魔物の大氾濫

　ギムウェルム国付近にある森の魔素の異常現象の元である魔物を討伐する為に、俺達はその目的地へと向かっていた。


　俺は朝ドーピングをした事によりＭＰがほぼなかったので、中級魔力回復薬を３本飲む。
　これで、ＭＰは全回復した。


　そして２０分程走り目的地近くへと到着した。


「これは……」


　目には無残な光景が広がっており、俺達は言葉を失っていた。


「ぅぅ………」


「い、いでぇょぉ……」


　それは１００人はいるであろう怪我をした冒険者達。
　腕を失った者や、足を失った者。
　腹を切り裂かれ大量に血を流している者や、口から吐血している者。


　それらの怪我人を数名の冒険者達が回復魔法で治してはいるが圧倒的に人手が足りていない状況だった。


「リアラ。すまないが、予定変更だ。ここで怪我人の治療を頼む」


「うん……でも、アラン……絶対に帰って来てね……」


　リアラはそう言うと背後から優しく俺を抱きしめる。
　これって死亡フラグだよな……


「当たり前だろ？　俺はもう行くから。後、ハイこれっ」


　俺は手元に中級魔力回復薬を一本だけ残し、その他の回復薬を全てリアラに手渡した。


「絶対に帰って来るから。それに、俺が強い事は知っているだろ？」


「う、うん……」


　それでもリアラは不安みたいだな。


「それじゃリアラ、行ってきます」


　俺はそう告げると、リアラの頬にキスをした。


「………っ！　い、行ってらっしゃい……」


　これで少しはリアラの不安は取り除けたかな？
　ひとまず、急がないとな。








　☆








　──そして俺は目的地である森へと到着した。
　そこには大勢の冒険者達が魔物と必死に戦っていた。


「はぁ……はぁ……うっ……」


　目の前に深手を負った女性冒険者がおり、俺は急いで駆け付けた。


「おい、大丈夫か？　今、回復魔法を掛けてやるからな」


　そう告げた俺は回復魔法を使い、その女性冒険者の傷を癒していく。


「よし。傷は塞がったな。これでもう大丈夫だから」


「あ……ありがとう……」


　女性冒険者は何故か顔を赤らめながらもお礼を言った。


「いえいえ。それじゃ俺は忙いでるから、もう行くね。気を付けるんだよ」


「え、あ、あのっ！　………行っちゃった……」


　何か言っていたけど、今はあまり時間がない。
　あの人みたいな犠牲者を出さない為にも、一刻も早く異常現象の元凶である魔物を探し倒さないといけないしな。




　それから俺は魔力感知を発動し、近くにいる魔物をひたすら倒していた。
　出会った魔物は多種多様だが、今の俺の強さならほぼ一撃で倒せていた。


　魔力感知で魔物を見つけ倒す。
　そしてまた魔力感知で魔物を見つけ倒す。


　それを暫く繰り返していると、遠くから地響きのような音が聞こえたので、俺はそこへ向かう事にした。




（なんだ……この数……多すぎだろ……）




　森を抜け、だだっ広い草原のような場所へ出ると、目の前には魔物の大群が森へと向かって来ていたのだ。


　恐らく５０００……
　いや、それ以上の魔物がいるかもなこれは。
　これは、リアラを残して来ておいて正解だったな。


　それに、森の中の魔物であれだけの負傷者が出ているのに、この数が森へ行くとさすがに不味い。




（これは、覚悟を決めないとな……）


　目を瞑り心を落ち着かせる。
　そして覚悟を決めた俺は、ゆっくりと目を開けた。




「──それじゃ、行きますかっ！」


　こうして俺は、魔物の大群へと駆け出した。