幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

魔族の襲来③

 炎の蛇は三つの重要な施設、そこに集まった人たちを狙っていた。
 一つ目が食糧庫。そこでは、カリーナと炎の蛇が戦っていた。

「せいっ!! ほっ!!」

 蛇は全長およそ3メートル。その蛇は意志と同時に実態も持っていた。一体、どんな魔法を使えばそんなものを生み出せるのか分からない。
 炎の蛇はその尻尾でカリーナを横から叩きつける様に攻撃して来た。それを上に跳んで避けると同時に剣で斬りつける。

「あれ? 全然刃が入らない」

 炎の蛇は魔力の剣で斬りつけても、表面の皮膚が硬すぎて刃が通らない。
 どうしようか考えながら攻撃を避け続けてると、炎の蛇が口の中に炎の塊を作り出した。

「一体何をする気?」

 炎の蛇は火炎放射器の様な炎をカリーナに向けて放った。
 初めて見る攻撃にカリーナは避ける事が出来ずに炎に呑まれてしまった。

「きゃぁぁぁ!!!!」

 その炎はカリーナ含めて、奥にある食糧庫諸々燃やされてしまった。
 幸いなことに、フォレスの指示で村長が村人たちを移動させていたから、村人に被害は無かった。
 けれど、カリーナはその炎を身に纏った。
 運良く近くにあった川に飛び込んだ。

「はぁ、はぁ。……あ……嘘……そんな……」

 川から這い上がり始めに見た光景は、守るべき食糧庫が燃やされて、更に奥にある村の外にある木々も燃え盛る。そんな光景だった。

「……いや……ダメ……誰か……私じゃ……敵わない……」
その光景を見てカリーナの戦意はポキッと折れてしまいその場にひざまずいてしまった。手に持っていた剣もへなゃへなゃに曲がってしまっている。
 それを見つけたのは無傷で炎の蛇を倒したリュクスだった。

「おいおい。カリーナ。そんなもんか?」
「……リュクス。私……」
「ちっ、勇者とはそんなもんか?」
「……私……勇者なんか……なりたくなかった」
「カリーナ?」
「私は、フォレスとリュクスと園長とずっと一緒に楽しく過ごしたかった。……私勇者なんか、なりたくてなったんじゃないよ」
「しっかし、いいよな勇者は」
「……は?」

 カリーナは意味が分からなかった。

「俺なんて魔王だぜ? 魔界の王で魔王。それ以外には何の意味もねぇ。しっかし、勇者はいろんな意味があるもんな。それを考えると、やっぱり勇者はお前にぴったりだな」
「……え? は?」
「ほら、お前がこの村を守れ。俺には俺のやる事があるからな」
「えっ!? ちょっと待ってよ!!」

 リュクスはカリーナの言葉を無視して村の中心に向かって行ってしまった。

「……何しに来たのよ。……勇者の意味……か」

 カリーナにとって勇者とはみんなから頼られみんなを守る。そして魔王を倒す。そんな認識をしていた。

「勇者……勇者……勇者……。私には……分からないよ。でも、ここで逃げたらフォルスになんて言われるかな? 怒られるかな? 怒られたくないな」

 そんな事をしている合間にもカリーナと戦っていた炎の蛇は食糧庫の近くにある畑に向かっている。

「あれ? そう言えば身体がもう痛くない。火傷も治ってる。よし!!」

 勇者のスキル『持続回復』だ。それは所謂パッシブスキルだ。そんな事は知らずに、なんかラッキーと受け取り、カリーナは走り出した。

「……私は勇者じゃない。そんな物は要らない!! 私はカリーナだ!! みんなと幸せに過ごす。その為にあんたは邪魔!!!」

 そして、カリーナは剣を握り直す。すると、先程のへなゃへなゃな剣がピッと斬れ味もありそうな元の形に戻った。

「相手は炎。だったら!!」

 カリーナは走りながら剣の腹に手を合わせた。そして、横に動かすと剣の周りに水が現れた。

「行くよ!!」

 水の剣を持ち走りながら燃えている建物に水を撒き消化して行く。
 そして、数秒後。炎の蛇に追いついた。まだ、畑は燃やされていない。それを見たカリーナは脚に力を入れて跳んだ。

「はぁぁぁぁぁ!!!!」

 水の剣を大きく振りかぶり、跳んだ勢いと共に炎の蛇を真っ二つに斬り落とした。

「はぁぁぁあ、ふぅぅぅう。討伐、完・了!!!」

 炎の蛇はそのまま地面に溶ける様にして消えていった。

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