいいんじゃないか?」
「引き返す体力が残っていたのか?」
「そのときは、冷歌を盾にするってのはどうだ?」
「あたしがあんたを盾にしているよ。……とりあえず、ここで弁当でも食べるか?」


 彼女から預かっていた弁当をアイテムボックスから取り出す。出来立てほかほか、一緒に取り出したペットボトルのお茶も、冷蔵庫から取り出した後のように冷えている。
 何度か乱れた呼吸を戻すように、冷歌が呼吸をしてから、笑顔を浮かべた。


「うっしっ、とりあえず魔力はまだだけど、体力はだいぶ戻ってきたぜ!」
「本当かよ?」
「ほ、本当だっての! つーか、勇人は全然疲れていないのか?」
「……いや、疲れはあるぜ。おまえほどじゃないけどな」


 そういうと、負けた気分になると彼女は悔しそうにこちらをにらんでくる。
 ぱくぱくと、学園で販売されている弁当を口へと運んでいく。
 なんでも、魔力が回復できるように、弁当の材料のすべてが迷宮でとれたものらしい。そのために、結構値段が張るそうだ。


 準備のいい奴だ。ばくばくと口に弁当を運ぶ彼女は、大変おいしそうに食べている。俺も用意されている弁当を口に運ぶ。
 彼女と同じものなんだが、俺は別に魔力はないんだよな。


「そういえば、おまえの魔法ってどうなっているんだ?」
「どうってなんなんだぜ?」
「いや、少し気になってな。俺の霊体は、HPがあってそれを消費することでこの世にはありえない現象を引き起こすことができるんだよ。けど、おまえは魔力を消費するんだよな?」
「そうだぜ。あたしのは……っていうか、たぶんこの世界の冒険者はみんな魔力を消費して、現象を起こすんだ」
「……スキル、魔法っていうわけかたじゃないのか?」
「スキルは、誰にでも使えるもの。いわゆる、武器とかにあるやつだな! それで、魔法はその人が生まれ持った才能、って感じで分けられてるけど、ぶっちゃけ効果自体は変わらないからそこらへん特に意識する必要はないと思うぜ」
「そうか」


 一応わけるのなら、彼女の魔法は氷を操る力で、スキルは魔法拡張と探索魔法のことか。
 まあ、確かにその逆の可能性も十分にあるわけで別に分ける必要はないって感じなんだな。


「魔力ってのは、どうにか上げる方法はあるのか?」
「レベルアップすれば、魔力もあがるぜ。けど……勇人からは一切魔力が感じ取れないな」
「生まれ持っての才能がないってことか」
「その分、肉体のほうが優秀って可能性もあるからな。落ち込む必要はないと……思うぜ」


 歯切れの悪い奴め。まあ、魔法に関しては優秀な仲間に頼ればいい。
 どうせ俺一人でできることなんて少ないんだからな。今回のように冷歌のようなパートナーを見つけて、一緒に行動すればいいだけだ。


「弁当まだあったよな!?」
「購買で、五個購入してたな」
「んじゃ、もう二つ食べる!」


 ……よく食べるやつだな。
 俺は桃が用意してくれた弁当を取り出して、食べていく。


「弁当用意していたのか?」
「まあな」
「あれだな。あの可愛い人が作ったんだろ?」
「よくわかったな」
「だって、なんとなくそんな感じがするんだもん。やっぱり手作りってうまいか?」
「……まあ、うまいな。食べてみるか?」
「いやいや、そんなことできねぇよ。あの人は、あんたのために作ったんだろ? あたしが食べたら悪ぃよ」
「そういう、考え方もあるのか。……なら、今度俺の家に来いよ。全部終わったら全員で仲良くパーティーでも開こうぜ」


 その時には、きっとアーフィもいるだろう。
 俺の誘いに、彼女はくすっと笑った。


「それじゃあ、そのときにあたしは最高級の魔物肉を用意してやるぜ!」
「ああ、楽しみにしてるよ」


 準備も万端だ。お互いに顔を見合わせてから、最後の階段を下りた。
 遺跡の造りは変わらないが、開けた部屋が眼前にはあった。
 先に見える扉は固く閉ざされていて、おそらくはボスを討伐しなければ先には進めないのだろう。
 力が集まっていく。黒い点が部屋の中央へと集まっていき、やがてそれは人の形をとっていく。
 ……あれば、ボス、なのだろう。俺たちはそれぞれ武器を構え、それが顕現するのをじっと待った。








 
 

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