俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件

木嶋隆太

第35話 俺は幼馴染と映画を見る

なんだかんだ今週の学校も終わった。
部屋で土日の宿題、月曜日の予習をこなしていた俺だったが、扉がノックされた。
片耳にしかさしていなかったイヤホンを取り外し、回転椅子を回す。

「夏希か? 何か用事か?」

扉が開くと、夏希がこちらを見てきた。
……なぜだろう。少し足が震えていた。

「……少しいいですか」
「なんだ?」

俺は夏希をじっと見ていた。ただし、理由はよくわからない。

「明日土曜日に、花さんたちと映画を見に行くという話しになったんですが」

ですが、なんだろうか。
別に俺の許可をとらずとも映画にはどうぞ自由に見に行ってくれればいい。
このあたりの映画館といえば、ショッピングモール内に入っているやつだろう。

そんなことを考えていたのだが、どうやら彼女の提案は違うようだった。
悔しそうな、それこそ今にも泣き出しそうな、そんな感じ。

「見る予定の映画が、2なんです。……だから、1を見ようと思ったんですけど、思ったよりも怖くて……。一緒に見てくれませんか?」

かわいい……。
口をついてでてきそうになったので、俺は慌ててその感情を押さえつけた。

……そして、彼女の親を殺された子供のような涙目混じりの鋭い眼光の意味もようやく理解した。
ホラー映画は見たいが、一人では怖いからと俺に頼みにきた。
ただ、頼む相手が俺ということに、屈辱を覚えているのだろう。

「わかった、今から行く」

とはいえ、夏希と映画を見られるチャンスでもある。
これに参戦しないわけがなかった。






……夏希はホラーが苦手である。ただ、ホラーが嫌いなわけではない。

最近では月額いくらで映画やアニメが見放題、みたいなサービスがわりとどこにでも存在する。
我が家もその一つに登録してあって、テレビで見られるように設定してあった。

それに気づいた夏希が、テレビで見ようとしたのだと思われる形跡が残っている。
ソファの前に置かれたテーブルには、ポテトチップスとジュースが並べられている。
……映画館のポップコーン的感じなんだろう。

リビングにきた俺も、さっそく飲み物を用意していく。
夏希がそそくさと準備を開始したので、俺はスマホを片手にこれから見る予定の映画を調べていた。

すでに上映されてから二週間ほど経っているようで、ネタバレ含めた紹介サイトがいくつもあった。
俺としては別に見に行くつもりはないし、そもそもネタバレに関してまったく気にしないので、色々と調べていく。

……調べてみると、別に1を知らなくても楽しめる内容のようだ。
ホラー映画にありがちな、ホラーの原因だけが1のときと同じだけなようだ。バイオハ○ード的にいうなら、ゾンビが出てくるよ、みたいなその程度の共通点しかないようだ。

「無理に、見なくても大丈夫そうだぞ?」

準備を終え、ソファに着席した夏希。
……場所は俺の隣。
悪い気はしないが、俺としてはホラー映画以上にそっちにドキドキしていた。

「……一応、見ておきたいです」

……真面目だな。
友達に話を合わせるために、という部分があるのだろう。
俺には絶対に出来ない芸当だ。

映画が始まると、すぐに夏希はびくりと体を跳ね上げた。
……そんなにホラー苦手で明日の映画は大丈夫なのだろうか?
気絶して病院に運ばれたら、大変なことになる。

そんなことを考えていたのだが……何かあるたびに体を震えさせる夏希が可愛い。
普段の俺に対しての怒りも今は消えているのか、俺の服の裾を掴んでいる。

何かあると、ぎゅっと肘のあたりが掴まれる。……俺は映画に対してはまったく問題ないが、やはり夏希の反応が怖い。
……可愛すぎてぶっ倒れるかもしれない。
そんなことを思いながら俺は彼女と映画を見た。

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