俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件

木嶋隆太

第23話 俺は一緒に買い物へ行く


昼食をとり終わったあと、家に向かって歩き出そうとしたところで、夏希が声をかけてきた。

「ちょっとスーパーによって食材を買いに行ってきます」

夏希の言葉に、俺は冷蔵庫の中身を思い出す。
……確かに、そろそろ食材が少なくってきていた気がする。

そんじゃ、頑張って……というわけにはいかないだろう。
仮に嫌がられたとしても提案だけはさせてもらう。

「荷物持ちが必要だろ? 手伝うぞ」

ここから近所のスーパーまでそこそこ距離がある。
これまで買い出しといえば、車を使っていたが、今は使えないからな。
まさかタクシーで運ぶのは金かかるしな。

買い物が必要ならば、一人より二人のほうがいいだろう。
そんな思いでの提案だ。

「……それじゃあお願いします」

相変わらずの無表情だ。
……そんだけ俺と一緒なのが嫌なんだろうな。
荷物持ちがいなければ大変だということは分かっているから、それでも俺を受け入れた。そんなところだろう。

夏希とともにスーパーへと向かう。
カートを持ち、レジ用のカゴを掴みスーパー内を移動していく。
俺は夏希の隣を歩きながら、お菓子などを見ていた。

……そろそろお菓子の貯蓄も減っていたはずだ。いくつか仕入れておかないとだな。
意外と今日は安いようだし、いくつか購入しておこうか。

「何か食べたいものとかはありますか?」
「さっき結構食っちまったから、今日はいい。そっちの食べたいものを買っていいぞ」

夏希に迷惑をかけないようにと、ファミレスでつめるように食事をしていた。
ファミレスの食事とは思えないほどに金がかかってしまったが、おかげで今も腹が膨れている。
夕食は軽くお菓子でも食えばいいだろう。

そんなことを考えていると、夏希は頷いた。
……多少は、迷惑をかけずに済んだだろうか。
夏希は食材を色々とかごに入れていく。

……どういう基準で選んでいるのかは分からないが、野菜一つ一つを見比べてカゴに入れている。
たぶん、新鮮かどうかを見極めているんだろう。料理ができる人はそこら辺詳しいな。

俺が知っているのは、賞味期限の記載があるものはなるべく奥からとることくらいだ。
そうすれば、賞味期限が長いものを手に入れられるかもしれないからだ。
……店からすれば迷惑なのかもしれないがな。

二人で歩いていると、ちょうど前にカップルと思われる男女を見つけてしまった。
大学生くらいだろうか? 俺たちよりも少し年上に見える二人は、仲良く腕を組んで買い物をしていた。
俺たちみたいに、黙ったままではなく何やら楽しそうに談笑しながら、だ。

……俺もあのくらい気楽に話せればなぁ。一緒に買い物しているが、俺たちの仲は冷めきっている。
本来ならばこうして隣にいること自体がおかしいのだ。そういう意味では、両親に感謝しないといけないな。
小さくため息をついてから、夏希を見る。

「ちょっとお菓子を見たいんだ。夏希はどうだ?」

少なくとも、昔は夏希がお菓子が好きだったはずだ。
だからこその提案。お菓子によって夏希姫の機嫌を伺おうというわけである。山吹色のお菓子という奴だ。

「そうですね。いくつか食べたいものがありますので、一緒に行きましょうか」

夏希はある一点をじっと見ていた。
それはキャラクターの顔を形どったチョコレートだ。俺も夏希も、小さい頃はこれが好きだった。
どっちかの家に遊びにいくと、だいたいいつもこれがあったはずだ。

……俺は苦いことを思い出していた。
あれは昔のことだった。
二人分用意されていた棒付きチョコレート。それを俺は二つとも開けて一口食べてしまったのだ。

そのときの夏希がどんな反応をしたのかはよく覚えていないが、たぶん怒ったはずだ。
俺はそんな怒られるのもきっと喜んでいたに違いない。幼い頃の男なんてみんなそんなバカばっかりだ。

……可愛い子に意地悪したくなるという心境である。
その理由は簡単だ。
意地悪すれば相手が俺に何かしらのアクションを起こしてくれる。

そのアクションによってコミュニケーションが取れる……幼い男の子なんてその程度にしか考えていない。
その嫌がらせによって、相手が不快に感じ、仲良しからは程遠い存在になっていくことなど考えもせず、な。

たぶんだけど、俺は無意識にこういうことを繰り返して、夏希に嫌われてしまったのだろう。
やり直すなら、今の記憶を持ったまま幼稚園くらいまでさかのぼらないといけないかもしれない。

「食べたいお菓子あるのか?」
「……そうですね。これでいいです」

夏希は一度チョコレートを見てから、近くにあったスナック菓子をとってカゴに入れた。
俺も三つほどポテトチップスをカゴに入れ、再び食品コーナーを歩き、必要なものがないかを確認していった。

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