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オール1から始まる勇者

木嶋隆太

第十一話 四日目 依頼

 一度宿に戻って弁当を受けとる。
 ついでに、購入してきた水筒に、水も大量に確保しておく。
 俺のステータスカードは別に制限はない。
 いつ、遭難しても良いように、食料、水分をとりあえず確保しておいた。


 ステータスカードの持ち物を確認する。……念のために、剣も十本ほど購入しておいた。
 いつ、どこで何が起きても良いようの予備だ。とりあえずの準備はこのくらいかな。


 後で、着替えなども購入しておかないと。
 ついでにアーフィの分の食事と、俺も体作りのために一食頂く。


「……おいしいわ」
「俺じゃなくて店員に伝えてあげると良いよ。きっとコックの耳に届いて喜んでくれるよ」
「そうね。けれど、この食事を教えてくれたあなたにも感謝があるわ。ありがと」


 嬉しそうにアーフィがはにかみ、食事を口へ運んでいく。
 ……なんていうか、落ち着き払った彼女の挙動に、やはりどこかのお嬢様なのではないかと勘ぐってしまう。
 アーフィがそれなりに食事をしたが、それでも彼女は遠慮していたのだろうと思う。


 まだ全然満たされていません、という顔であったが、俺も好きなだけ食べていいよ、とは言えなかった。
 先ほど訪れた古着屋へと入り、眼帯を選んでもらうことにする。
 犬、猫といった動物から、ウルフ、ゴブリンがデフォルメされたような刺繍の入った眼帯がいくつも並んでいる。
 ……値段としては、200から500程度だ。問題ないレベルだ。


 ぶっちゃけると俺は、王様からもらった金が十万ペルナほどあるしな。
 それに、魔物を狩って得た金もある。出来るならば、あまり消費せずに王に返してこの世界を去りたい。
 あくまで、生活が安定するまでこの金を使っていくというだけだ。


「これにしてもいいかしら?」
「へぇ……可愛い刺繍があるね」


 アーフィがとったものは、ウルフの刺繍がはいった眼帯だ。


「別に……可愛いから選んだわけじゃないのよ?」


 そういはいうが、アーフィの顔は赤い。
 ……可愛いという言葉に照れているのかもしれない。


 店主に金額を払い、アーフィは早速眼帯をつける。
 それから、依頼主がいるはずの北門へと向かう。


「これから竜車に乗ったら、この街には戻ってこないと思う。それでも良い?」
「大丈夫よ。私、もともとやることなんてないもの」


 北門の近くにあった広場では、あちこちに人がいる。
 依頼なんてのは貼ったところで何日も待たされるなんてのも、しばしばあるらしい。
 行商人が多く居るのか、竜車を中心に店を開いているものもいる。
 それによって、小さな商店街の形相を呈している。
 冒険者が客として多いのは、なるほど、ポーションなどが売られているからだろう。


 時々、騎士がやってきては行商権の所持を確認して行っている。
 たまに、逃げ出す人もいるが、きちんと許可をもらっていない人たちなのだろう。
 騎士は俺を見ても何も反応しない。
 こんな街のこそどろを捕まえるような仕事は、下級の騎士が任されるはずだ。
 精霊の使いの存在は知っていても、その姿を拝むこともできていないのだろう。


 ラッキーであった。下手な反応があると、それだけで周囲からの視線の意味合いも変わってしまう。
 北門のどこかにいるというガーデンズという依頼主。特徴としては、幼い容姿をしているというものであったが、さすがにわからない。


 それにしても竜車が多いな。翼のない竜たちは、地竜と呼ばれるものだ。
 地を走る速度はなかなかであるし、何より繁殖も簡単で土や魔物の肉を食べて成長するという点から、下手な馬よりも手がかからないし、安価にすむらしい。
 また地竜の糞が食物を育てるのに良いらしく、そちらも商品となるため、至れり尽くせりというわけだ。


「ガーデンズという方を知りませんか?」


 竜車を中心に商売をしている人たちがいて、俺はそちらに声をかけてみる。
 ここからは聞き込みをしていったほうが良いだろう。
 幼い少年とも思えるような容姿をした男は、エルフのようだ。
 ……一応、それなりに幼い子を狙ってみたのだが。
 俺の言葉に彼の顔がぱっと輝いた。まるで子どものような無邪気な笑顔だ。


「ガーデンズは僕だよ。もしかして依頼を見てくれたのかい?」


 おっと当たりか。


「ええ。俺はハヤトっていいます。こっちは仲間のアーフィです。二人で依頼を受けたいと思っているのですが、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。ただ、報酬は八百ペルナ。これは変わらないから、二人の場合の割り当てについてはお互いに喧嘩しないように話し合ってね」
「わかっています」
「それじゃ、荷台に乗ってよ。商品もあるから気をつけてね?」


 竜車にはいくつかのパターンがある。巨大な竜の場合は、その背中に荷台を乗せて走るものもいる。
 そちらは面白そうであったが、ガーデンズは、一般的な荷車を引いて走る地竜だ。
 ガーデンズは近くにいた商人に一言二言話しをして、頷いてこちらをみる。
 じっと観察する様子から、俺たちが何か悪いことをしたときのために覚えているような感じがあった。


「一応伝えておくと、僕の身に仮に何かあったら、僕の知り合いたちが黙っていないからね?」
「何もしませんよ」


 笑っていうと、ガーデンズも笑顔を浮かべる。
 ……商人たちは、商人たちで自分たちの関係を作っているのだろう。


 白い幌を押し開け、中へと入る。簡素な木の枠の窓があり、外の様子を窺うこともできた。
 荷物をまとめたガーデンズが荷台のほうへと荷物を詰めてくる。
 それを受けとって、自分達が座れる場所を確保していく。
 一通りの作業を終える、窓枠にある幌をずらすようにしてアーフィが顔を出す。
 眼帯をつけた彼女は、どこか神秘的な魅力を兼ね備えていた。馬車から顔を出している姿など、それこそどこかの貴族の令嬢と言われてもおかしくないような見た目である。


 竜車が動き出す。それにあわせて姿勢を崩しかけたアーフィは、すぐに体をもどして再び窓から顔を出す。


「……凄いわっ。あの可愛い子が動き出したのね!」
「興奮しているところ悪いけど……身を乗り出して落ちないでくれよ?」
「興奮はしていないわっ。ただ、感動しているのっ」


 嬉しそうにアーフィは動いていく景色を右に左に見ている。
 誰の視線もなかったため、俺は剣を取り出しステータスカードも取り出した。


 Lv6 ハヤト・イマナミ 職業 ものまねLv1 メイン 勇者Lv1 サブ 斧使いLv1、格闘家Lv1、剣士Lv1
 HP1 
 筋力621 体力1 魔力1 精神1 技術11 
 火1 水1 風1 土1 光1 闇1
 職業技 筋力アップ 筋力アップ 技術アップ 


 格闘家と斧使いの二つが筋力アップなのだが、重複しているのか二つ書かれている。
 まあ、それはどうでもいいのだが、問題はこれからのステータスの分配だ。


 技術アップは剣士の職業技についているし、技術があがれば剣の扱いもあがるのだろうか?
 ただ、剣の達人、と呼ばれる人は技術のステータスが高いのかどうかが気になっていた。
 仮にそうなのならば、これからは技術の値もあげていくんだけど……無駄にならないかどうか難しいところだ。
 と、外を見ていたアーフィがカメのように顔をしまう。
 彼女の左目が厳しく細められている。同時に、竜車が急ブレーキをかけ、近くを掴んで姿勢を整える。


「アーフィ、どうしたんだ?」
「魔物がいくらかこっちに来ているわ。それも結構な数よ」
「二人とも、最悪な旅になったよ。まさかのツリーフェイスだ。あの顔を見たら、数日は夢に出てきそうだ」


 ガーデンズが焦りの混じった顔を御者台から覗かせ、すぐに俺たちは飛び出した。
 竜車の前へと向かうと、巨大な顔のついた樹がこちらへと迫ってきている。
 緑の多い樹が動くたびに葉が落ちる。地面に落ちた葉は、やがて成長し、足が生えて魔物となる。
 それら一体一体は強くはなさそうだったが、正直いって面倒な相手であることに変わりはない。
 アーフィも、ローブの下にあった剣を抜いた。身なりは酷いものだったが、その剣だけは鉄さえも斬れそうなほどの輝きを持っている。


「アーフィ、聞いていなかったが……戦闘はどのくらいできるんだ?」
「あら、ふふん。それだけは少し自信があるのよ。……あんまり戦うのは好きではないけど、これでも戦闘は得意なほうよ」
「わかった。お互いに、カバーしながら……とにかくあのツリーフェイスを狙うぞ」
「あの大きい木よね? 数は多いけれど、頑張って戦うしかないわね」


 彼女とともに戦闘を開始する。
 近づいてきた魔物は……リーフニンという名前のようだ。
 一体一体は剣を振るうことでしとめられるのだが……数が多すぎるな。
 アーフィをちらとみる。彼女は腕が見えないほどの剣の振りで、次々にリーフニンを撃退していく。
 ……美しく、力強い剣だ。俺もいつかあんな風に剣を振りたいものだ。
 と、リーフニンがさらに増え、竜車のほうへと向かう。
 まずい――!
 俺は慌ててそちらへと駆け出すが、脇から飛び出してきたリーフニンに弾かれる。
 ……こいつらっ。


 竜車に乗っていたガーデンズが顔を驚愕に染める。
 その瞬間、アーフィが彼のほうへすっと移動する。同時に片手をリーフニンたちへと向け、膨大な風をぶつける。
 アーフィの顔は険しいものになる。
 ……あの力を使うのに、結構体力をけずられるのだろうか。
 みるみる青い顔になるガーデンズも気になったが、今はあのボスを狩らないとだな。
 剣で地面をつき、そのまま一気に加速する。
 リーフニンが襲い掛かってくるが身をひねり、剣を振りぬく。


「ハヤト、私が風で一掃するわ。雑魚は気にしないで……突っこんで」
「……了解だっ」


 彼女の言葉を信じ、俺は駆け抜ける。
 と、俺の近くへと迫ったリーフニンたちの体が吹き飛ぶ。
 強烈な風――それを生み出したアーフィはふふっと口元に笑みを作る。
 ……サンキューな。


 俺は風で作られた道を一気に抜けていく。
 と、途端に俺の体が浮かびあがる。……風が、俺をツリーフェイスの頭上へと飛ばしてくれる。


 だからって、事前にいってくれっての。空中に突然放り出されたのだから、身体を維持するのに苦戦してしまう。
 一気にツリーフェイスの前まで移動した俺は、頭上に剣を構えながらツリーフェイスへと落ちていく。
 焦ったツリーフェイスが葉を手裏剣のように飛ばしてくる。
 ……さすがに防ぎきれない。剣でいくつかを捌き、全身に霊体をまとってどうにかやり過ごす。
 いくつかが足や腕にささってしまったが、それでも問題ない。
 再度両腕に霊体を纏い、ツリーフェイスを両断する。重力に任せ、俺はただ剣を真下へと落とすだけで良い。
 地面に着地する際に両足に霊体をまとうと、それで消滅してしまう。


 まったく、相変わらず打たれ弱い体だ。魔石を回収し、ステータスカードへとしまいながら、剣を周囲に向ける。
 が、すでにリーフニンたちの姿もない。
 ツリーフェイスがいなくなったからか?
 俺のレベルが一つあがり、そこで気づいた。
 ……ああ、そういえばアーフィとはパーティを組んでいなかった。経験値を独り占めしてしまった。
 アーフィが物を知らず、俺が騙しているみたいで気分が悪いね。


 後できちんと事情を話して謝罪しようと考えながら、アーフィのほうへと戻ると、ガーデンズが短剣をアーフィに向けていた。
 その体はかたかたと震えている。
 容姿の幼さも相まって、大人に恐怖している子どものようにも見えた。
 ……何をしているんだ? 理解できなかったが、止めないと。


「ちょ、ちょっとどうしたんですか?」


 慌てて俺が駆け寄ると、アーフィの眼帯がはずれていた。
 悲しそうにこちらを一度みたその右目は、人間とは思えない模様があった。


「さささささっき……キミは霊体をまとわずに、魔法を使った! 魔器を持っているようにも見られなかったし、何より、その目は……!」


 アーフィの目は赤く……そして、


「星の形をした、瞳……それは――星族の証だ!」
「……」


 赤い星模様が入っていた。
 ……星を体に持つ種族がいる。
 アーフィは、この世界でもっとも恐れられている、星族なのか。

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