幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

最終決戦・カリーナ~前編~

 後ろに立っている神は手を出さないのか、後方腕組神となっている。

「さぁ、勇者様。楽しく、殺し合いましょ~!!」

 そう言って、教皇は左右の手に淡く白色に輝く光を出現させた。
 教皇は光を出現させた手を空中で円を描くように両手を動かした。
 その光は空中に留まり、円の完成と共に教皇の背中側に移動した。

 それを見たカリーナは、『未来予知』を行いその光の未来を視た。
 『未来予知』で視たその光景は、あまりにも酷いものだった。
 一瞬にして、カリーナたちを真っ二つに切り裂く光がその円の中心から放たれていたのだ。

「全員!! 上に飛んで!!」

 カリーナの指示が飛ぶ一瞬前にその光が放たれた。
 全員ギリギリのところでその光を避けることが出来た。

「ふむ、『未来予知』ですか? それは、昔の勇者の力の筈、何故?」
「そんな事、どうでもいいでしょう! キモ教皇! ノルメ、お願い!!」
「任せて! 私の進化した『七つの光』をくらいなさい!!」

 ノルメが杖を突き立てると、杖の先端からそれぞれに、六つの光が降り注いだ。
 教皇にも降り注ぐその光を避けようとするが、その光は追尾する。避けることが出来ず、その光は教皇に降り注いだ。

「ん!? 体の動きが……面倒くさい能力だね……!!」

 教皇は握りこぶしをにぎにぎした後、ノルメに向かって突進した。
 身体能力が下がっているのにも関わらず、教皇の動きは音を置き去りにするほどの速さだった。
 そう簡単に、ノルメの元に行かせるはずもない。エクレンがノルメの前に素早く移動して盾を構え、ツバキが幾つもの複合魔法を教皇に放った。
 放たれた魔法に行く手を阻まれて、少しイラついた表情を見せた教皇に更に追い打ちを掛ける。

「『拡散ショットガン』『追尾ホーミング』」

 レイさんによって放たれた一本の矢は、そのスキルによって四つに増え更に、逃げる教皇を追尾した。
 放たれた矢に背を向けて逃げる教皇だが、逃げるのを止めて振り返った。
 その直後、教皇を追尾していた四本の矢が叩き落された。

「……は? お前、何しやがった!?!?」
「何って、簡単なことだよ。一本目の矢を掴んで、その矢で他の矢を叩き落しただけだよ。え、まさか、見えてなかった? あちゃ~、ごめんごめん、今度は手加減してあげるよ」
「レイ! そんな挑発に乗るな!!」

 エクレンがレイに声を掛けるが、性別変化したレイはそんな注意に聞く耳を持たなかった。
 挑発に乗ったレイが矢に手を掛けようとしたとき、レイに冷静さを取り戻させることが起きた。
 カリーナが、レイの頭をぶん殴ったのだ。

「この馬鹿!! 今すぐに、冷静さを取り戻しなさい!! この馬鹿!!!」
「ってー! 分かったよ。済まなかった」
「あんたには、この後、見せ場があるんだから、そっちも準備しててよね」
「おう!」

 勇者であるカリーナのその姿を見た教皇は神に祈るかのような姿勢でカリーナを見ていた。

「あぁ、流石我らが勇者。仲間のピンチに颯爽と駆け寄るその姿。私は、感服致しました!!」

 そう言って、涙ぐんで祈りを捧げている。
 その隙をついて、カリーナは勇者の剣の力を発動させて教皇に斬り掛かった。
 勇者の剣の能力。それは、傷を付けた者の力を自分の力に変える能力。
 最後に使ったときから一年以上も使っていなかったその能力は、昔、魔物を倒すときに使ったときの数倍、数十倍に膨れ上がっていた。

「勇者協会なんて、私たちにとって、邪魔なだけ。死んで!!」

 振り下ろされた勇者の剣は、最後まで振り下ろすことが出来なかった。
 教皇が片手で受け止めたのだ。

「そんな、汚らわしい魔物の力を上乗せさせちゃ駄目だよ。魔物は敵。上乗せさせるんだったら、エルフか獣人にしないと……私には効きませんよ」

 そう言って、教皇はカリーナのお腹を蹴り飛ばした。
 蹴り飛ばされたカリーナはエクレンによって受け止められた。

「ノルメ!」
「うん!」

 エクレンの号令で、ノルメはカリーナに回復魔法を掛けた。

「大丈夫!?」
「う、うん。ありがとう、二人とも、もう大丈夫」

 カリーナはフラフラになりながら立ち上がった。
 その姿を見た教皇は、惚けた表情で両手で両腕を掴んで震えていた。

「あぁ、勇者様が倒れそうな、あの姿、興奮します~!!!!!」

 教皇はさっきよりも素早い動きで、フラフラの状態のカリーナに攻撃を開始した。

「ほらほらほら、勇者様!! そんなんで、私に勝てると思っているんですか!?!?! まだまだ、行きますよ!!!!」

 教皇はカリーナを一方的に殴り、カリーナは一方的に殴られる。
 その一方的な光景を見た四人は何としてでもカリーナを助けるべく、各々の攻撃を教皇に放った。
 エクレンは盾の後ろに隠していた剣を取り出し、雷を纏った斬撃を飛ばす。ツバキは、二つの魔法を複合した四つの複合魔法を放ち、ノルメは教皇の物理攻撃、身体能力、魔力攻撃を下げられるだけ下げた。

 だが、それでも教皇は止まらない。

「ほら!!! 最後!!!!!!!!!」

 教皇は最後の一撃を思いっきり拳を引いてカリーナの顔面目掛けて振り下ろした。
 その攻撃をもろに喰らったカリーナは地面を三度跳ねて数十メートル滑って止まった。
 ノルメは急いでカリーナの元に向かい、続々とみんなもカリーナの側に駆け寄った。

「カリーナ!!! 今、回復魔法掛けるから!!!」

 ノルメが回復魔法を掛けようとしたとき、カリーナがノルメの腕を掴んだ。

「……まっ、て……わ、たし、に、まか……せて……」
「え?」
「カリーナ? どうした?」

 カリーナのおかしな様子に、駆け寄ってきたエクレンたちも驚きの表情を浮かべていた。

「あぁ!!! 流石勇者様!?!?! これぞ、我らが勇者様です!! 殺してしまうのが、本当に惜しい……私の部屋に薬で固めて飾りましょう。えぇ、そうです、それが良い……。さぁ、一緒に行きましょう。勇者さm……? あれ……?」

 カリーナは、何も言わずにエクレンの前に立った。
 次の瞬間、カリーナがその場から消え、気付いた時には教皇の後ろに立っていた。

「『リベンジ』おぼえ、て……いる……だろ……?」

 首を刎ねられて教皇は消えゆく意識の中で昔の勇者の一人を思い出していた。

(あいつのか……!!!!)

 そして、カリーナはその場に倒れ込んだ。

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