幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

遺跡の探索②

 カリーナと遺跡の入り口付近ではぐれてしまった。

「リュクス、灯をお願い。それと、カリーナの足跡を探して」
「分かった」

 扉が閉じて光が届かなくなった遺跡の中は真っ暗で何も見えない状況だ。
 そこでリュクスが火魔法を指先に灯した。
 壁際を伝いながらカリーナの足跡を探すと、入ってきた扉の前で一つだけ見つけた。

「って事は、この先でカリーナが消えたのか」
「だろうね。リュクス、ちょっと離れてて」
「? 分かった」

 リュクスを少し遠ざけて、カリーナの足跡がある所から一歩足を前に出すが、何も起こらない。

「何か条件があるのか?」

 そう思い、足で2回3回とタップするようにやってみる。
 下に落下するトラップでも起きるのかと思ったが、そう言う訳ではないようだ。

「そう簡単には行かないか」
「カリーナ、何処にいったんだよ。これじゃあ……」
「リュクス? これじゃあ、なんだ……え? リュクス? 何処いった?」

 壁際にいたリュクスが今の一瞬で消えてしまった。
 光が消えて真っ暗な状況になったが、さっきまでリュクスが居た場所は覚えていたので、そこに向かって歩き出した。

「確か、この辺だったよな」

 リュクスが今さっきまでいた壁際まで行き、もたれかかっていた壁のレンガを叩いていく。

「お、ここのレンガ押せるな」

 そのレンガを押してみると、壁が回るわけではなく。地面がクルッと回転した。
 いきなりのことで声が出ずに、そのまま落下していく。しかし、浮遊感はすぐに消えお尻から地面に落ちた。

「いってぇ」
「フォレス!!!」
「うぐぇっ!? ひ、久しぶりカリーナ」
「うん!! 久しぶり!!!」

 カリーナは数分の別れでも寂しかったようでギュッと抱きしめて来た。その先にはリュクスがジト目で見て来ている。

「フォレスも来たか」
「うん」

 落ちた先も遺跡のようで壁は肌色のレンガで出来ていて、地面にも砂が積もっている。

「何か見つけた?」
「うん。2人が来る前に少し調べたんだけど、後ろは壁。前に部屋が2つあるんだ。一つは宝箱が置いてあってもう一部屋には壁画が前面に描かれてたよ」
「成る程。それじゃ、先に宝箱の方行こうよ」
「気を付けろよ」
「罠でしょ? 分かってる」

 カリーナに案内してもらい宝箱の部屋に行くと、多目的ホールぐらいの大きさの部屋にポツンと一つ。銀色の宝箱が置いてあった。

「リュクスとカリーナのどっちか、罠解除のスキルとか持ってない?」

 2人に聞いてみるが2人とも首を横に振った。

「そっかー。それじゃ、罠は気をつけるしか無いな。2人とも罠発動するかも知れないから一応武器の準備と心の準備しておいて」
「「分かった」」

 魔力で剣と槍を作り背中合わせに構えた。僕は全身に魔力を纏い鎧のように変えた。

「それじゃ、開けるよ」

 宝箱を開けると。その中には古びた本が一冊入っていた。

「何これ?」

 罠の発動は無かったので、みんな武装を解除して宝箱の中身を覗きだした。

「見せてよ」
「私にも見せて」
「はい」

 2人に見せるとカリーナは知らないと首を振ったが、リュクスが知っているという事だ。

「それは、魔導書だと思う」
「魔導書? 何それ?」

 リュクスの説明で分かった事は、この魔導書はゴミだと言うことだ。
 昔、魔法を使う時は詠唱というものが必要で、それを覚えて唱えて魔法を発動する。それが昔の魔法だ。そして、魔導書はその詠唱を頭に強制的に焼き付けるための物だった。しかし、今は詠唱の必要が無いので、魔導書はゴミでしか無いのだ。

「まじか。いやまぁ、昔の遺跡だしな。しょうがないよな」
「うん。あ、でも、売ると高いよ」
「そうなの?」
「うん。魔導書の内容はゴミでも物自体が高価なんだよ。コレクションとしてだけどね」
「それじゃ、カリーナ。『収納』に入れておいて」
「はーい」

 実際のところ、お金は魔物を倒してその毛皮や肉を売ったら足りるので、これがゴミには変わりない。
 それをカリーナの『収納』に放り込んで、壁画のある部屋に向かった。
 壁画のある部屋に着くと、確かに前面に絵が描かれていたが、両サイドと出入り口の上にも壁画があった痕があった。

「って事は、後3つはこんな遺跡があるって事だよな」
「そうだね」
「それで、この壁画なんだけどフォレスとリュクスは分かる?」

 壁画の絵を解説すると、天から差し込む2本の光。光の先にいる男女とその前にいる羽の生えた人? これだけだった。

「うーん。あの男女が魔王と勇者で、男女の前にいる人が、神か、天使かだよね」
「神? 天使? 何それ?」
「俺も分からない」

 そうだ。俺は異世界に何を求めていた? 神? 地球にすら居るかも分からない、唯の偶像に過ぎないのに。異世界に夢を見過ぎていたかも知れない。
 これが、本当に神か天使かはそのうち分かる筈だ。

「ごめん。何でもない。2人はあれが何に見える?」
「さぁ?」
「ね。フォレスが分からないなら私たちには分からないよ」

 そこで、2人が本などを読んでいない事を思い出した。

「そっかー。それじゃ、この壁画を模写してからこの遺跡出るよ。2人は出口探しておいてよ」
「「分かった」」

 模写を終えた僕は2人と合流して地上に戻った。地上に戻る方法には驚いた。砂の滑り台を滑っていくと近くの木の中から出て来たのだ。
 魔法のある異世界なんだなと再認識した。

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