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ピエロとサーカス

31話 毒消し復活

 チカはなんとなく想定していた最悪の現状を今維持していた。
 木人とゴブリン3体と話が通じないということであった。
 おそらくタダヒロ君はこのことを想定していなかったのだろう、


 彼の囁き伝染が近くにいるモンスターと人間に効果が限られているということを、
 きっと彼は忘れていたのだ。


 なのでチカは自分がやるべきことを維持して、
 木人とゴブリンがやるべきことを維持してくれることを願って、


 ジェスチャーで指示を出したりしている。


 現在チカたちは【神秘の森】の中を歩き続けている。
 確かに毒汚染が強すぎて、薬草など、毒消し草などが枯れている箇所が見受けられる。


 チカは植物が大好きであった。
 なので、やるべきことは決まっている。


 無事な毒消し地帯を見つけ出し、そこを活性化させて毒消し草をたくさん増殖させるという方法、
 頭の中にはドルイドの魔法が鳴り響いているかのように、頭にイメージがついている。


 木人がくいくいとこっちにこいというジェスチャーをするので、
 ゴブリン3体とチカはそちらに向かっていく。


 そこには無数に生えている毒消し草があった。


 毒消し草と雑草の見分け方は単純で、


 毒消し草には青色の蕾が出ているとされているので、


 すぐにわかる。


 これはドルイドの知識がそうさせる。


 ドルイドの職業になるということは、自然とこの世界の植物の知恵をつけさせるということでもあるのだから、


「木人さん、周りを見ていて、ゴブリンさんたちは周りをガードしておいて、モンスターがきたらガードして、私は今から儀式にはいります。なので無防備ですよろしくです」


 言葉は伝わらなくても、
 気持ちとジェスチャーは伝わり、


 木人とゴブリン3体はうなずいてくれる。


 チカは毒消し草を一本抜き取ると、
 それを口の中に含めて、


 口の中に苦い成分が広がるのがわかるなか、


 呪文のようなものを唱える。
 それがドルイドの植物活性化魔法であった。


 これを3時間ちかくしなくてはならず、


 本当に根気のいる魔法なのだ。


 そのため他のモンスターに邪魔されたらまた一からやり直しなのだ。


 チカはひたすら唱え続けると、


 この儀式の弱点はモンスターを引き寄せる周波をだすこと、


 それが大抵は肉食系のモンスターであり、
 肉食系のモンスターはチカが美味そうに見えてしまう、


 それがドルイド魔法の弱点、
 仲間がいないと活躍できないとさえ言われている。
 とは知識が教えてくれていただけなのだが。


 呪文をひたすら唱え続けて1時間が経過した。
 空は相変わらず晴天であり、
 雲が所々にあるくらいであった。


 そこに巨大なゾンビウルフがやってきたのはすぐに直観で悟る。
 彼らにはもう自我は存在しない、
 この汚染された物質を摂取し続けたせいで自我は崩壊し、
 そこには肉を求める巨大な狼の群れでしかなくなるのだから。


 ゴブリンたちがそれぞれの武器を手に取る。
 ザバンドは長剣のようなもので、テナンドは大きな斧、カナードネは弓矢を、
 木人はチカを植物の蔦で大きな丸い球体にして完璧なるガードをとる。


 ゾンビウルフは全部で5体ほどおり、
 こちらはすごく劣勢だと思われていた。


 チカは知らなかった。そしてきっとタダヒロ君も知らないこと、
 この3体のゴブリンがとんでもなく強かったということであった。


 ザバンドが剣でゾンビウルフの首を両断する様はまるで乱舞を見せられているかのようで、眩しくうつる、


 テナンドの斧はゾンビウルフをまっすぐに両断してしまう、


 カナードネの弓矢はまるで映画で見た拳銃のような弾でゾンビウルフの頭を吹き飛ばす。


 それだけで残り2体となる。


 チカは侮っていた。


「やっぱりすごいや、タダヒロ君の従者であるだけあるね」


 3体のゴブリンたちはこちらを見てにかりと笑って見せる。


 2体のゾンビウルフも片付けると、


 しばらくの間ほっとできる環境になった。


 チカは呪文を唱え続ける。
 噛むことはない、
 これは一度作動させたら、自動で口が動いてくれる。
 ダメージがあればその呪文は途切れてしまいまた一からやり直しということだ。


 自然のありがたみ、自然を破壊する汚染物質に怒りを覚える。
 毒消し草がどれだけ大切な薬草なのか、
 この世界にきて分かった気がする。


 チカはよくロールプレイングゲームをやるのだが、
 そこでもやはり毒消し草はキーカードのようなアイテムでもある。
 序盤の主人公たちを助けてくれる。
 しばらくすると毒解除の魔法を覚えるから、毒消し草は必要なくなるけど、


 オークの村の民にしては死活問題になる。


 なぜならオークたちの中で毒解除の魔法を覚えるのは相当な努力が必要なのだろう、
 よくゲームでオークシャーマンとかというものを聞くけど、


 あの村にはオークシャーマンはいなさそうでもあった。


 呪文を唱え続けていると、タダヒロ君と出会った過去を思い出してしまう、
 引っ込み思案だったチカを彼は誘導してくれた。
 チカが植物と動物が好きだといったら、植物も世話できる動物を世話する部活に入ろうよと誘ってくれた。
 チカにとってそれが初めての異性との接触であり、


 中学生になったら、別々になってしまった。


 高校生になってもタダヒロ君はいない、
 絶望と虐めとの邂逅、


 そうチカは虐めにあっていた。
 死をも覚悟した。


 そんなときに異世界召喚され、勇者じゃないとされると、牢屋に閉じ込められた。
 舌を噛んで自殺しようとした。


 それでも舌を噛むことは激痛になり無理だった。


 そして助けてくれた人、
 それがなんとタダヒロ君であった。


 異性として好きなのか、嫌いなのか、それとも普通なのか、
 それは自分自身ですらわからない、


 けどタダヒロ君が思うモンスターとの共存、
 それはチカも同じ気持ちなのだから。


 最後の呪文を唱えた瞬間。


 それは起きた。


 沢山の毒消し草が増殖し始めると、
 次から次へと青い蕾が生まれ、
 いたるところに毒消し草が増殖していく。


 そして汚染された土は毒消し草が解除してしまい、
 解除した毒消し草は役割をおえて枯れて、
 そこからさらに毒消し草が生えてくる。


 活性化のレベルを超えていた。


 次から次へとぼうぼうと生え続けている。


 そしてようやく終えるころには、
 そこには無数の毒消し草がある。
 それも数万はくだらない数だ。


「やったああああ」


 チカの元気の出る叫び声、
 ゴブリンたちも拍手喝采をしている。
 木人も植物の球体バリアをといてくれる。


 そしてそいつはここに来た。


 巨大なドラゴンゾンビがやってきた。


 ゴブリンたちもそして木人もチカも、
 口をだらりと開けて、
 言葉にならない悲鳴をあげる。
 大きさは一軒屋を2軒合体させた感じであり、
 もっと詳しく言えば車を4台合体させた感じ。


「ぐうううおおおおおおおおおおおおおおおお」


 ドラゴンゾンビの叫び声に、
 チカたちは身震いして、縮あがりそうになりながらも、


「ゴブリンさんたち木人さんたち倒すわよ、こんなのをオークの村にいれたら大変なことになるわ」


 言葉は通じずとも、
 チカが何を言っているのか即座に理解した木人とザバンド、テナンド、カナードネたちは、覚悟を決めたのであった。





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