薬師無双〜ドーピングで異世界を楽しむ〜

蜂須賀 大河

旅の仲間〜リアラ〜

 むにゅっ


「………ん」


(なんだろう。
 この妙に柔らかくて、あったかいのは。
 なんか、落ち着くな)




 むにむにっ


「……ぁ……んっ」


 あ………んんんん!?
 俺は、そこで意識が覚醒した。
 横に目をやると、そこには別々の部屋で寝ていた筈のリアラが、何故か俺の腕に抱きついておりスヤスヤと猫のように丸まり眠っていたのだ。


 抱きつかれて動けない為、首を回し辺りを見渡すが、やはり俺が寝ていた部屋だ。
 俺が寝惚けて、リアラの部屋に行った訳では無かったのでひとまず安心だ。




(とりあえず……リアラが目を覚ます前に、ベッドから脱出しなくちゃな)


 俺は、抱きつかれている腕をリアラが起きないよう慎重に、振り解こうとしたその時、リアラはゆっくりと目を覚ました。




「………………。」


 リアラの意識はまだ覚醒しておらず、未だ腕に抱きついており、ポーッとこちらを見ていた。


「おはよう、リアラ」


 俺はどうしていいか分からず、この状況をなんとか打破しようと寝起きの頭をフル回転させ、瞬時に答えを導き出した結果、精一杯のモーニングスマイルをリアラに放つ。


「………っ! きゃあああ! なっ、なんで、アランが私のベッドいるのよ!」


 意識がだんだんと戻ったリアラは、抱きついていた腕を振り解き、俺をベッドの外へと突き飛ばした。
 これは、俺が悪いのか……?


「イテテ……周りを見てくれリアラ。ここは俺が借りてた部屋だよ」


 突き飛ばされた俺は立ち上がり、リアラにそう告げると、リアラは部屋を見渡していた。


「ほんとだ………あっ、そういえば……」


 すると、突然リアラは俺に頭を下げ謝って来た。


「ごめんなさい! 昨日……その……一人でいるのが、寂しくて……」


 なるほど。
 あんな事があった後だもんな。仕方ないよな。


「そういうことか。なら、仕方ないよな。まぁ、その分俺はいい思いが出来たけどな!」


「……っ! アランのえっち!」


 そう言うとリアラは顔を真っ赤に染め、恥ずかしさの余り布団を被った。


 うん。
 めっちゃ可愛い。




 ☆




 そして俺は今、リアラの作った朝食を食べていた。


「美味い! リアラは、将来いいお嫁さんになれるよ」


「おっ、およ、お嫁さん!? ………そんな、まだ私達……付き合ってもいないのに……」


 後半は良く聞こえなかったが、リアラは褒められて嬉しそうだし、まぁいっか。


 食事を食べ終え一息付いていたとこ、コンコンっとノックの音が聞こえたので、リアラは玄関へと向かった。
 そこには、村長が立っていたので一旦家の中へと招き入れた。
 なんでも、俺に話しがあるみたいだ。




「まずは、リアラを救って頂き、本当にありがとう」


 村長は深々と頭を下げ、改めて感謝をされた。


「それにリアラよ。父の件じゃが……本当に気の毒じゃった……」


「いえ……まだやっぱり辛いですけど、昔父に言われた事があるんです。母が亡くなった時、空からいつも見守ってくれてるって。泣いてばかりいると、母が悲しむから笑顔でいようって」


「そうじゃったか……」


「はい。なので、父と母を悲しませたくないから……笑顔で前に進むって決めましたから。もう、大丈夫ですよ」


 リアラも前に進めてるみたいだな。
 これなら、俺も安心して旅に出れそうだ。


「そうか、そうか。何か困った事があれば、何時でも儂に相談するんじゃぞ」


「はい、ありがとうございます」




 そして村長は帰り、家には俺とリアラの二人になった。
 俺は、もうリアラは大丈夫だと思ったので、今後の話しを切り出す事にした。


「リアラ。今後の話しなんだけど、明日には村を出ようと思うんだ」


「え?」


「前に、旅をしてるって言ったろ? 俺は、この世界の色んな場所を行って、自分の目で確かめてみたいんだ」


「……そっか」


 リアラはそう告げると、それ以降は何も言わずただキッチンへと向かい、朝食の片付けをしだした。






 ──リアラに村を出る話しを告げた俺は、その後鍛錬をしていた。
 村の中を一時間程走り、スキルレベルを上げる為の鍛錬をした。
 昼の鍛錬を終え、俺はリアラの家へと帰り昼食を食べるが、リアラはあの話し以降まるで元気がないのだ。
 話し掛けても「うん」とか「そう」などの返事しか返ってこないので、まるで会話が続かなかった。


 その後もリアラは元気がなく、夕食の時も無言でただ黙々と食べていた。
 夕食後、温泉に入りに行こうと誘うも「私は後で行く」と断られた。
 俺そろそろ泣きそう……


 温泉で今日一日の疲れをとり、家に戻るが家にはリアラは居なかった。
 恐らく、温泉に行ったのだろう。
 俺は何故か、完全にリアラの機嫌を損ねたみたいだ。


(はぁ……俺なんかしたかな……)




 部屋へと戻った俺は、薬学創造魔法で魔力の木の実(M)を六個創造し、食べる。
 MPは41増え、そして魔力操作を始める。
 魔力操作にもかなり慣れ、今では魔力を自由自在に形を変える事も出来るようになった。
 そこで、俺は魔力を腕に纏えるのでは? と思い、早速放出した魔力を右腕に纏ってみた。


 すると、俺の右腕は青白い魔力が纏い、魔力を纏う事に成功したのだ。
 そしてステータスを確認してみると新たなスキルを獲得していた。


 【魔闘気】
 魔力を纏い、HPとMP以外の全ステータスが50上昇する。
 但し発動中は、1秒毎にMP1消費する。




 おお!? 全ステータス50はヤバいな……
 俺の今のMPは742だから、12分程か。
 これは、思わぬ収穫だな!


「さてと、そろそろ寝ようかな」


 回復魔法で残りのMPを使い切ろうと思った時、コンコンっとノックが聞こえ、リアラが部屋へとやってきた。


「……アラン、話しがあるの」


「ん、どうした?」


 俺は内心、怒られるんだろなぁって思っていた。
 だって、今日機嫌悪かったし……
 でも、返って来た言葉は予想と違っていた。


「私も……アランと一緒に旅に出たい……それに……もう村の人や村長にも話した……」


 まさかの言葉に俺は戸惑った。
 もしかして、今日機嫌が悪かったのではなく、これを考えていたせいなのだろうか?


「でも、外には魔物もいるし、この前みたいな盗賊だっているんだ。そんな危険な旅に連れて行く事は出来ない」


 そう俺は断る。


「なら、私強くなるからっ……盗賊だって倒せるくらい、強くなるからっ! ……だからっ、私を一人にしないで……ぅぅっ……」


 リアラは泣きだし、俺に抱きついてきた。
 ここまで言われたら、連れて行くしかないよな……
 仕方ないか……。


「はぁ……分かったよ。その代わり、旅の間は俺から絶対に離れるんじゃないぞ?」


「ぅん……ありがとう……ぅぅっ」


「ほら、だからもう泣くなよ」


 俺は抱きついているリアラの頭を撫でる。


「それじゃ、明日に備えて今日はもう寝よう。寂しいなら、今日も一緒に寝るか?」


 俺は冗談のつもりで言ってみた。
 すると、思わぬ返事が返って来た。


「…………うん」


 リアラは、顔を真っ赤にしながらそう返事をしたのだ。
 くそっ!
 可愛すぎるだろっ!
 てか、冗談のつもりだったんだけど……
 棚から牡丹餅とはこのような事なのだろう。




 その後ベットに俺とリアラは潜り、寝る事にした。
 リアラは、俺の背中に張りついており、スゥスゥと寝息を立てていた。


(背中に……なんとも言えない感触が……。
 くそっ、これじゃ寝れねえ)


 リアラの豊満な胸が俺の背中に、ぐにぐにと押し当たっており、俺は眠れずにいた。
 このままじゃ、理性を保てないと思った俺は、回復魔法をそっと使い、全てのMPを消費し、魔力枯渇により理性諸共シャットアウトさせたのであった。


………………


……………


…………


………


……




(……………アランの、ばか)

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