薬師無双〜ドーピングで異世界を楽しむ〜

蜂須賀 大河

夕焼け

 ──ギムウェルム国王城の書斎。


「陛下、ギルドからの報告書です」


「うむ。ご苦労」


 家臣から、国の紋章印が押された茶封筒を受け取ったギムレット国王は、家臣を退室させ、一人書斎で報告書に目を通していた。


 ギルドからの報告書には、謎の男の正体に関する何人かのリストが挙げられており、中でもこのアランと言う男の可能性が高いと書かれていた。


 ギムレット国王はこの報告書に記載されていた人物の情報に一通り目を通したが、国王もまたアランと言う男が気掛かりでいた。
 娘を助けた恩人とはまた別に、国王個人としても興味があったのだ。


「──Cランク冒険者三名を子供扱いし、Sランク冒険者並の実力を持つ旅人か。万が一白ローブの男でなくとも、是非会ってみたいものだな」










 ☆








 その頃俺達は午前中の訓練を済ませ昼食を食べていた。


「──それにしても、後二日でこの国とも暫くはお別れか」


「そうね……そう言えば、次の行き先はどこへ行く予定なの?」


 実はまだ決めてないんだよなぁ。


「リアラはどこか行きたい場所はあるか?」


「なら、【リグーレス国】はどうかな?」


「リグーレス国?」


「やっぱり知らないのね。まぁ、いいわ。リグーレス国は、人間国の三大国家の一つで、職人の国とも呼ばれているの。リグーレスに行けば、アランの装備も整うんじゃないかな?」


 職人の国か。
 確かにそこに行けば良い装備が見つかりそうだな。


「そうなんだ。そろそろ装備も揃えたかったし。んじゃ次の目的地はリグーレス国にしようか」


 でも手持ちの金が少し心配だな。
 そろそろ金も稼がないとな。


 


 ──次の予定を決め、昼食を食べ終えた俺達は、その後王都を散策していた。
 滞在時間も残り僅かだし、少しでもリアラと二人でゆっくりしておきたいしな。


 それからは、露店で色々見たり屋台でクレイプを買い、王都の景色を一望出来る展望公園のベンチで食べたりしながら、のんびりと時間を過ごしていた。


 因みにクレイプとはクレープの事だ。
 どうやらこの世界にもクレープは存在していたらしい。




「──ねぇ、アラン?」


「ん?」


「んーん。呼んでみただけっ」


「なんだそれっ」


 日が暮れ始めた頃、展望公園からは紅く染まった夕陽を一望しながら、俺達はそんなやり取りをしていた。


 夕陽に眺めながら「キレイ…」っと呟くリアラは、つい見惚れる程とても美しかった。


「リアラ?」


「なに? 呼んだだけ?」


「いや。大好きだよ」


「ぇえ!? う…ぅん……わ、私も……大好き……」


 照れているリアラを俺は抱き寄せキスをした。

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