邪神の力の一部で不死になったんだが!?

Mikuzi

街に入ろう


 翌日、私たちはテキパキと朝食を済ませ街へ向けて出発しました。

 街へと行く道中では特に何か起こることもなく、お昼前に無事にリカレオに着くことができました。

 しかし、そこからが大変でした。

 最初に街を見たときには、先ず壁の大きさに圧倒されました。壁の高さは約12メートル程でしょうか。前世の建物で言うところの4階ほどの高さはあります。

 城壁の上には門衛と思われる人が所々巡回しているように見えます。

 その次に目に映ったのは、これまた大きな門でした。門の大きさは縦6メートル横5メートルの大きな両開きの門でした。

 今は昼なので門は大きく開かれていて、門の先には街の風景が微かに見えます。

 ・・・そうです。今私は街の風景が微かにしか見えていません。何故なら、私たちは今、街に入るために長蛇の列を並んでいるからです。

 リカレオはレオナさん達が話していた通り、商業が盛んなようで他の街から来た商人さん達がたくさん私たちと同じように、街に入るために並んでいます。

 すでにこの列に並んで一時間は経っていると思います。

 何故これほど街に入るために時間がかかるかと言うと、街に入るために門のあたりで門衛が一組一組検問を行っているからです。

 それに商人であれば、この街で商売するために馬車に沢山の商品を乗せて訪れるので、その検査にさらに時間がかかります。

 私たちは順番が来るまで、たわいのない会話に花を咲かせて時間を過ごしました。

 門に入るため列に並んでいると、何故か私たちと同じく順番待ちをしている周囲の方達が、時折こちらに不躾な視線を送ってきましたがーー主に視線を集めていたのはロシエルだけでしたがーー、努めて無視しすることにしました。下手に隠そうとすれば私たちの種族について勘繰られるといけませんから。

 しばらくの間不躾な視線は無視していると、ようやく私たちの番が回ってきました。


 「おっ、おやヘンリ君お帰り。依頼の帰りかい?」

 「こんにちは、キールさん。ええ、今サルトレアの森から帰ったところです。」


 門に近ずくと門衛の男性がヘンリさんに気がつくと、親しげに声をかけてきました。

 それに対してヘンリさんも慣れた様子で返事を返しています。

 二人の様子からして、どうやら知り合いのようです。門衛の人は優しげな近所のおじさんと言う印象で、誓いの剣の皆さんに優しげな眼差しを向けています。


 「そうか、それはご苦労さん。どうだった森の様子は?あ、ギルドタグを提示してくれな。」

 「基本的には何もなかったですよ。でも依頼の目標が少し厄介な奴で手こずりました。・・はい、コレ。」


 ヘンリさんはキールさんに依頼で訪れた森のことを簡単にして教えています。

 それと並行して私とロシエル以外の皆さんが、懐から紐で繋がれた金属質のタグのようなものを取り出して、キールさんに見せていきます。

 恐らくあれがこの世界での冒険者としての証なのでしょう。前世でもよく軍人さんがつけているようなドックタグのような物でした。


 「それで、そちらの御二人はどなたかな?」


 ヘンリさん達がギルドタグを見せ終わると、キールさんは次に私たちに視線を向けて尋ねてきました。

 当然のことですが、知らない人が一緒にいるので、そのことはパーティーのリーダーで経緯を知っているであろうと思われるヘンリさんに質問が飛びます。


 「ああ・・彼女達はグレイシアとロシエル、旅人で数日間サルトレアの森を彷徨っていたそうなんだ。そこを、ちょうど俺たちが依頼の魔物を討伐している最中に偶然出会って、ついでに討伐を手伝ってくれたんだ。」


 ヘンリさんが端的に私たちのことを紹介し、私も自分から説明しておきます。


 「初めましてキールさん。私はグレイシアと言います。隣のロシエルと一緒に国を旅している旅人です。」

 「おお、これはこれはご丁寧にどうも。私はキールと言う。このリカレオの街の門で門衛長を務めている。よろしくお願いするよ。」

 「はい、こちらこそお願いします。」


 どうやらキールさんはここでは一番偉い門衛さんのようです。周りの同僚の方よりベテランという感じがして、私たちのような初対面の相手でも丁寧に対応してくれます。


 「旅人ということはギルドタグのようなものは持っていないかな?無ければちょっと此方の詰所で犯罪歴の有無を確認したいんだが。まあ、嬢ちゃん達にそんなことはないと思うが、一様な。」

 「はい、問題ありません。すぐに行きましょうか。後も控えていますし。」

 「それはありがたい・・・オイ!すまないがここを少し頼む!じゃあ私の後についてきて。」


 キールさんはそう言って部下の人達に一声かけて、私たちを詰所まで先導しはじめた。

 ヘンリさん達とはここで一旦お別れです。

 詰所は門のすぐ側に隣接する形で建てられていました。

 中に入ってすぐに傍に机と椅子が置かれており、応接間のような形でした。


 「汚いところだが、そこに座ってくれるかな。」

 「はい、分かりました。」


 私たちはキールさんに指示されたように、すぐ脇の椅子に座ります。キールさんは「ちょっと待っててくれな」といっても奥の部屋へ入って行きました。

 詰所は端的に言って前世の交番のような感じです。前世ではお世話になることはなかったので、私のイメージが合っているのかはわかりませんが、取り敢えずそんな感じでした。

 キールさんはすぐに奥の部屋から戻ってきましたが、先ほどと違って手には占い師の方がよく使うような水晶が握られておりそれを机へと置くと、キールさんも私たちの対面に腰掛けました。


 「これに手を当ててくれ、そうすればすぐに犯罪の有無がわかるから。」

 「はい、分かりました。」


 私はキールさんの指示に従って机に置かれた水晶に触れてみると、私が水晶に触れた瞬間、水晶が私の魔力を勝手に吸い取っていきました。そして私の魔力を吸い取った水晶は、ほのかに青く光り出しました。


 「ふむふむ、犯罪歴は無しと・・・」


 キールさんは水晶の光を見ると、机の脇に置かれていた紙と筆で何かを記入しはじめました。

 どうやら私が触れたこの犯罪の有無を確認できると言う水晶は魔道具のようで、青色に光ったことから私に犯罪歴がない事が分かったようです。そしてその事をあらかじめ用意してあった紙に記入しているようです。


 「ーーこれで良しと。はいこれを。」


 キールさんは必要な事を書き終えたのか、最後に朱印を押して私に手渡してくれました。


 「それは、一時滞在許可証だから、3日で効果は無くなるよ。それまでに街を出るか、何処かのギルドに登録すかしてくれたらいいからね。期間を過ぎたら処罰の対象になるから気をつけてね。」

 「分かりました。ありがとうございます。」


 私はキールさんにお礼を言い、渡された紙を見ました。

 紙には私の名前と犯罪歴の有無、滞在期間、そして担当者のサインとその上に何かのシンボルと思われる朱印が押されていました。。

 期間は3日しかないようなので、忘れないうちにギルドに登録しないといけませんね。


 「じゃあ、もう一人の娘も。」


 そのあとロシエルも私と同じように水晶に手を置きーー言うまでもなく青く光りーー滞在許可証を受け取りました。


 「はい、これで終わりだよ。ありがとね、確認に協力してくれて。」

 「いえ、私たちの方こそありがとうございます。今日のうちにでもギルドに登録して、ご迷惑をおかけないようにしますね。」

 「ああ、いやいや迷惑なんてことは無いよ、私はこれが仕事だからね。何か困ったことがあれば、街の詰所に頼るといいよ。助けてくれるはずだから。」


 キールさんはそう言って私たちに丁寧に対応してくれました。私たちは詰所を出てから改めてお礼を言ってキールさんと別れました。


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   次回もよろしくお願いします。

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