誰にも邪魔させない。
1 誰に向かって言ってんの?
私には手に負えない幼なじみがいる。
黒川柊。
切れ長の大きな目に、薄い唇。
鼻もすっと高くて整った顔立ち。
お肌のお手入れなんてしてないくせに、ムカつくほど美肌を決め込んでいる。
髪色はアッシュ寄りのブラウンで、最近はゆるいパーマなんてかけ始めたりして。
小学校の時は私より身長が低かったくせに、1年前くらいからいきなり背が伸び始めて、急に男らしくなってきた。
そんな彼とは幼稚園の時から幼なじみ。
密かに私の好きな人だったりする。
見た目は男らしくなってきたのに、中身は昔のまんま。
超わがままで、超俺様。
いつだって自分中心。
今まで何回振り回されて来たことか。
数えても数えきれないくらい。
それなのに、好きでいることを未だに辞められないでいる。
いい加減、次の恋愛に進むべきかなとは思うけど。
なかなか他に好きになれそうな相手も見つからない。
柊は私以外の前では猫を被っていて、誰も柊の本性を知らない。
中身を知ったらみんなどう思うのかな。
なんだかんだで、そんな柊を嫌いになれない私も私なんだ。
好きだけど憎たらしい。
憎たらしいけど憎めない。
私の大好きな幼なじみの話。
*
高校1年の春。
私は柊と同じ高校に入って、運よく同じクラスになった。
入学式から2カ月が経とうとしている。
「なー海莉、今日一緒に帰れる?」
放課後。
柊が誘ってくるなんて珍しい。
いつもは美結(みゆ)と帰っているから、断ろうと思っていると、
「私、今日用事あるんだった!
ごめん海莉、柊と一緒に帰んなよ」
私より先に、近くにいた美結が口を開いた。
美結ってば、変なとこで気を使うんだから。
「え、あ、えっと…」
断る気でいたから、美結の言葉に戸惑っていると、
「で、どうなの?」
柊は少しイライラした様子で聞いてきた。
ここで断ったらきっと、後々大変なんだよね…。
「分かった」
私はしぶしぶ柊のお誘いを受け入れた。
高校に入ってから柊と一緒に帰るのは初めてだな。
学校では柊とあんまり喋らないようにしているから。
なんでって?
柊と一緒にいると女子たちに嫉妬されて、面倒なことになるから。
過去に嫌がらせみたいなことが何回かあって、私たちの間では暗黙の了解みたいになってる。
たぶんこの高校で、柊と私が幼なじみだって知ってるのは、同じく幼なじみで親友の美結だけ。
そんな柊は高校に入ってからは、加速するようにモテまくっている。
女子には特に愛想を振りまいているからだ。
そんなにモテたいのか。
そんなに女の子にチヤホヤされて嬉しいのか?
男子って本当にバカ。
私は柊に冷たくあしらわれたことしかないから、柊に優しくされている女の子たちが羨まかったりする。
なんで私には、上から目線で高圧的な態度をとるんだろうって、いつも悲しくなる。
きっと、女の子として見られてないんだろうなって。
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