幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

出会いと喧嘩②

 個室に入った僕たちは、エクレンと謎の少女の対面に座り、エクレンの怒っている理由を聞いた。

「私が起こっている理由の話す前に、一つ聞きたい、エルフの森を焼いたのは君たちか?」
「え? 違うけど」

 エルフの森を焼いたのは僕たちではなく、《ヘルヘイム》だ。
 それなのに、なんで、僕たちが燃やしたと思うんだ?
 そんな疑問が浮かんだが、その後にエクレンが口にした言葉で理解した。

「もう、しらばっくれなくていい。君たちは、魔王と一緒に旅をしているようじゃないか。そして、エルフの森を焼いたのは魔王という話じゃないか。さぁ、これをどう説明してもらおうか」

 説明したところでエクレンは信じてくれるのか分からないが、仲直りをしないとこれからの戦いに支障をきたす。ならば、ここで、エクレンが納得するまで説明するのが一番だろう。
 説明を開始しようとしたとき、レイさんの指が僕の唇を触れた。
 レイさんの方を見ると、仮面を脱いだレイさんが唇に指を当ててウインクをしてきた。
 そして、僕の代わりにレイさんが説明を始めた。

「初めまして、エクレン君。私はエルフ族の聖弓士レイよ、よろしくね」
「え、エルフ族……」

 今まで、仮面を被って顔を隠していた、今回森を燃やされた当事者が現れた、それだけで、エクレンは動揺していた。

「な、なんで、エルフ族がこんな奴らと一緒にいるんですか!!!」

 エクレンは声を荒げて、立ち上がって僕たちのことを指さしてきた。
 それを冷静な態度で腕を降ろさせて、話を続けた。

「まず、前提を話すわね。今回、エルフの森を焼いた魔王と今まで、この子たちと一緒に戦ってくれた魔王は別人よ」
「え、べ、別人? う、嘘だ、そんなはずない! 私は聞いたんだ! この耳できちんと聞いたんだ!」
「聞いた? 私は見たのよ。聞くのと見るの、どっちが信頼できる?」
「そ、それは……」
「そうよね、『聞く』じゃ、どんな捏造をされた情報を聞いているか分からないもの、『見た』ほうが信頼できるのは当たり前よね。……それじゃ、これで前提条件は理解してもらえたかしら?」

 レイさんの言葉に、エクレンは小さく首を縦に振った。
 そして、レイさんは説明を始めた。

 数分後、説明を聞き終えたエクレンは、物凄く申し訳なさそうな顔で僕たちに謝ってきた。

「本当にごめんなさい! 私が聞いた話を鵜吞みにしたのが行けなかった。これからは、どんな情報でも疑う事から始める」

 そして、僕たちは仲直りが出来た。
 という事で、エクレンの隣に座っているフードをした女の子の紹介をして欲しいところだ。

「あぁ、そう言えば、紹介していませんでしたね。彼女は、カンガルーの獣人族《イオリ ツバキ》です。『聖魔士』です」
「そうなんだ、聖魔士・・・え?」
「ちょっと、エクレン!? ど、どういうこと!?!? この子が聖魔士!?!?」

 カリーナも掴みかかる勢いでエクレンに迫っていた。
 いつかの遺跡の探索で見つけた壁画にどの種族がどの役職なのかが描かれていた。
 その壁画を思い出すと、確かに、杖を持った獣人族が描かれていた。
 だけど、こんなに幼い子だとは思わなかった。

「さ、さぁ、ツバキ、みんなに挨拶して」

 エクレンに促されてツバキはフードを取って、素顔を見せて挨拶した。

「聖魔士・ツバキ、よろしく」

 紫色の長い髪の毛を揺らしながら首をコテンとした。
 その仕草に僕を含め、その場にいた全員の心臓を撃ち抜いた。

「「「「「かわいい!」」」」」

 女性たちがツバキの周りを囲んでよしよししている中、僕はとある疑問が浮かんだ。

「なぁ、エクレン。獣人族って魔力が無いんじゃなかったっけ?」
「基本的にはそうだよ。ただ、聖魔士だけは別らしい。魔力もあって身体能力もほかの獣人族と変わらないらしいよ。まだ、ツバキの戦いを見た事ないから本当か分からないけどね」

 なんだそれ、魔法も使えて物理攻撃も出来るなんて強すぎじゃありませんか?
 そう思っても、これから戦う敵のことを考えると、それでも足りないかもしれないと思ってしまう。

 ツバキがやっと解放され、僕の隣で少し休んでいた。
 その姿に、つい、頭を撫でてしまった。
 すると、もっとやってと言わんばかりに頭を僕の手にすりすりしてきた。
 それを見ていた女性たちから嫉妬の目線を受けたが、フッと笑って返した。

「ゴホンッ、二人は僕たちと一緒に来てくれるってことで良いのかな?」

 そう聞くと、二人とも頷いた。

「それじゃ、勇者一行が集まったことだし二人とも共有しておこうかな。僕たちの倒すべき敵のことを……」

 そして、戦う相手が魔王ではなく神だという事、神がどんなことをしてきたのかという事を伝えた。
 それを聞いた二人は驚いて開いた口が塞がらない様子だった。

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