幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

異世界での焚火の仕方

 森の中は平穏で穏やかな空気とともに時間が流れていく。
 後ろの2人は魔力のボールで遊ぶ事に飽きて寝てしまった。

「そういえば、僕たちこの世界の事何も知らないままだな」

 通貨も政治もどんな国があるのかも、ここがどんな場所なのかも僕たちは知らない。
 そんなところから僕たちの旅が冒険が始まる。
 ワクワクが抑えられない!

「にしても、そろそろお腹空いたな」

 孤児院を出たのが遠くに見える山から太陽が頭を出ている時。今は陽が昇り気温も少し高くなって来ている。
 少し道から逸れた場所に水が流れているのが見えたので、そこら辺にある広間に馬車を止めた。
 馬車を止めて寝ている二人を起こす。

「おーい。そろそろご飯にするぞ」

 リュクスは眠そうに起き上がり、カリーナは「ご飯」の言葉に敏感のようで勢いよく起き上がった。

「んー、分かった」
「今日のご飯何!?」
「今日のご飯なんだけど、手元に何も無いんだよ。パンもお肉も野菜も。だから、2人に取ってきて欲しいんだよ」
「了解」
「分かった」
「あ、行く前にくれぐれも10分の1の力加減でお願いね。それと、出来ればで良いんだけど傷とかをあまり付けずに倒して欲しい」
「「はーい」」

 2人にご飯を狩って来るようにお願いして、僕は近くの川から水を汲んで火を、火を……

「……火付けられない。何か無いかな」

 僕は魔法もスキルも使えない。使えるのは魔力だけ。
 周りを見渡してもそこには草木と花しかない。それに、火を起こす方法なんて知らない。
 摩擦熱で火を起こすって事は知っている。逆に言うとそれしか知らない。

「どうしよう」

 僕は座り込んで空を見上げた。そこにいるのは、優雅に飛んでいる鳥との群れと、それを捕食しようと口から炎を吐き出している鳥の魔物だけ。

「炎を……口から……吐いている……鳥の……魔物……!?」

 僕は、その辺に落ちている石を拾い上げて、その魔物に向かって落ちている石を投げつけた。
 見事にヒットして、魔物の視線が目の前の鳥から外れ僕の方を向いた。

「よし。こっちに来い!!!」

 更に鳥の魔物に向かって石を投げると、その石は鳥の魔物に当たる前にドロドロになって落ちて来た。

「……まじ?」

 その魔物はバサッ! と羽を広げると全身に炎を纏って突撃してきた。

「嘘でしょ嘘でしょ!?!? そんなの聞いてないって!!」

 僕の作戦では、炎を木か草に吐かせてから魔物を倒す。そしたら、水を沸かす事が出来る。そういった作戦だった。

「だけどね、そんな事対応出来ないなら魔王と勇者の攻撃は防げないんだよ!!」

 僕は全身を魔力の鎧で纏い、炎の鳥の魔物の突進を受け止めた。

「どりゃ!!」

 それを掴んだまま地面に叩きつけた。
 地面に炎が移ったのを見計らって鳥を空に向かってぶん投げた。

「炎ありがとうね〜」

 その鳥は逃げるように空を飛んでいった。
 炎が移った周りに石を置き、木の皮か枝などを拾って焚火を始めた。そこで、水を沸騰させて殺菌して2人を待った。
 2人はその後直ぐに帰って来て、リュクスが鹿のような魔物をカリーナが男性を狩って来ていた。
 その人は、簡易的な鎧を着ている。この人が何者か知るために懐を探ってみると一枚のカードを見つけた。そこには、この国の名前とこの人の名前が書いてあり、役職欄には王国騎士と書かれていた。

「うわぁ、もう場所バレてんの?」
「あはは、なんでだろ?」
「この鹿、喋ったんだよな」
「え、って事は魔界の魔物かよ。まさか、人界にも魔界にも場所バレてるのか」
「みたいだな」
「ねぇ、いっそ、殺っちゃう?」
「いやいや、むやみやたらに人を殺そうとするな。約束だぞ」
「「はーい」」

 魔物には2種類が存在する。さっき僕が戦った炎の鳥の魔物は喋らずに襲いかかって来た。本能に従って動いている人界特有の魔物だ。リュクスが狩って来た鹿のような魔物は、魔界に存在している。魔物は喋り知能がある。けれど、魔族ほど喋れたり知能があったりするわけじゃない。
 
「まぁ、食えない事はないからな。食うか」
「こいつはどうするの?」
「縄で縛って動けないようにしておいてよ。後でちょっとやりたい事あるから」
「はーい」

 鹿のような魔物の毛皮を剥ぎ取りお肉を切り分けてもらい、それを焼いて食べた。沸騰させた水は冷めたのを確認してから3人と馬に分けた。

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