幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

ダンジョンの攻略~聖騎士の発見~

 ダンジョンを攻略した僕たちは、異常もなく鉱山に戻ってきた。
 一緒にダンジョンに入った冒険者たちは、ダンジョンから無事に生還したことに対して安堵し座り込んで休憩していた。
 その中には、ダンジョンに入る前にリュクスに振られたエクレンも胸を撫で下ろして壁にもたれ掛かりながら休んでいた。

「やぁ、エクレン、無事だったんだね」
「貴方は、『音速の漆黒』様と一緒にいた方ですね。えっと、申し訳ございません、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

 そう言えば、名乗っていなかった。こっちが知っていたから、相手も知っているものかと思っていた。

「僕の名前はフォレス、よろしくね」

 カリーナたちのことも紹介し、エクレンからその後の鉱物採掘祭が中止になったことを聞いた。

「ねぇ、フォレス君たち。もし、この後時間があったら一緒に食事でもどうかな?」
「僕は構わないけど、リュクスはどうする?」

 リュクスの返答は直ぐに帰ってきたが、その返答に僕たちは驚いた。
 その答えを聞いた僕たちは、ダンジョン攻略で減ったお腹を満たすためにエクレンのおススメでもある個室のあるレストランにやって来た。

「ここは、僕が所属している騎士団でも使うことのあるレストランなんです。料理も多くて美味しい、ちょっとした秘密の話しも出来る最高の場所なんですよ」

 ウェイトレスに食事を注文してから十分後、大量の料理を持って戻ってきた。
 大皿に乗った料理を小皿に移しながら今回の出来事について話していた。

「そう言えば、今回の急なダンジョンの出現、皆さんはどう思いますか? 僕は、やはり魔王が関連していると思います」
「魔王が? それはなんで?」

 エクレンの話を聞くところ、魔王の復活に伴って魔物が狂暴化しているらしい。
 人類がそのことに手を焼いている裏で、自分こそが魔王に相応しいと思っている反魔王軍が今回のダンジョンを作ったのではないかという考察だった。

「という事は、その場に魔王が居たかもしれないってこと?」
「その可能性も捨てきれませんが、今回は違うと思っています。魔族にとって人間は格好の餌食ですからね、自分の能力を上げるために人の集まっていた鉱山を狙ったんだと思います」

 なるほど。確かに、そういったことをする魔族が居る可能性はある。ありがたい情報だ。

「凄いね、エクレン。僕たちじゃ、そこまで導き出せなかったよ」
「そ、そんな、僕も確信がある訳じゃ無いので……実際どうだったかは、これから国と冒険者ギルドが調べると思いますので、発表を待ちましょう」

 運ばれてきた料理も殆ど食べ終わり、紅茶を飲みながらケーキなどのお菓子を食べていた。
 その頃になると、エクレンも大分僕たちに慣れてくれて気負わずに話せるぐらいまでにはなった。

「エクレンはどうして冒険者と騎士団を両立しているの?」

 初めて出会ったときも気になっていたが、聞くタイミングが無くて聞けなかった質問をカリーナがしてくれた。

「それは、どちらかがダメになった時にどちらかに移れるように、ですね」

 エクレンは最初、見習い騎士だった。見習い騎士として日々の鍛錬を行いながら街の中の安全を守るために動いていた。
 その日は、騎士団の主力部隊が遠征に出ていた。エクレンはいつも通り王都の城壁付近を警備している時だ。はぐれた魔物が門を壊して中に入ってきた。王都の、それも城壁の中に魔物が居るという状況に王都はパニックに陥っていた。
 その頃のエクレンは見習い騎士という事もあり、その場から逃げようとした。けれど、魔物が一人の男性に襲い掛かった時エクレンは駆け出していた。盾を構え魔物の攻撃から男性を護った。その勢いのままエクレンは魔物を単独で撃破した。
 その日の夜、エクレンは夢を見た。何者かに自分が勇者と共に魔王を倒す聖騎士に指名される夢だった。
 目が覚めたエクレンは頭に浮かんでいる呪文を唱えた。

『聖なる神よ 我が身を彼の者のように守る力を与えよ』

 その呪文はエクレンの体を感じたことのない魔力で包んだ。
 その頃から、エクレンの誰かを護る能力がずば抜けて上がっていた。見習い騎士を卒業して騎士団に入団したのもその頃だった。
 国王様に報告したところ、勇者が現れてエクレンを仲間にしたいと申し出があったら騎士団を抜けて勇者の御一行になり、勇者が現れなかったらこのまま騎士団にいるように、という事になった。

 だから、勇者に誘われたときのために冒険者ギルドに加入し、騎士団に残るときのために騎士団の二つに所属している。

 まさか、こんなところで聖騎士に会えるとは思っていなかった。

 その頃、ダンジョンを誰が攻略してくれたのを血眼になって探してた。
 当の本人たちはレストランで悠々とご飯を食べているとも知らずに・・・

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