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お隣さんの可愛い後輩が俺にだけ滅茶苦茶優しい

木嶋隆太

第六話



 部活も終わり、俺とナツはいつものように下校していた。


「先輩、どうでした?」
「うまく聞き出せたな」


 話すのは部活動のこと。
 あのとき、二人が恋愛ゲームの攻略対象を勧めたときの理由である。


「アキ先輩、どうでした? やっぱりあれ、一応彼なりのアピールだったんですか?」
「だそうだ」
「カワイイですね」
「カワイイが、もうちょっとうまいやり方もあるだろう、と叱っておいた」


 まあ、そういったら「だって恥ずかしかったんだよ!」と逆切れされてしまったが。
 それでも、部長が好きと公言したというのもあってか、前より素直にはなったほうだろう。


「部長はどうだったんだ?」
「同じですよ。それはもう乙女のように頬を赤らめて……『私なりの精一杯のアピールだったの……っ』と言っていたわ」
「その部長絶対カワイかっただろ」
「はい。見れなくて残念でしたね」


 くそぉ……こっちは野郎の照れた顔だったっていうのに。


「共通していえることは、まだまだ二人は素直になりきれないようですね」
「まあ一年間、顔を合わせたらすぐ口喧嘩してた二人だからな……」
「先輩凄いですね。そんな夫婦漫才をずっと見ていたんですか?」
「普通に楽しかったからな」
「先輩はそういう相手が今までいなかったんですよね。今は私が仕方なく相手してあげていますし、少しは寂しさまぎれました?」
「騒がしくはなったな」


 まあ、別に部長とアキにはぶられていたわけでもない。
 彼女らの喧嘩を程よいタイミングで止めるのが俺の役目だったしな。
 あと二人の愚痴を聞かされたりな。人が必死に動画編集しているんだから邪魔するなっての。


「結果は無残に終わったが、二人が自分の気持ちを少しでも前に出せたことは良いことでいいんだよな?」
「上出来だと思いますね」


 昔はそんな素ぶりもまったく示さなかったからな。
 いや、あったのかもしれないが、俺も特に意識してみてはいなかった。
 なんとなく、アキは部長のこと好きなんだろうな、くらいには思っていたが、部長のほうはまったく分からなかった。
 思い返すと、今とそんなに変わらない反応を見せていたかもしれない。


「不器用なりのアピール、カワイイもんだよな」
「それをいうならアレですか? 先輩も私への不器用なりのアピールだったんですか?」
「あれはホントただのルーレットだったんだがな」


 そんなに後輩キャラを選んだのが引っ掛かるようだ。
 確かにあのゲームの後輩キャラはちょっと似ている。
 決定的に違うのは、主人公にデレると滅茶苦茶カワイイというところくらいだろうか。


 ナツがデレた姿を想像してみる。……想像できるものはいずれ人間が作れるものである、という言葉を聞いたことがある。
 逆にいえば、存在しないものは想像できないということだ。俺にナツのデレた姿は想像できなかった。今と変わらん気がする。


「そうなんですね。先輩もカワイイところあるのかと思ったんですが」
「カワイイところがあったらどうだ?」
「吐きます」
「実はおまえのことを想って選んだんだ」


 さあ吐け。


「そうだったんですね、嬉しいです」
「吐けよ」


 なに笑顔で言ってるんだ? 恥ずかしくなってきたんだが。


「なんです? 先輩私のゲロが見たかったんですか?」
「俺にそんな特殊性癖はねぇ。それで、夕食どうするんだ?」
「結局どうしましょうか。家にします?」
「奢らなくていいのか?」
「本当に奢ってくれるんですか?」
「一応約束したしな」


 男なら一度かわした約束くらいは果たさねばならないだろう。


「それなら……近くのファミレスにしましょう。なんだか新しいメニューでカップル限定のものが期間限定で登場したみたいですよ!」
「……なんだそのモテない奴を煽るようなメニューは。SNSで晒し上げられろ」
「まあ、別にカップルじゃなくても普通に頼めるみたいですけどね。普通に男性同士で注文したーみたいな画像ありましたよ」
「それなら俺たちでも問題ないんだな」
「他人から見たら私たちカップルに見えると思いますが」
「もしも注文の時にカップル証明しろと言われたらどうするんだ?」
「証明って何するんですか?」
「キスとか?」
「それでパフェも食べられるならいいじゃないですか」


 それでいいのか。
 最近の女子高生は少々乱れているのではないだろうか。


「ていうか、ちょっと待て。そのパフェって結構なサイズか?」
「かなりのサイズみたいですよ?」
「……それで腹いっぱいにならないか?」
「美味しかったらいいじゃないですか」
「炭水化物が食べたい」
「ダイエットですよ」
「パフェも十分カロリーやべぇだろ。ていうか、そもそもダイエットするほど太ってもねぇ」


 俺たちがファミレスに向けて歩き出すと、彼女が振り返る。


「ていうか先輩。カップルの部分はまったく否定しないんですね」
「そう見えるっていうのは納得できなくもないからな。さすがに夕食に男女で飯を食べに来たらそう思われるのも仕方ないだろ」
「仕方ないって酷い言い方ですね」
「あるいは兄妹とか」
「きっと父か母が浮気してますね」
「どうせ俺は不細工ですよー」
「そんなことないですよ」


 楽しそうに笑って、ナツはファミレスへと入っていく。


「とりあえず、明日の部活動の打ち合わせもするか」
「そうですね。二人をくっつけよう大作戦第二弾ですね」
「だっせぇ作戦名」


 店員に案内された席につき、俺たちはメニューを広げた。
 あれ? これデートじゃないか、と、思わなくもなかった。

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