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お隣さんの可愛い後輩が俺にだけ滅茶苦茶優しい

木嶋隆太

プロローグ1

 桜が舞う春の季節。
 今年で高校二年になる俺は、春休みを存分に満喫していた。


 積んでいたゲームを毎日朝から晩までやって、最低限の食事だけをこなして生活を送っていた。
 一人暮らしというのは人目を気にせず遊んでいられるのが最大の利点だろう。


 部屋のゴミはどんどんたまっていくが、俺はそれから目をそらしておく。
 ゲームのジャンルは様々だ。RPGはもちろん、アクション、シミュレーションなどなど――。
 とにかく、春休みの間にクリアできるだけクリアしてみせる。


 そんな気持ちで、昼夜逆転したような生活を送っていた俺の家に、ピンポーンとドアチャイムが響いた。


 ……一体なんだ?
 誰かが訪れる予定はない。通販の注文も今のところはないはずだ。
 実家から何か送られるにしても、両親は真面目であり、そういうものを送る際は、事前に俺が確実に受け取れる時間を聞いてくる。


 となれば、他に考えられる可能性もなく、俺は仕方なくゲーム画面をポーズしながら立ちあがった。
 ゴミ屋敷と化した部屋の中で、足場を無理やりに作ってテレビドアホンを見た。


 そこに映っていたのは、可愛らしい少女だ。
 ……年齢は恐らく俺と近い子だろう。ふわっとした茶髪の先をいじりながら、どこか居心地悪そうにじっとインターホンを見ている。


 悪いが俺の家に訪れるような女性はいない。
 となれば、だ。
 脳裏に浮かんだのは、宗教の勧誘くらいだった。
 華の高校二年生であるが、春休みにゲーム漬けになるくらいにそういう話は一切なかった。


 まだ、3%くらいは別の可能性もある。
 そんなソシャゲのガチャの最高レアを引き当てるくらいの気持ちで、とりあえず声をかけてみた。


「どちら様ですか?」
『隣に引っ越してきた能倉のうくら夏美なつみと申します。引っ越しの挨拶をと思いまして……』
「それはわざわざありがとうございます。ちょっと待ってください」


 引っ越しの挨拶……。高校入学に合わせて一人暮らしを始めた俺だが、そんなものしたことなかったな。
 ちゃんとしたほうが良かったかもな、と思いつつ俺は廊下を歩く。
 ……ちゃんとゴミすてろよな、家主。


 そんなことを思いつつ、何とか俺は玄関にたどり着き、ドアを少しだけあける。 
 この可愛らしい美少女に、散々な部屋を見せるわけにはいかない。
 ほら、一応お隣さんだしもしかしたら――という可能性もちょっとは考えたくなるものではないだろうか?


「こんにちは、能倉夏美と申しますえーと……」
「ああ、俺は宗川むねかわ冬樹ふゆきです。えーと、よろしく」
「はい、よろしくお願いします!」


 ……おーい、誰かー美少女との会話のために選択肢とか用意してくれー。
 そんなことを願いつつ、俺は彼女に疑問を投げる。


「この時期に一人暮らしって、進学とかに合わせてってところですか?」
「はい。私、近くの三橋高校に合格したので、引っ越してきたんです」
「……へぇ、俺と同じ高校、か」
「えっ、それじゃあもしかして先輩ですか!?」


 彼女が驚いたように口元に手をやる。


「まあ、そうなるかな」


 確かに三橋高校に通うのなら、このアパートは使い勝手が良い。家賃も、そこそこに抑えられているのに、最低限の家具はそろっている。
 良物件だが、唯一ネックを上げるのならスーパーが少し遠いくらいだ。


「それじゃあ、よろしくお願いしますね」
「……ああ、よろしく」


 とはいえ、だ。これから彼女と関わることはまずないのではないだろうか?
 どう見たって能倉はリア充グループに所属するような見た目だ。
 俺がそんなことを考えていると、扉の隙間から能倉がちらと部屋の中を見た。
 俺が隠すようにささーと扉を閉めると、能倉ががしっと扉を掴んだ。


「……先輩。さっきからそのちらちらと見えるゴミだらけの部屋は一体なんですか?」


 俺はちらと背後を見てから、扉を閉めようと力をこめる。
 だが、扉に足をはさまれる。


「……強盗に襲われたんだ」
「いや、どう考えても生活用品のゴミばかりじゃないですか。なんでこんなに――」
「仕方ない。春休みだから」
「だらけていたんですね……片付け、したほうがいいですよ」
「気が向いたら、な」


 それはごもっとも。重々承知である。
 けどな――世の中にはお片付けができない人間がいるんだ。
 俺はもう堂々と扉を開ける。美少女との出会いイベントは大失敗に終わったようだからな。
 能倉はじっと部屋を見て、びしびしと指さす。


「ダメですっ! すぐに片づけてください!」
「そ、そこまではっきり言われる筋合いはないぞ!」
「あります!」
「なんだよ!」
「ご、ゴキブリが先輩の部屋で発生して、私の部屋にまで来て……どう責任取ってくれるんですか!」


 ……それは、たしかに、ごもっともな意見だ。
 じっと能倉は俺の部屋を睨みつける。
 ポリポリと頭をかいてから、小さく頷く。


「わかったよ。……今から片付けるから」
「……手伝いましょうか?」
「いや、さすがにそこまでさせるのは――」
「先輩、口ではやるやるいって、絶対やらないタイプでしょう。古い漫画とか見つけたら、掃除そっちのけで読みふけるタイプでしょう?」
「……よくわかったな」
「これは急務なので、すぐに片づけを開始しましょう」


 ゴキブリが出たら大変、ということか。
 俺は別に奴が出ても気にならない。何なら変な感触がしたと思ったら踏みつぶしたこともあるくらいだ。


「……それじゃあ、お願いしてもいいか?」
「はい。任せてください。ゴミ袋とか用意しておいてください。私も準備を整えてきますから」


 そういって、彼女が一度隣の部屋へと向かう。
 ……ていうか、本当に女子高生の一人暮らしなんだな。
 もう少し、セキュリティーの高い家のほうがいいんじゃないか? と勝手ながら思った。





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