薬師無双〜ドーピングで異世界を楽しむ〜

蜂須賀 大河

謎の男の正体

 俺達は今、ギルドマスターの私室に呼ばれていた。


「改めて、うちのギルドの者が迷惑を掛けて申し訳なかった」


 ギルドマスターであるウォーレンさんは深々と頭を下げた。


「いえ、大丈夫ですよ。お気になさらず」


「ああ、助かるよ。それでなんだが、お前達の名前は?」


「俺はアランと言います」


「あ、え、えっと、私はリアラと言います」


 リアラは少し緊張しているが、俺達は自己紹介をした。


「アランとリアラだな。それじゃ早速、本題に入らせて貰う。二人共、冒険者にならないか?」


 やはり、勧誘か。


「いえ、俺達は旅をしています。なので、冒険者になる気はないんですよ」


 きっぱりと俺は断りを告げる。


 理由としては、冒険者になると半年に1回は最低でもクエストを受けないと冒険者カードを剥奪される。
 更にはB級以上になると、指名依頼や、緊急クエストなど率先して駆り出されるので、旅をしている俺達にとっては以外と厳しいのだ。


「そうか。旅をしているなら、仕方ないか。本当はお前達みたいな強者がいてくれると心強いんだがな」


 ウォーレンさんはハァっとため息を吐きながらそう答えた。


「すみません。でもなんで、俺達を誘ったのですか? てっきり俺だけ勧誘されるかと思ったのですが」


「そんなの見れば分かるさ。そのお嬢ちゃんが強いって事くらい。それに、それ聖なる法衣だろ? そんな高価な装備している一般人なんか普通いないだろう」


 うん。確かに。


「それに、アランが倒したあいつ等だがな。あれでもCランク冒険者なんだよ。それをまるで子供扱いしたお前は、Aランク、いやSランク冒険者と同等の実力があると俺は見ている。そんな人材を逃したくなくてな。本当残念だ」


 Sランク冒険者の強さってどんなものなのだろうか?
 この人もギルドマスターだし、元Sランク冒険者とかなのだろうか?
 少し鑑定してみるか。




 名前:ウォーレン・バーグ 男 44歳
 職業:拳王Lv23
 HP:1340/1340
 MP:580/580


 物攻:350
 物防:315
 魔攻:245
 魔防:270
 敏捷:460


 <スキル>
 格闘術10 体術10 見切り8 気配察知6 隠密5 魔力操作4 魔力感知4 魔闘気 鬼門解放 威圧


 <パッシブ>
 身体強化(大)
 HP増加(大)
 敏捷増加(大)


 <魔法>
 豪風魔法5


 <称号>
 ギルドマスター 拳を極めし者 元Sランク冒険者








 ………強いな。
 これがSランク冒険者の実力か。
 今の俺じゃ絶対に勝てない相手だ。


「冒険者の件は気が向いたらいつでも言ってくれ。それとは別にもう一つ話しがある」


「なんですか?」


「夜中に、王城に白いローブを着た奴がティアナ姫の部屋に侵入してな。そいつはティアナ姫の原因不明と言われる病を治し、姿を消したみたいなんだよ」


 …………。


「そうですか」


「お前何か知らないか?」


「いえ……知りませんけど、何故俺に?」


「ただの勘だな」


 勘鋭過ぎるだろ……


「まぁ、知らないならいい。今日は、すまなかったな時間を取らせて。後、お前達を襲った冒険者の奴等には、ちゃんと厳しい処分を下しておくからな」


「はい、ありがとうございます。それでは俺達はこれで失礼しますね」


 俺達はギルドマスターに別れの言葉を告げ、そのままギルドを後にした。


「──アランか。恐らくあいつが白のローブの男で間違いないだろうな。それにしても、ただの旅人とは思えないし。何者なんだ」


 アラン達が退室した後、ギルドマスターの私室からはそんな言葉が囁かれていた。










 ☆








「ねぇ、ギルドマスターの言っていた白のローブってまさかとは思うけど、アランの事なの?」


 一応この国を出るまでは内緒にしておきたかったんだけど仕方ないか。


「ああ。俺だよ」


「………なんで言ってくれなかったの?」


「身元がバレると旅に支障が出ると思って、この国を出るまではリアラにも内緒にしようと思ってたんだ。ごめん」


 俺は素直にリアラに謝った。


「そっか………。なら、これからは隠し事はもうしないって誓って。今回はそれで許してあげる」


「これからはリアラに絶対隠し事はしないって誓うよ」


「約束ねっ!」


「ああ、約束だ」


 リアラの機嫌は直り、これで一安心だな。


「それじゃ気を取り直して、この前リアラが二人で行きたかったって言うケーキ屋さんにでも行こっか」


「うんっ!」


 その後ケーキ屋へと着いた俺達は、美味しいケーキやクッキーなどを食べ、さっきとは打って変わり、幸せなひと時を過ごした。

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