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オール1から始まる勇者

木嶋隆太

第十四話

 第四十六層に到着し、俺は冷歌にもらった剣を取り出した。


「うわっ、あんたどこから武器取り出してんだ!」


 ……アイテムボックスは知らないのか。


「まあ、企業秘密ってことで」
「……まあ、あたしは別になんでもいいけどさ」


 冷歌がこちらをじろっとみてくる。
 冷歌に貸してもらった長剣を軽く振り回してみる。


 使い勝手は悪くない。手にもよくなじむ。
 霊体なしでも十分使えるし、問題ない。


 迷宮内は遺跡のような作りとなっている。石造りの足場に壁、たまにいくつかの小部屋があるのだが、その通路をつなぐ道は幅広い。ここで魔物が出現しても問題ないのだが、幸い今のところ敵の姿はない。


「勇人に渡した剣にはスキルはねぇからな。そこは勘弁してくれよ」
「冷歌の持っている剣には、スキルってのが入っているのか?」


 ……いまいちスキルの仕組みはわかっていない。
 俺が首をひねると、「ああ、そっか」と冷歌が頷く。


「勇人はスキルとかあんまり詳しくないって言っていたっけ」
「俺が使うかはともかくとして、教えてくれると嬉しいんだけど」


 冷歌との連携という点を考えれば、聞いていて損はない。
 俺の言葉に、冷歌はこくりと頷いてから剣をこちらへ向ける。
 まっすぐに伸びたその剣は、氷のような青色をしている。どこか、冷たいのは無機物だからだけではないようだ。


「簡単にいえば、あたしの剣はスキルの効果範囲を広げる剣なんだよ。んでもって、あたし自身はスキルを持っている。武器のスキルも、あたしが持っているスキルもどっちもそんなに変わらないんだけどさ。ものについているスキルってのは、人によって別の装備品とかに移せるんだよ」
「へぇ……。スキルを移すスキルって感じか?」
「そうなんだぜ。だから、いい武器にいいスキルをつけたり、一つだと効果の薄いスキルを別のスキルと組み合わせたりするんだ。あたしのこの氷は、あたしの能力。そんでもって、この剣にはスキル拡張ってのが入っているんだ」
「ってことは、あの氷の範囲が広くなるってことか?」
「まあ、それもあるけど、本来あたしはそんなに遠距離まで攻撃できないんだけど、その距離も広くなるって感じだ」
「ってことは、相手の足場を凍らせたりってのも簡単にできるのか?」
「できるよ。あたしは細かい操作が大の苦手なんだけどな」


 細かい操作までできれば非常に強い力だっただろう。
 自身と武器のスキルを組み合わせを工夫して戦うのが、この世界の基本か。


「あんたは、どうなんだよ? あのアンドロイド兵を倒したときの力は、どうにもスキルっていう感じはしなかったけど」
「これか」


 霊体をまとうと、彼女はその変化に一瞬驚いたようになる。
 気になるようで、何度か触れてくる。 まあ普通の肌とは違う。ぴりぴりとしたような感覚があるはずだ。


「これは……なんなの?」
「霊体っていって、まあゲームのHPとかがある鎧をまとっているようなもんだな。霊体にはステータスがあって、まとっている間はその力で戦闘が可能だ」
「ってことは、HPがなくなったら微妙になっちゃうわけか?」
「そういうわけだ」


 俺の場合はそのデメリットがほとんどないようなものだが。
 遺跡のような迷宮を歩いていく。やがて小部屋がみえてきた。


 部屋にはいくつかの石像がこちらをじっと見るように左右に置かれている。
 不気味ではあったが、先につながる道があるのだから、長居は無用だ。


「ここは、ずっとこんな造りなのか?」
「そうだぜ。似たような階層が多いせいで、あんまり長くいると頭が痛くなるんだ。……それにしても魔物、でねぇな。前に入った時はそりゃもう魔物が大量に押し寄せて来て大変だったらしいぜ」
「それが、攻略できなかった最大の理由か?」
「おう。魔物は強いし、捌くのは間に合わないし倒してもすぐに出るって言うんで、探索はとりあえず保留ってわけ」


 前情報とは違い、肩透かしを受けているようだ。
 迷宮は油断した時に牙を見せる。
 この迷宮は迷路のようになっている。
 ただ、この小部屋を見た限り、どこを通ってもたどり着く場所は同じようだ。


 おかげで、どうにも先に進んでいる気がしない。
 ぐるりと回って戻って来たのは、最初に入った小部屋だ。相変わらずの不気味な二つの石像が、こちらをみている。


「魔物はどうしたんだろうな」


 今日は日曜日だし、魔物も休んでいるのかもしれない。あほくさい自分の思考に嘆息しながらも、それなら探索が楽でいいのだが。


「……ここ、なんか怪しい感じがするぜ」


 くんくんと、いった感じで彼女は鼻をひくつかせる。
 この部屋には何かがあるというのか。
 ていうか感じ方が犬のようである。


 彼女はしばらく周囲へと視線を向けてから、じっと石造をにらみつけた。
 そちらに一歩を踏み出したところで、周囲を覆うように空間がゆがむ。
 出現した魔物をじっと見る。


 ストーンビースト。
 表示された三体の魔物は、石の見た目をした人型の狼だ。灰色のその体を動かしたストーンビーストがこちらへと鋭い石の爪を振り下ろしてくる。


 素早い動きに、俺と冷歌は即座に距離をとる。
 背後へ跳んだ瞬間、別の二体のストーンビーストが片腕を振り上げる。


 まっすぐに伸びてきたがれきの数々に、俺は長剣を回して受けきる。


「アイスシールド!」


 六角形の氷の壁が眼前に出現し、相手のがれきを防ぐ。その氷を巧みに彼女は砕け散らせた。
 破片の氷がストーンビーストへと降りかかる。しかし、その頑丈な岩を破壊するには至らない。


「勇人、攻撃力に自信はある!?」
「むしろ、俺ができるのはそれだけだ!」


 レベルをあげて物理で殴る。俺がたどり着いた最強の道はそれだ。
 霊体を展開して、長剣を構える。砕けた氷は攻撃ではなく、相手の足止めが目的のようだ。


 冷歌が近づいて、ストーンビーストたちの足元を凍らせる。
 俺に気づいて動こうとしたストーンビーストが、氷に気づかず一瞬の隙を作る。


 力を入れればすぐにはがせてしまうようだったが、逃げるのに遅れた一体へと、跳躍ととも長剣を振り下ろす。


 切れ味抜群、だ。この剣は石であろうとも、いや鉄さえも切り分けられるのではというほどにストーンビーストの体を半分にした。
 素材として、ストーンビーストの肉が落ちた。いや、おまえ食べる場所ないだろ。


 残りの二体のストーンビーストが俺を警戒したが、敵は俺だけではない。
 俺の背後で氷を展開し続ける彼女は、大きな氷の塊をストーンビーストへと放つ。


 人の頭ほどのサイズの雑な氷は、ストーンビーストの体を殴りつける。
 吹き飛んだ、ストーンビーストが仲間を見ている。


 そんな隙があるのかよっ。
 俺は踏みこむと同時に、長剣を横に振りぬく。ストーンビーストの腕を切り、その先へと迫ろうとしたところで別のストーンビーストが仲間を押し飛ばす。


 剣から守ったのもあるが、何よりも仲間を武器にしたのだろう。
 ストーンビーストは仲間に利用されたのがわかっていながらも、俺のほうへと片腕を開いてくる。


 押しつぶそうとしてきたが、俺は霊体をまとった足を振りぬいた。ストーンビーストの体が遺跡の壁へとめり込む。
 頑丈な迷宮が一瞬揺れるような音を上げた。ストーンビーストの体が崩れ落ち、消滅する。


 最後の一体が、こちらに拳を振りぬくが、その足元から全身を飲み込むようにして氷が覆う。
 氷ごと、その体を砕く。ストーンビーストは悲鳴をあげることもできず、氷とともに砕け散る。


 とたんに、同時に魔物が出現する。……ストーンビーストが、また三体。
 再出現はおおよそ三十秒か。……確かに、このレベルの魔物がそれだけのペースで出てきたら、攻略を断念したくもなる。


「冷歌、怪しいってどこがだ!?」
「あの石像だぜっ。たぶんだけど!」
「了解だ! ぶっ壊せば、何かわかるだろ!」


 登場したストーンビースト三体の拳をかわす。
 三体はそれぞれ石のわりに機敏に動くし、連携も見事だ。
 だけど、力で無理やり吹き飛ばさせてもらう。


 敵の攻撃をくらい霊体が解除されるが、俺の生身だって弱くはない。
 力を込めて、剣を抜きはなつ。それでも、霊体と比べると苦戦してしまう。


 どうにか攻撃をはじく。霊体の再使用が可能になり、展開した霊体で剣をバットのように構えてふるう。
 ストーンビーストが他二体を巻き込んで、そのまま石像へとまっすぐに弾かれる。
 激しい激突音をあげ、すべてが破壊されたその先には、階段があった。


「……なるほど、石像に隠れていやがったのか」


 俺が剣を肩に乗せるようにしながら感想を言うと、再び周囲の空間がゆがんだ。


「やばいっ、早くしねぇとまた出てくるぜ!」
「だなっ」


 剣をアイテムボックスにしまい、同時に階段へと駆け出す。
 背後では、俺たちを認識したストーンビーストが迫ってくる。


 ゾンビにでも追われているような気分で、階段へと駆け降りると背後にいたストーンビーストたちは急に落ち着いて、それから徘徊を始める。
 階段まで下りてきそうな勢いはやめてほしい。ここまでくるのではと錯覚をしてしまう。


「……とりあえず、第四十六階層は突破、ってことでいいのか?」


 息をきらしながら、冷歌が膝に手をついてこちらを見る。
 それでいいんじゃないか? まるで勝った気分ではないけど。


「完全制覇は……つーかこの先の階層も無理そうだな」


 魔物との戦闘時間よりも、迷っていた時間が長い。
 あれだけのペースで魔物に襲われては、ゆっくり探索もできやしない。
 長い階段を下りていき、途中休憩をはさみながら俺たちは第四十七階層へとおりた。











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