最弱賢者の転生者 ~四度目の人生で最強になりました~

木嶋隆太

第7話 規格外の賢者


噴き出した水を見て、全員が目を丸くしている。
俺は自分に水が降りかからないように避難していると、

「……い、今、何をしたんだ?」

試験官が驚いたように声をあげる。

「魔力を込めただけが……何かやり方間違ってたか?」
「こ、こんなこと初めてだな……凄まじいほどの魔力、ということ、なのか……? だ、だとしてもありえない量だぞっ」
「とりあえず……試験突破、でいいんだな」
「あ、ああ」

ほっと胸をなでおろす。
俺の時代とは測定のやり方が違うから、少し不安だった。

「お、おかしいですよ! こんなこと、ありえないです! 何か、魔力水がおかしくなっていたんですよ!」

俺の結果に、異論を唱えたのは職員だ
試験官がちらと彼女を見てから、首を傾げた。

「それなら、もう一度調べるか?」
「そのほうがいいですよ! あんなふうに水が噴き出したことなんて今までなかったんですよ!?」

職員は慌てた様子でそういった。
試験官が嘆息をついてから、新たな水を用意して桶に入れた。
ちら、と試験官が職員を見た。

「もしも、また同じ結果なら、認めろよ」
「……わ、わかっていますよ」

職員は不満げながらも頷いた。
俺が同じように魔力を込めると、再び水が吹きあがった。
まるで間欠泉のようだな。

今度は受け止めてくれる人がいなかったので、結構な高さまで水が浮き上がっている。

俺はびしょびしょになった右手を払いながら、ちらと試験官を見る。
試験官は職員へと視線を向ける。

「結果は同じだな」

試験官の言葉に、職員は悔しそうに顔をゆがめてから頭を下げた。

「……ま、魔力に関しては、認めます。ただ、魔力があるからといって魔法が使えるということではないはずですよ!?」

最後は試験官に対して叫んでいた。

「そう、だな。それじゃあ次の試験に移ろうか。試験道具の起動を行うから少し待っていてくれ」

試験官がそういって、訓練場の隅へと向かう。
そちらには、石の塊が転がっていた。
試験官と職員がその石を弄っている。

俺が黙ってみていると、ヒュアがこちらへとやってきた。

「やっぱり、凄い魔力ですね! あんなの今まで見たことないですよ」
「俺も少し驚いている、あんなことになるんだな」
「凄かったですね! 残りの試験は攻撃魔法の確認と、治癒魔法の確認くらいですね。そっちも問題ないんじゃないですか?」
「どれだけの力量が求められるかは分からない。油断はできないな」

話しを終えると、試験官たちの方から音がした。
見れば、隅にいた石の塊が動き出していた。

高さは三メートルほどだろうか。
石を積み上げた人型のそいつは、ゴーレムだな。
目の部分には魔石が埋め込まれている。その魔石に魔力が吹き込まれたのか、時々光りを放つ。

「次はこのゴーレムだ」
「ゴーレム……? これで何をするんだ?」

そこまで良質なゴーレムではないが、試験用だしそんな強いものは用意しないか。

「魔法の検査といっただろう? このゴーレムに魔法を撃ち込んでくれれば、その威力を測定して地面に書き込んでくれるんだ」
「地面に書き込む?」
「ああ」

なんだその可愛らしさは。
実用性重視のゴーレムしか聞いたことないから、そういった考えはなかったな。

「こいつを破壊できれば、問題なく合格でいいのか?」

俺が言うと、試験官はふっと口元を緩めた。

「まあな。破壊できればそれは間違いなく合格だな」
「け、『賢者』がそんな魔法を使えるわけありませんよ!」

それは分かりやすい。
……ただ、破壊できれば、か。
少し怪しんでしまう。

俺の時代では、的に魔法を当てて破壊するのが試験だった。
ただ、当時俺が冒険者登録を行うときは「的に魔法を当てろ」としか言ってもらえなかったのだ。

破壊しなければ合格できないことを知らずに、何度も試験を受ける羽目になったのだ。
……まあ、破壊できるほど魔法の威力がなかったのも一つの原因ではあったがな。

つまり、試験官の言う「破壊できれば」という言葉。
――実は俺を騙すための嘘という可能性もある。
あのゴーレムを破壊するだけの魔法を用意しないとな。

「魔法というのは一発だけか? それとも何発も撃っていいのか?」
「別に一発というわけではない。何度でも挑戦してもらっても問題ないが……そもそも、魔法は一発しか撃てないだろ? 次の使用まで、チャージの時間が必要なはずだ」

それも見てもらったほうが早いだろう。

「了解だ。それだけ聞ければ、十分だ」

どういうことだ? という顔をしている。
まあ、そこは口で説明するよりも実際に見てもらった方がいいだろう。
魔法の威力をあげる手段はいくつかある。

一つは、単純に日々の積み重ねだ。
魔法は使えば使うだけ威力があがるといわれている。もちろん、上限はあるが、魔力を魔法へ変換する効率があがるのだ。
同じランク帯の魔法でも、慣れている人と初めて使う人では、その威力が随分と違うものだ。

俺はすでに最高威力を出せるほどの熟練度があるので、こちらの強化は無理だ。
だから、ここではもう一つの手段を取らせてもらう。

相手に与えるダメージを増やすにはどうすればいいのかを考えてみればいい。
一度殴るのと二度殴るの。どちらがよりダメージが大きいか考えれば誰でもわかるだろう?

俺は賢者になったことで無詠唱を習得した。無詠唱というのは、魔法を素早く打つだけではなく、単純な威力をあげるためにも用いられる。

火魔法の火力をあげるために、風魔法を同時に放ってみたり。
水と火魔法を合わせて、霧を生み出したり。
そういった応用的な使い方ができるのが、無詠唱の特性だ。

……まあ、今回に関してはそんな頭を使うような使い方はしないのだが。
俺は火魔法をいくつも準備する。
すべて無詠唱で魔法を待機させておく。

とりあえず五つ。これで足りればいいんだが。

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