誰にも邪魔させない。
18
「坂城くん、私ね、柊のことが…」
「うん」
「柊のことが好きなんだ」
「うん」
坂城くんは落ち着いた様子で私の言葉に相づちを打った。
「驚かないの?」
「うん、知ってたから」
「え?」
知ってたって…?
「ずっと海莉ちゃんのこと見てきたんだよ。
気づかない訳ないじゃん」
そう言って坂城くんは切なそうに笑った。
「そうだったんだ…」
柊を好きって感情は表には出してないつもりだったけど、坂城くんにはばれてたみたい。
「でも付き合ってるって聞いた時はどうしても諦めきれなくて。
海莉ちゃんのこと困らせるような事してごめんね」
「そんな!全然だよ!坂城くんの気持ちは本当に嬉しかったんだ」
これは本当に本当で。
こんな取り柄も何もない私に、関心を持ってくれて嬉しかった。
「そう言ってもらえるだけで報われるよ」
坂城くん…。
「さっき黒川と話したんだけどね」
「うん?」
「やっぱ黒川には敵わないなーって思ったよ」
「敵わないって?」
坂城くんは柊よりはるかに頭もいいし、優しいし。
何が敵わないって言うの?
「海莉ちゃんへの愛だよ」
「へ?」
「僕の負け、幸せになってね」
そこまで言うと坂城くんは私の頭をそっと撫でた。
その瞬間、坂城くんとは反対側の腕を思いっきり引っ張られて思わず立ち上がる。
「海莉に気安く触んな」
そう言って私の腕を引っ張ったのは柊だった。
柊…?
びっくりした…。
「はいはい、悪かったって。
もう邪魔しないよ」
坂城くんは柊にそう言って、私に向かってにっこり笑って校内に戻っていった。
「ちょっといきなり何?!びっくりするじゃん」
私は柊の手を振り払おうとしたけど、柊の腕を握る力の方が強くて離れなかった。
「海莉は隙が多いんだよ」
「隙?」
「気安く触られやがって」
柊はそう言って腕を握られている手とは反対の手で、私の髪の毛をクシャクシャにした。
「ちょっと、やめてよね!」
そんな柊の手を払うと、柊は不貞腐れながら口を開く。
「お前さ、坂城に言ったの?」
「…何を?」
「俺らが本当は付き合ってないこと」
「…あ」
きっと柊は、さっき坂城くんからそのことを聞いたんだ。
いや、確かに言ったけどさ。
柊の目的は柊に近づいてくる女の子たちを抑制することで。
別に坂城くんに言ったところで何も問題ない、よね?
「言うなって言わなかったっけ?」
「ごめん、つい…」
「ついって何だよ」
柊は更に不機嫌そうな顔をして。
「海莉は何も分かってない」
何をそんなに怒っているのか私には分からない。
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