幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

メイドとの再会

 高台から降りて行った私は、昔と何ら変わらない風景を前に涙を堪えていた。他の人にそんな姿を見せないために目元を隠して歩いていた。
 そしたら、警備の人に捕まった。

「そこの旅人さん。少しいいですか?」
「!? な、なんですか?」
「なんでも、高台からこっちを見ている怪しい人たちがいると通報を受けました。その一人がここに降りてきたみたいで、もしかしてと思い声を掛けさせていただきました」
「あー、それ、私の友達です。もしかして、そっちにも人行きました?」

 そっちはそっちで多分大丈夫だと結論づけて、私は警備の人から解放された。
 声を掛けられたときは正体がばれるかと思ったけど、意外にも大丈夫だった。

 まぁ、あれから八年ぐらい経っているから私を覚えている人がいるとも思えない。

「けど、本当に懐かしいな……」

 私がメイドの目を盗んで外に出かけたときに立ち寄っていた食堂。
 いつもおばちゃんが匿ってくれて、少しだけのお菓子も貰ったりしていた。

 少し寄ってみたけど、そこにはもう食堂は入っていなかった。

「町並みは変わらないけど、変わったものもあるんだな」

 それからも、色々な場所を巡った。公園に市場、噴水エリア。
 懐かしい記憶を思い出しながら歩いていると、自宅がどうなっているのか気になった。
 遠くから見ても未だ健在の王城。それがどうなったのか、私はそっちに向けて足を進めた。

 十数分歩いてそこに辿り着いた。
 そこには驚きの光景が広がっていた。

 誰も立ち入れなかった王城の庭は、公園として使われていた。
 誰も入れなかった王城の中は色んな人の憩いの場として開かれていた。

 その為、私も特別な許可なくそこに入ることが出来た。

 五年ぐらいしか暮らしていないけど、懐かしい記憶と共に昔を思い出していた。
 専属メイドとの楽しかった記憶、お父さんお母さんとの楽しかった記憶、その全てが今はとても懐かしい。

「あの人、今は何やってるのかな?」

 懐かしい記憶の中でも、専属メイドとの記憶が一番多い。お父さんやお母さんよりも専属メイドと一緒にいる時間が一番多かったからだ。

 今は、自分が使っていた部屋に向かっている。
 今その部屋がどんな風に使われているのか、何となく想像は付く。

 その扉を開けると、そこには静かに本を読んでいる人達が居た。

「……やっぱり」

 私の部屋はこの王城にある大抵の本が置かれているのだ。私が勉強の為に使う本やら、適当に読む本、近くにあったほうが便利と言うことで、この部屋に本が置かれるようになった。
 ただ、気になるのが、ここにあった私の服だ。服が入っていた棚は無くなっているからどこかに移動したんだと思うけど、中を見られているのか見られていないのかとても気になるところではある。

 と、そんな感じに懐かしんで王城を後にし、今は隠し市場に来ていた。
 ここは、知る人ぞ知る美味しい野菜を売っている市場で、裏路地を進んで進んでやっと辿り着ける場所にある。

「ここも、変わらないな」

 ここに始めてきたのは城から抜け出したのがメイドに見つかって、逃げている最中だった。
 息切れして、座り込んでいるのをここの若いお姉ちゃんに助けてもらって野菜を分けてもらったのが最初の出会いだ。とてもみずみずしくて美味しかったのを覚えている。

「あの時は、メイドがスキル使って私を見つけてくれたんだっけ。あれは嬉しかったな」

 その頃、戦争の準備とかでお父さんもお母さんも忙しくしてて寂しかった。誰にも構ってもらえなくて、だから、色んな意地悪やわざと叱られるようなことをした。だけど、両親は更に私に構うことは無くなった。だから、私が居なくなったら両親が探しに来て、構ってもらえるそう思っていた。けれど、来たのは専属メイドだった。
 最初は、両親じゃなかったのが悲しくて泣いていたけど、そのメイドに抱きしめてもらって久しぶりに人の温かさに触れた。そこで私は、両親が居なくてもこの人がいる。そう思うよになった。前々から好きだった人がさらに好きになった。

「久しぶりに会いたいな。今はどこで何やってるのかな?」

 そんなことを考えながら、果物を三つ購入してから帰ろうかと思っていた。昔仲良くしてもらって居た人たちはそこには居なかった。別の場所に行ったのか、それとも……

 その時だった。後ろから声が掛かった。

「センリ……お嬢様……?」
「? え?」

 後ろを振り返ると、そこには昔と何も変わらない姿の専属メイド、メインドが買い物かごを持って立って居た。

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