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お隣さんの可愛い後輩が俺にだけ滅茶苦茶優しい

木嶋隆太

第七話



「よく、甘い物は別腹だなんだというが……俺にはその考えが理解できないな」


 注文したパフェは二人で食べるにしても結構なサイズだった。
 ある程度まで食べたところでナツがダウンしたので、俺が仕方なく食べているところだ。


「別腹ですよ。普通に食事したあとも案外入ります」
「じゃあ食え」
「今の私は別腹まで満腹になってしまいました」


 けぷーという感じで腹をさするナツ。
 ……この野郎。
 さすがにこのままの調子で食べるのも辛い。


 パフェに集中しすぎてまったく話せていなかった部活動の打ち合わせをすることにした。


「また明日も、今日みたいな感じで二人の気持ちを少しでも引き出せればいいって感じだよな?」
「それでいいと思いますね。二人の共通言語であるゲームなら、多少なりとも前に進めると思いますしね」


 一応あの二人は他にも話はできる。
 運動にしろ、勉強にしろ。
 彼ら彼女らは共通している部分が非常に多い。どちらも人から注目されるタイプで、似たような悩みも抱えているだろう。


「そういえば、部長ってアキのどこが好きになったとか言っていたか?」
「……それは聞いたことありませんでした。アキ先輩顔が整っていますし、コスプレとかさせたかったんじゃないですか? 部長そういうのも好きですし。アキ先輩のほうは何か言ってました?」


 「あなたにコスプレさせたいです! つきあってください!」。
 こういわれて付き合える気がしないな。


「いや……俺も聞いたことなかったからな。あとで聞いてみるか」
「そうですね。どんな理由なんですかね?」
「案外顔が気に入ったとか一目惚れとかかもしれんな」
「一目惚れですかー、私もちょっとわかるかもしれません」
「なんだ一目惚れ経験者か?」
「はい、実はそうなんですよー。案外乙女でしょ?」
「一目惚れしたら乙女なのか?」
「なんか乙女っぽくないですか?」


 どうだろうな。まあ、意外だな、とは思った。
 ナツはモテそうだが、彼女から誰かを好きになるということもあったのか。
 まあ高校生。将来について考えず恋愛を楽しめるのは今くらいだからな。


「好きな相手いたんだな。だったら俺と一緒にいるの誤解されないように気をつけろよ」
「誤解されても大丈夫です」
「心の広い男だな」
「はい」


 彼女が変な男にいじめられないことを祈っておこう。
 生意気でウザイ後輩ではあるが、酷い目にあっては欲しくないからな。普通に良い奴だし。


 俺はパフェにスプーンを何度も突き刺す。
 ……もうマジで腹いっぱいだ。だが、世の中には食事ができず困っている人もいるんだ。


 残すのはダメだ。これは我が家の家訓である。
 と、ナツは俺のスプーンを見て何かを閃いたようだ。
 こちらに一口スプーンですくうと、


「先輩。はい、あーん」
「おかしいな。普通なら美少女に食べさせてもらえる嬉しいシーンのはずなんだが無理やり腹に詰めさせられている気分しかないのはなぜだ?」
「気のせいですよ。ほら、ポチ。食べないのですか」
「わお、ペット扱いだ」
「どうしたんですか? 恥ずかしいんですか?」
「そんなこたぁない。大丈夫か? おまえの好きな人はここにいないか?」
「気にしないでください」


 無理やりにスプーンの先を近づけられ、仕方なく食べる。
 ……別に味が変わるわけでも、食欲が復活するわけでもない。


「……おえっ。マジ苦しいな」
「はい、あーん」
「ターン制だ」


 俺がスプーンで一口とると、ナツは僅かに怯んだような顔になる。
 それから一口食べる。
 ……ちょっと照れてる? こういうの案外慣れていない? 攻められるのは弱いタイプか?
 ドSは打たれ弱い、というのは聞いたことあるなそういえば。


「おいおい、照れてるのか?」
「まあ、多少は。こういうのしたことなかったので」
「意外だな」
「私、中学までは地味目な子でしたからね」
「高校デビューってわけか?」
「当初はそんな予定もなかったんですけどね。変わりたいと思いました」


 変わりたい、か。
 それは凄いことだよな。
 変化というのは恐ろしいものだ。例えば、いつもと違う道で登校するとしよう。
 そんな小さなことであってもだ。道に迷う可能性はあるし、予定よりも時間がかかり、遅刻するかもしれない。


 こんな小さなことでも様々な問題がつきまとう。


 例えば、普段食べているのとは別の料理を注文するとしよう。
 いつも頼んでいるものよりもまずいかもしれない。そうなると、きっと後悔するだろう。


 あー、前のほうがよかった、と楽しめるような心の余裕を持てる人間はなかなかいないだろう。
 こんな些細なことでも色々とあるのだ。人が変わる、ともなればそれはかなり大きな決意だ。


「変わっていいことあったか?」
「高校生活が楽しいですね」
「そいつはよかったな。これからもがんばれよ」
「先輩って時々なんか教師っぽくなりますよね」
「……うちの顧問が仕事しねぇからだな」


 あとは一年間あの部長とアキの面倒を見てたからだろうな……。
 あいつら、頭はいいのだが行動がいかんせんそこらの小学生並みだからな。


 喧嘩を始めて、最後に仲裁するのはいつも俺だったからな。


 それから何とかパフェを食べ終え、俺たちは店を出た。
 二人で1980円だそうだ。……俺は普通のご飯が食べたかったぜ。
 奢ってもらったナツは満足そうである。


「そういえば、アキ先輩から先輩の中学校時代について聞きましたね」
「……あいつ、何か言いやがったのか?」
「昔は結構やんちゃしてたみたいですね」
「別に悪さはしてねぇぞ?」


 成績普通、無遅刻無欠席。
 とある不良が主人公のゲームが好きで、その真似をして喧嘩してたくらいだ。


 今思えばなんと中二病な時代だったのかと恥ずかしいので、掘り返してほしくなかった。


「面白いですよね」
「うっせぇよ」


 ちなみに、あまり中学時代のことを言われたくなかったので、俺は一つ隣の県のここに進学した。
 アキは、祖父母の家がこちらにあるらしく、今はそこから通っている。
 俺と同じ高校にしたのは親友なんだしね、という理由だそうだ。


 そうこうしていると我が家についた。
 ナツは荷物を置くと、いつもどおりに俺の部屋へと来た。


「結局、あまり作戦会議はできませんでしたし、ここで決めましょうか」
「そういやそうだな……。明日はどうやって二人の仲を縮めるか」
「やはりゲームを基本にするのはいいですよね。協力プレイがあるようなゲームはどうでしょうか」
「……協力プレイか。となるとミニゲームで二対二でできるようなものがあれば――あったな色々」


 俺は部屋にあったゲームから、いくつか候補を取り出す。


「そうですね……これらは悪くないですね」
「そんじゃこれをもっていってチームわけでもすればいいか?」
「チーム分けはどうします? くじ引きに細工しますか?」
「そうだな……。いや、簡単に二人を組ませる手段がある」
「なんですか?」
「あいつらは呼吸するように喧嘩する。俺が動画の編集でもしているときにその場面が来る。俺がキレる。二人が仲良くなれるようにパーティーゲームをやらせる……どうだ?」
「確かに。ある程度自然に誘導できそうですね。問題は先輩の演技力ですかね」
「そこは任せろ」
「おお、やりますね」
「演劇部に俺と声が似ている奴がいるんだ。そいつに頼んでみる」
「口パクする気ですか? 今から演技指導と行きますか」


 そういって彼女は一度部屋に戻り、演劇ゲームを持ってきた。
 これはアニメや演劇のように役者の動きに合わせて表示されたセリフを読み上げるというゲームだそうだ。


 ……ゲームって色々あるんだな。

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