村人に転生したら、モンスターと会話できるようになってた。村人ライフしながらモンスター図鑑をつくろう!目指せモンスターキング!!

ピエロとサーカス

11話 エリクサ

「かっかっか、すべてを救うだって? お主バカか」
「バカで結構、この世界ならできそうなんです。僕がいた世界でできなかったこと、動物と人間の平和、つまりこの世界ではモンスターと人間の平和です」
「ふむ、そこまで考えているのか、いいじゃろう、わしらの秘密を教えよう、ついてこい」


 僕とゴブリン3体と火炎獅子の家族がきょろきょろしながら、
 木人がひょこひょことまるで妖精のように歩いて行ってしまうのをついていった。


 この木人はプラントの族長と呼ばれている。


 彼が通る道すべてからモンスターが離れていく。
 本当にプラント王というだけあり、
 他のモンスターたちには威厳を示している。


 ひたすら樹海の中を歩き続けると、
 壮大な広間が出てくる。


 そこには沢山の植物が歩いたりしている。
 そう、そこはプラント王国そのものであり、


 木人が武骨な右腕を利用して、黄色くなった草を持ち上げる。
 どうやら寿命を全うした草のようだ。


 族長はこちらに草を差し出し。
 次に首をふって、テナンドに差し出す。


「それを食ってみろ」
「えー草なんておいしくないよ」
「いいから食ってみろ」
「もうわかったよ」


 ゴブリンであり少しマッチョであり、
 武闘派のテナンドはもそりと草をかむ。 
 次の瞬間、信じられないことが起きる。


 この前火炎獅子と取っ組み合った時に怪我をした場所があるのだが、
 そこがあっという間に治る。
 次に食べ過ぎていてお腹が膨れていた場所も筋肉に代わる。


「これはエリクサなんじゃ」


 その時僕は頭の中でゲーム用語をがさっと思い出そうとしていた。
 ゲーム用語の中には、エリクサというものがある。
 エリクサはどのような怪我も病気も直してしまう人間にとって最高な薬となるとされている。


「ここは草草の墓場なんじゃ、長く生きた草たちに生命が宿る。しかしその生命は無限に宿り続ける。その結果、動けるようになり、この墓場にやってくる。そしてそこで寿命を全うすることによりエリクサができる。これが我らプラント族の秘密。これをヤバースィン王国のものどもは必至で探している。何がなんでもあのような人間どもから守らねばならない宝なのじゃ」


「なるほど」


「ということでこれをつかってヤバースィン王国をなんとかするなら協力しよう」
「ですけどエリクサを使うとは」


「なぜヤバースィン王国がエリクサを求め続けているのかそれを考えてみろ」


「そういうことですね、王家か誰かが病気だと」
「その通りじゃ、これをちらつかせて、おぬしの最高な交易をしろというのじゃ、わしらプラント族は協力しよう」


 すると火炎獅子たちもうなずき。


「おいらたちも協力しよう」


「すごい助かります。一度山賊の拠点まで戻ろうと思います、火炎獅子家族たちもきますね?」


「もちろんじゃ、彼らには非常に迷惑をかけたからのう」
「わしもいこう」


「ですがあなたは」


「わしの息子が1体だけだと思うか?」


 それには苦笑を隠せず。


「たくさんの木人がこの村を徘徊しており、そこにわしはいつでも魂を移動することができる。安心しろ」


「では行きましょう」


【おう】




―――山賊の拠点―――


 そこは赤いトサカ山賊の拠点である。


 あのロリ娘のジェシさんは火炎獅子と木人にびびって逃げていったが、
 頭目であるテルルミさん、テルルミという名前だ。
 彼女は目をぱちくりして、狭い小屋に全員を入れてくれた。
 ぎゅうぎゅうになりながら、


 それぞれが座っている中。


 テルルミさんは赤いトサカのシンボルマークをはずすと、


「すごい美人じゃのう」


 僕にしか理解できない声で木人の爺さんが言うのだ。


「まずはいろいろと事情がおわりでしょうが、僕が考えた絵図を聞いてもらえませんか?」


 それからみんなは空想にふけるように、僕の言葉を聞いていた。


 まずゴブリンの畑地帯でたくさんの食料を作る→
 スライムの元をもっと増やして畑地区を増やす→
 鉱山で食べられる鉱石を採集し→
 プラントでエリクサを集め→
 火炎獅子から取れるところだけ毛皮をとり→
 ジムラ村ですべてをまとめて売る→
 ジムラ村からすべての拠点に食べ物や日用品が配られていく交通網を整備する→
 エリクサのうわさを聞いたヤバースィン王国がジムラ村に接触してくるところから勝負がはじまると。




「完璧に成功する補償はありません、もしかしたら交通整備のときに問題がでるかもしれませんし、これまで現れなかったモンスターの脅威にさらされるかもしれません」


「ですが新しいモンスターとの遭遇は新しいチャンスなのです。よく考えてみてください、ゴブリンは畑、スライムは肥料、火炎獅子は特殊毛皮、プラントはエリクサ、山賊団は鉱石。まだまだでてくるかもしれません、ヤバースィン王国も交易の対象にできるかもしれません」


「その考えわしは素晴らしいと思うぞい、まぁ失敗しそうになったらわしらプラント族が応援するから安心せい」


「わたしたち山賊団は力を貸そう」


 なぜかモンスターと人間の言葉は通じ合っていないはずなのに、
 不思議と意味はつながっていた。


「おいらたちもだ」
「僕たちもだよ、ゴブリンキングはあとで聞いたほうがいいよ」


「なぁこういうのって組織名ってあったほうがいいんじゃないの?」


 と不思議なことを言うのはカヅだった。


 火炎獅子の息子は微笑ましい吠え越えをあげた。


「囁きの仲間たち」


 僕のなんとなくのつぶやきだった。
 そこにいる人間もモンスターたちも不思議とその言葉を聞いていてくれた。


 これが僕たちの仲間のシンボルマークになるのだと、
 この時僕は納得し、


 この呟きが、
 この名前の伝説の始まりだった。





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