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オール1から始まる勇者

木嶋隆太

妹視点 第十一話



 あたしはもっと魔法を鍛えないといけない。
 ……一撃で、フンガを潰せるくらいになれば、みんなにかける負担も減る。
 時間は二十三時を回った。
 兄貴が眠ったのを確認して、あたしは部屋の鍵をかけてからダンジョンの扉を開けた。


「本当に行きますの?」


 不安げなクワリがあたしの眼前でとぶ。


「最悪、ゴブッチに周囲を守ってもらってれば大丈夫だよね?」
「まあ、一階層のゴブリンなら、あっしが余裕で倒してやりますけど……」


 頼もしいことを言ってくれる。
 クワリ、ゴブッチを連れ、あたしはダンジョン一階層へと入った。
 あたしがやることは別に探索ではない。
 魔法の訓練だ。咲葉との攻略には時間の制限があるから、個人の練習はこういうときにしないとね。


「クワリ、魔法についてどのくらい知っているの?」
「えーと……そうですわね。魔法は自分の想像を押し付けて、世界の法則を捻じ曲げるようなものですわ。その人が生まれ持って所持した魔法……沙耶でいえば、ヒートバレットやサークルフレイムですわね。あれを現実世界に顕現させるのが魔法ですわ」
「それはわかるんだけど……例えば、もっと威力をあげることってできるのかな?」
「魔力を消費したり、あとは魔法の理解を深めたり……ですわね。あとは、ほかの人と魔法を組み合わせるというのも一つの方法ですわよ」
「……うーん」


 最後の手段はどうしようもないかな。
 ゴブッチはそれから片手をあげる。


「あっしもダブルマジックを知っていますよ」
「ダブルマジック?」
「例えば、沙耶の姉貴の魔法と咲葉の姉貴の魔法をくみあわせるものっす」
「ああ、知っていますわねそれも」


 クワリがあとを引き継ぐ。


「どういうものなの?」
「さっきの魔法と同じようなものですわ。ただ、武器魔法と属性魔法を組み合わせるから、その点が少し違うくらいですわね」
「……なるほどね。けど、その練習は――」


 できないよね、と言おうとしたら、ゴブッチがまた自己主張をしてくる。


「あっ、あっしも一つ魔法を覚えたっすよ! ほら、調べてみてくださいっす!」


 ゴブッチのいう通り、確かにアナライズを使用してみると魔法があった。
 剣に魔力をのせて敵を切ることで、敵の力を減らすというものだ。
 力奪剣りきだつけん、と名付けてあげよう。


「力奪剣だね。相手の力を奪う技みたいだよ」
「そっすか。……うーん、そこまで有効なのかはちょっとわかんないっすね」
「けど、それはまあ試してみないとね」


 実際のダメージであったり、使い勝手というのは訓練ではわかりにくいものだ。
 ゴブッチの能力はあとで確認するとして、あたしは練習しないとね。


 魔法を構築する。体内で使いたい魔法を選択して、魔力を込める。
 魔法という器があってそれに魔力を入れていく。
 その枠は、はじめに設定して魔力が満タンになったところで、魔法として外にだせるようになる
 それが、あたしの魔法だ。


「ヒートバレット!」


 小さな器に魔力を込めた状態。
 最速で使える魔法の段階では、それこそ銃弾のような小さな一撃にしかならない。
 ……これでは、フンガには通用しない。


 ならば、器を大きくする。魔力を込める時間は長くなるけど、その分威力の高い魔法となる。
 静かに二人が見つめる中で、あたしは片手を振り下ろす。


「過重ヒートバレット!」


 思いついた言葉とともに放った魔法は、あたしの体を飲み込むほどに大きな火の球となる。
 フンガに放ったときの魔法もこれだ。


 威力はあるが、これでも一撃で仕留められなかった。けれど、これでは発動までも遅い。
 ……フンガの動きの速さを思い出すと、今のままでは確実に通用しない。
 どう工夫したらいいのかな。
 あたしが腕を組んでいると、クワリが人差し指をたてる。


「魔法というのは、その人の力、ですわ。ですから、何かに頼って発動するものではありませんの」
「頼って発動するものではない?」
「そうですわ。なんだか、今の沙耶は頼り切りになっているように感じますわ」


 ……頼り切り。
 それはどういう意味なのだろうか。
 魔法の発動についてだったら、確かに心当たりはある。


 あたしは、この用意された器に魔力を流して発射するだけだ。
 ……これは本来の魔法の発動ではないのかな?
 それとも、これとは別にも魔法の使用方法があるってこと?


「クワリ、どういうこと?」
「それは自分で考えないと力になりませんわ」
「な、なんか師匠みたいな感じのことを言ってるね」
「ふふん……別にわたくしが覚えていないだけですのよ」


 クワリが悲しそうに肩を落とした。
 さっきのは断片的な記憶から取り出した知識なんだね。早く、記憶を取り戻させてあげたいな。


 手取り足取り教えてもらってばかりではあんまり身につかない。
 この前兄貴に教えてもらった勉強とか、ほとんど覚えていないしねっ。


 だから、魔法の別の使用方法を考えてみよう。
 今までは一からくみ上げるということをしてこなかった。
 だから、今度は一から組み立ててみればもしかしたら景色が変わるかもしれない。


 魔法を一から作る……それがまずどこから手をつければよいのかわからない。
 ……けど、ヒートバレットっていう結末がどうなるのかはわかっている。
 そこから逆に作っていけばいいんじゃないかな?


 まず、ヒートバレットの形をイメージする。
 どういう形のものを作りたいか――それは火の弾丸だ。
 威力、速度、サイズ……それらの情報を意識しながら心の中に浮かべる。


 今までは、使いたい魔法をイメージすると、器のようなものが出現していた。けど、今はない。
 ……魔法が打てる状況にするにはどうすればいいか。 
 そのイメージを形にするように、あたしは魔力とイメージを混ぜ合わせていく。


「……うーんだめだ」


 イメージしていたものと魔力がぶつかりあってしまい、崩れてしまった。
 合体できずに壊れてしまった、みたいな感じだ。
 ……あー、これかなり難しいかも。頭の中で同時にあれこれ考えないといけない。
 大きく息を吐くと、クワリが顔の前で滞空する。


「何をしていましたの?」
「こう、作りたいものがあってそれにあわせて魔力を合わせていったんだ」
「……ふむぅ。魔法を作る、というのは案外難しいのですわね……。なら今度は逆にしてみたらどうですの?」
「どういうことかな?」
「体内にある魔力をイメージしまして、それを作りたい形に変えていくというのはどうですの?」
「……なるほど」


 それだと、最初に用意した魔力の形を変えるだけだから、簡単かもしれない。
 さっきは、イメージに合わせての魔力が多すぎてしまったから崩れてしまったので、ならばその逆にすれば、もしかしたら魔法ができるかもしれない。


 最初に使用する魔力を用意する。それを、ヒートバレットのイメージに合わせて形を作り替えていく。
 魔力がだんだんとヒートバレットに変化していくのがわかる。
 ……よし、さっきできなかった場所までこれた。クワリはいい指導者になるかもしれないね。


 魔力を魔法に変化させていくのは、粘土遊びのようで、懐かしい気分になる。
 魔力、イメージとそれらだけでは何もできなかったものが、あたしの天才的な配分で魔法という形になっていく。
 ……外に出すのは、いつも通りで、そう片手をふるだけ。


「ヒートバレット!」


 放たれた火の弾は予想していたのよりも小さい。


「で、でましたわね!」
「凄いっす、沙耶の姉貴!」
「えへへー、すごいでしょ!」


 あたしが腰に当てて二人の賛美に聞き入っていた。
 けど、今のは実際失敗だ。
 一瞬見えないのかと思ってしまうほどのか細さだった。何が原因なんだろう?
 しばらく考えていると……ああ、そうか、気づいた。


 用意していた魔力から作れたのがこのサイズなんだ。
 この魔法の問題は、どれだけの魔力でどのような設定の魔法を作れるかを感覚で覚えておかないといけないということだ。


 さっきあたしが用意した魔力では、あの程度しか作れないってことだね。
 けど、これならいくつか色々なカスタムができる。


 ヒートバレットのバリエーションを増やすこともできるし、サークルフレイムでもそれは可能かな。
 感覚を覚えるために、とりあえずこれからはひたすら練習をしないといけない、かな。


「さっき言っていたダブルマジックについて詳しく聞いてもいいかな?」
「あーいいっすけど、かなり難しいらしいっすよ?」


 ゴブッチがぽりぽりと頬をかく。


「大丈夫、大丈夫」
「それじゃあ、実戦しながらやってみましょうか。……まず、沙耶さん魔法の要素だけがある魔法陣を地面に展開ってできますか?」
「……うーん」


 魔法陣を作るのも難しいんだけど、サークルフレイムを途中の段階で止めて発動してみようか。
 魔法を作成して、ゴブッチの足元にサークルフレイムを使用する。
 火は生まれず、まだ魔法陣の段階で止まる。これでいいのかな?


「ありがとっす。あとは、あっしがここで……魔法を発動して!」


 ゴブッチが剣を持ち、力奪剣を発動する。剣に紫色が混ざり、さらに赤色が混ざろうとする。
 ……しかし、ゴブッチの顔が苦しそうにゆがむ。
 え、え? 何が起こってるの?
 あたしはずっと見ていたけどまったくわからず、そしてゴブッチは肩で息をするようにして地面に剣をつきさす。


「やることは、沙耶の姉貴が魔法を展開する。それに、あっしが魔法を組み合わせて敵へと放つっす。……人それぞれ魔力というものは違うっすから、合わせるのは非常に難しいっす」
「……そうなんだ」


 あたしはゴブッチが突然疲れたように膝をついた姿しか見れなかったけど、きっと大変だったのだろう。
 なんとなくわからないでもないかもしれない。
 あたしが自分の中で一人で魔法を作るのも難しいのに、ゴブッチは二人分の魔法を組み合わせて新たなものを作り出す必要があるんだ。


「それじゃあ、とりあえずダブルマジックはおいておこっか」
「そうっすね。あっしも、自分なりに魔法の腕を磨いてみるっす」
「うん……修行、開始だね!」


 次は、絶対に負けない。
 打倒フンガを目標に、あたしたちはそれぞれ魔法の訓練に励んだ。











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