誰にも邪魔させない。

咲倉なこ

1 誰に向かって言ってんの?



私には手に負えない幼なじみがいる。


黒川柊。




切れ長の大きな目に、薄い唇。


鼻もすっと高くて整った顔立ち。


お肌のお手入れなんてしてないくせに、ムカつくほど美肌を決め込んでいる。


髪色はアッシュ寄りのブラウンで、最近はゆるいパーマなんてかけ始めたりして。


小学校の時は私より身長が低かったくせに、1年前くらいからいきなり背が伸び始めて、急に男らしくなってきた。


そんな彼とは幼稚園の時から幼なじみ。




密かに私の好きな人だったりする。





見た目は男らしくなってきたのに、中身は昔のまんま。


超わがままで、超俺様。


いつだって自分中心。


今まで何回振り回されて来たことか。


数えても数えきれないくらい。




それなのに、好きでいることを未だに辞められないでいる。


いい加減、次の恋愛に進むべきかなとは思うけど。


なかなか他に好きになれそうな相手も見つからない。





柊は私以外の前では猫を被っていて、誰も柊の本性を知らない。


中身を知ったらみんなどう思うのかな。


なんだかんだで、そんな柊を嫌いになれない私も私なんだ。




好きだけど憎たらしい。


憎たらしいけど憎めない。


私の大好きな幼なじみの話。







高校1年の春。


私は柊と同じ高校に入って、運よく同じクラスになった。


入学式から2カ月が経とうとしている。




「なー海莉、今日一緒に帰れる?」


放課後。


柊が誘ってくるなんて珍しい。


いつもは美結(みゆ)と帰っているから、断ろうと思っていると、


「私、今日用事あるんだった!
ごめん海莉、柊と一緒に帰んなよ」


私より先に、近くにいた美結が口を開いた。


美結ってば、変なとこで気を使うんだから。




「え、あ、えっと…」


断る気でいたから、美結の言葉に戸惑っていると、

「で、どうなの?」

柊は少しイライラした様子で聞いてきた。


ここで断ったらきっと、後々大変なんだよね…。




「分かった」


私はしぶしぶ柊のお誘いを受け入れた。






高校に入ってから柊と一緒に帰るのは初めてだな。


学校では柊とあんまり喋らないようにしているから。


なんでって?


柊と一緒にいると女子たちに嫉妬されて、面倒なことになるから。


過去に嫌がらせみたいなことが何回かあって、私たちの間では暗黙の了解みたいになってる。


たぶんこの高校で、柊と私が幼なじみだって知ってるのは、同じく幼なじみで親友の美結だけ。






そんな柊は高校に入ってからは、加速するようにモテまくっている。


女子には特に愛想を振りまいているからだ。


そんなにモテたいのか。


そんなに女の子にチヤホヤされて嬉しいのか?


男子って本当にバカ。




私は柊に冷たくあしらわれたことしかないから、柊に優しくされている女の子たちが羨まかったりする。


なんで私には、上から目線で高圧的な態度をとるんだろうって、いつも悲しくなる。


きっと、女の子として見られてないんだろうなって。




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