幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

メイドの過去②

 恋に落ちた私は、傷が治るまでここで過ごすことになりました。
 その間、センリお嬢様が遊びにやって来ます。

「きょうは、なにしてあそぶの?」
「う~ん、今日は外で本を読みませんか?」
「ほん、ですか……」
「本は嫌いですか?」

 センリお嬢様は、苦虫を嚙み潰したよう顔でこっちを見ていた。
 なにか、本に対する嫌な記憶でもあるのかな? そう思って聞いてみると首を横に振った。

「おとうさまが、なにかいてあるかわからないほんばかりみせてくるので、すきじゃない」

 とのことだった。

「読み聞かせは?」
「?」
「あ、うん。まぁ、本は二の次で今日は日向ぼっこでもしようか」

 そう言うと、センリお嬢様はぱぁっと顔に笑顔が戻った。

 私たちは、手を繋いで歩きながら外に向かった。部屋から出るときにメイドさんには驚かれた。

「な、なんでもう歩けるんですか!?」

 私も良く分からないけど、何故か回復していた。世の中不思議なこともあるね。

「そ、それはさておき、お昼ご飯を作りましたので、どうぞ食べてください」
「ありがとうございます」

 外は、快晴で雲一つない綺麗な青空をしていた。

「良い天気ですね。お嬢様」
「うん! いいてんき!」

 ノウェール王城の敷地内には、少し丘になって木が一本生えた場所がある。今日は、そこで日向ぼっこだ。
 木の下に着いた私たちは、座って日向ぼっこを始めた。センリお嬢様は私の股の間に座って体を預けてきた。お嬢様の頭を撫でながら木々の間から降り注ぐ太陽の日を浴びて目を閉じた。
 遠くから聞こえる鳥たちの声に耳を傾けのんびりと過ごす。

 冒険者も良いけどのんびり過ごすこんな日常も良いかもしれないな。

 のんびりと過ごしていると、袖を引っ張られる感覚で現実に戻された。

「どうしたの?」

 お嬢様は上を向いて私に顔を向けていた。かわいい。何だろう? と、首を傾げると……

「ほん」

 と、一言呟いた。最初、なに言っているか分からなかったけど私の隣に置いてある本を持ってまた、「ほん」と呟いた。読みたいとは言ってくれない。

「それじゃ、眠くなったら寝てもいいからね」
「うっ……ね、ねないもん」

 本を読んでいると、センリお嬢様の寝息が小さく聞こえてきました。
 安心しきった、かわいらしいその姿に私はこの子の成長を見守りたいと、そう思うようになりました。

 そこからの私の行動は早かったです。すぐに、センリお嬢様の専属メイドになれるか打診してもらいました。王様からの返事は「メイドとしての最低限の仕事をこなすならばよい」と返事を貰い、別日に改めて試験を行うと言われた。

 私は、打診をした日からお嬢様の身の回りの世話を始めた。
 掃除、洗濯、着替え、料理、その他すべてを完璧にこなした。

 それから、数日が経過した。未だに、試験の日程は聞かされていない。
 が、メイド長から呼び出しを受けた。遂に、試験の日程が決まったのかな? そう思ってメイド長が待っている部屋に向かった。

「失礼します」

 部屋の中にはメイド長とセンリ、国王様が待っていた。

「メインド、私とメイド長変わらない?」
「メイド長から話は聞いた。メインドよお前、ありとあらゆるメイドの仕事を完璧以上に仕上げたそうだな」

 なんか、思っていた状況と違う。なんだこの状況?

「あ、あの~? 試験の日程は?」
「試験? そんなのもう終わってるわ、貴方は合格よ。それでよ、貴女の仕事っぷりをみたメイドが私に「私、メイドとしてまだまだみたいです」と、自信なさげに行ってきたのよ! あのこ、副メイド長なのよ!」




「とまぁ。こんな感じに私はメイドになったんです」
「え!? 貴女、王城のメイドだったの!?」
「えぇ、まぁ、そうですね」
「な、なんで、こんなところでメイドやってるのよ?」
「お嬢様、その話はまた今度です」
「そう……それで、メイド長にはなったの?」
「いえ、私が仕えたいと思ったのは国王様じゃありません、センリお嬢様です。なんで、きっちり断っていますよ」

 その後、お嬢様は寝てしまい、手持無沙汰になってしまったので、お嬢様との会話のお供であるお菓子を作ろうとキッチンにむかった。しかし、そこにはお菓子の材料がなくなっていた。なので、外に買い出ししに行った。

 その時は思いもしなかった。まさか、こんなところで再開するなんて……

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