幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

至極色の結晶

「助けて!!!」

 フォレス達は怒っていた。カリーナにとってこの二人以外で初めて出来た友達。リュクスにとっては気の許せる、バカを言い合える奴。フォレスにとって、自分を兄と慕ってくれる妹。出逢って間もないノルメと三人はここまで仲良くなった。

 そんな人をこいつは奴隷だと言い、道具のように扱い、連れ去ろうとしている。既にノルメからは奴隷に必要な首輪は無くなっている。奴隷の首輪は奴隷契約書と同期しており奴隷契約書の効果が無くならない限り首輪は取れない。

 ノルメの首に首輪はもう無い。既にノルメは奴隷から解放されているが、心に縛られた見えない鎖がノルメを縛って離さない。ノルメにとってはじめての反抗だった。

「お前たち。やってしまえ」

 男の後ろに立っていたガラの悪い数十人の男たちは、武器をそれぞれ取り出してフォルスたちに向かって走り出した。しかしそいつらは一瞬にして無力化された。

「「!?」」

 それを見ていた、ノルメと、ノルメを捕まえている男は息を呑み、それを見ていたカリーナとリュクスが苦笑いを浮かべた。

「な、何が起こった……。なんで……こんな一瞬で……」
「あのさー、その子、俺たちの友達なんだ」
「あ? それがどうした? クソッ、使えないクソ共が」
「早く、その子を離せ」
「煩え。おい、出て来い」

 男がそう言うと、後ろから男の腰ほどの身長の女の子が出て来た。その子の髪はボサボサで服もボロボロ。死んだような目と手に持っているナイフが俺たちの事を殺そうとしていることが分かった。ただ、首に奴隷の首輪があるのが気になった。

「こいつはな、俺が持ってる奴隷の中で随一の戦闘能力を持っている奴隷でな、以前は十人ぐらいの冒険者を一人で殺した事があったな。おい、No.008。あいつらを殺せ」
「……」

 女の子は無言で歩き、瞬きをした瞬間に消えた。否、女の子が気配を消してその場から消えたように錯覚したのだ。魔王、勇者、そして、ファレスを欺いた。

「「「!?」」」
「お前、何者だ?」
「……私は奴隷、主の命により貴方たちを殺す」

 そう言って、その子は地を蹴った。その速度は音を置き去りにしてフォレスに向かって行った。が、何かにぶつかり動きが止まった。

「分かった。だから、そこに居ろ」

 その子は、フォレスの貼った防壁に内側に閉じ込められた。
 殴っても蹴ってもその防壁にひびは入らない。

「さぁ、ノルメを返してもらうぞ」
「!? ……俺の邪魔をするな!!! 俺は、この世界で一旗あげるんだ!!! あいつをぶっ殺して……それにはこいつが必要なんだ!! まさか、こんな所で使わなきゃ行けない時が来るとはな……」

 男が懐から取り出したのは至極色しごくいろの結晶だった。男はそれを握り潰して高らかに叫んだ。

「ここに契約を言い渡す。こいつらを殺して貰う。それが成された時お前の望みは叶う!! いでよ!! 《シン・ピーカック》」

 至極色の決勝から出て来たのは背中に孔雀の様な大きな翼を広げた、背の高いすらっとした男性が宙に現れた。

「やっとシャバに出て来れた。礼を言うぞ。そして、お前との契約は今ここに果たされる。俺の望み、きちんと叶えて貰うぞ」

 宙に浮いているピーカックは前髪をかきあげて、こっちをギラッと睨みつけて来た。

「おいおい。まじかよ。なんだこいつら、有り得ねぇだろ。ククッ、面白いねぇ。なぁ、お前ら場所変えようや」

 次の瞬間、今までいた街から何も無い草原に場所が変わった。

「あれって、お前たちの仲間だろ。一緒に連れて来たが良かっただろ?」

 ピーカックが送った目線の先には腰を抜かして座り込んでいたノルメが居た。

 宙に浮かんでいたピーカックは背中の翼を仕舞い、地面に降りて来た。

「お前らに聞きたいんだが、なんで勇者と魔王が一緒に居る? それに、あいつは聖女だ、なんで魔王と仲良くしている。それに、お前なんだ? 存在が不自然すぎる、それにここにいる誰よりも強いのがお前だ。勇者よりも魔王よりも強い。何者だ?」

 みんなの視線がフォレスを射抜いた。

「え、えっとー、うーん……ナニヲイッテイルカワカラナイデスネ」
「そんな嘘。直ぐに分かる。俺の『忠実な目』があるからな」
「忠実な目?」

 ピーカックはバサッと翼を広げた。

「もしかして……!」
「そうだ。模様に見えるこれは、全て俺の目だ。この目を通して全ての真実を俺は知ることが出来る。お前らの『隠蔽』も意味ない」
「「「!?」」」

 それを聞いた、フォレスは驚き。カリーナとリュクスの口角が少し上がった。

「「なぁ(ねぇ)フォレス。あいつの相手、俺(私)に任せてくれない? 本気、出してみたいんだ」」

 今までも、本気本気と言って来たが、いつも誰かが二人を見ていた。その為、本当の本気を出せていなかった。けれども、ここには二人の事を知っている人しかいない。

「「なぁ(ねぇ)。俺(私)達の実験台になってくれよ」」

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