俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件

木嶋隆太

第22話 私は幼馴染に触れられる


私は鏡の前で服を確認し、おかしな部分がないのを確かめた後、湊と合流した。
湊とこうして外を並んで歩く。いつぶりだろうなぁ……。
湊の服装は非常に整っていて、私は見とれてしまっていた。……湊の私服なんて、ここ最近ほとんど見ていなかった。

私はそんなに服とかを気にするタイプではないので、湊のように自然と着こなせるのは感心していた。
そんなことを思いながら、ファミレスへと歩いていく。
二人並んでというのが、またたまらなく嬉しかった。

私は勝手にこれをデートだと思い込み、精一杯楽しもうと思った。
ファミレスについた。結構人はいたけど、ちょうどレジに人が集まっている。

奥を見てみると、急いで片づけをしている店員の姿が見えた。空いている席は七つ。
入り口で待っている人たちも、おおよそ六グループ程度に見えた。私たちを含めて、ちょうどいいくらい。
これなら、比較的すぐに座れるわね。

湊が受付に苗字を記入している間に、私は入り口に置かれたソファに座った。
湊が座れるように、カバンを置いて待っておく。
名前を書き終えた湊がこちらを見てくる。

せ、席確保しておきました! 私はそんな忠犬のような気持ちとともにカバンを動かした。
しかし、湊の表情は険しい。
え? え? 私何かした!?

そんなことを思っていたが、湊は私の隣に座った。
……席、必要ないとか思っていたのだろうか? そ、それとも単純に私の隣に座りたくない、とか?
そんなことを考えていた時だった。湊の隣の子どもが騒いでいるのが視界に入った。

まあ、子どもだし……とは思っていたけど、わりと湊に何度か頭突きしていた。
ま、まさか湊はこれを読んでいたの!? そりゃあ、私が嫌がらせしているんじゃないかとか思われても仕方ない!

ち、違うの! ただ、湊は何も言ってこない。わざわざ私が弁解の言葉を並べると、まさに自白しているかのよう……。
私はなすすべなく、そこで黙り込むしかなかったのだが。

不意に私のほうに湊が体重を預けてきた。

「え!?」

い、今胸に腕があたった!?

「わ、悪い!」

驚いてそちらを見ると、隣の子どもがちょうど湊のほうに体重を押し付けるように動いたようだった。
そちらを見ると、子どもの腕を軽く叩きながら、母親が湊に謝罪していた。

「もう! 健太! 大人しくしなさい! ……すみません、本当に!」
「き、気にしないでください。健太くんも、気を付けてね……」

湊は普段私には見せないような穏やかな顔で、そう子どもに言っていた。
……優しいんだなぁと思ったのは一瞬。
私……赤の他人以下の対応をされているのかも!? と絶望していた。

湊は特に気にしている様子はなかったが、私は遅れて心臓がバクバクと脈打ち始めた。
……さ、さっき、湊が凄い近かった。
昨日、私はよく覚えていないが湊の裸をみていたのだ。いや、まったくもってそんな余裕はなかったけど、とにかく見ていた。足りない分は私の想像で補正している。

あの意外と引き締まった湊の身体が、私をぎゅっと抱きしめるように――。
多少過剰な補正が入ったのは致し方なし。そんな私の妄想を破るように、店員の声が響いた。

「二名様でおまちの岸辺様ーいらっしゃいますかー」

……岸辺様。私は今、岸辺夏希……。
口元が緩みそうになるのを必死に押さえていると、すでに湊が立ち上がっていた。
遅れないよう私も後を追いかけ、座席に案内される。

足を止めていた湊が私のほうをみて、訊ねた。

「どっち座る?」

……お、女の扱いに慣れている!
こんなことわざわざ聞いてくるなんて……やはり、湊は今彼女がいるのだろうか?
私は椅子とソファを見る。……私ソファのほうがいいんだけど、湊もソファのほうがいいのだろうか?

……少し考えてから、けどやっぱり私はソファにしたいと思ってしまった。

「すみません、奥に座ってもいいですか?」
「気にすんな」

湊はすぐに椅子に座って、除菌ティッシュで手を拭いていた。
私もソファに腰掛けながら、そんな湊を見ていた。


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