邪神の力の一部で不死になったんだが!?
冒険者と話そう
タイトルがかぶっていたので変更しました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ〜〜〜」「ほぇ〜〜〜」「・・・・・」
私たちを(より正確に言えばロシエルを) 見つめる 4人の目には、未だに驚きの感情が色濃く表されていました。
「えっと・・・それでこちらの二人が・・・?」
「ええ、こちらの黒髪の彼女がロシエルちゃん。フードを被ってる子がグレイシアちゃんよ。ジェネラルを倒したのはロシエルちゃんの方よ。」
ラティナさんはそう言って私たちを彼らに紹介しました。
今ラティナさんは、私たちが旅人として5日間の間森を彷徨っていたこと、偶然ラティナさんが追っていたゴブリン・ジェネラルをロシエルが華麗に討伐したこと、森から出るために一緒に同行することなどを掻い摘んで説明してくれています。
私たちの目の前にいる方達が、ラティナさんと一緒に依頼を受けた冒険者パーティーの「誓いの剣」のメンバーでしょう。
彼らについては事前にラティナさんから説明があり、大雑把に誰が誰だかは分かりました。
最初に、他の方より一歩前に出て、ラティナさんと話をしている方がこのパーティーのリーダーのヘンリさんでしょう。
ヘンリさんは茶髪に茶色の瞳を持つ、一見好青年と言った顔立ちの男性です。装備は、所々に金属が使われた革鎧の軽装です。腰にはバスターソードと思われる剣を挿していて、腕には小楯を装備しています。恐らく遊撃を行いながら攻撃するアタッカーでしょう。
彼の後ろでは、全身を金属の鎧で固めたちょっとヤンチャそうな男性、彼がカイさんと言う方でしょう。こちらは焦茶色の髪で黒い瞳をしています。彼の傍には、身の丈ほどの大きな盾が置いてあり、腰にも片手剣を挿しています。彼だけすごく頑丈そうな見た目なので、彼がパーティーの守護者的な存在であるタンクでしょう。
彼の隣には、いかにも魔法使いですよと言った装いの少し小柄な女性が立っています。彼女がレオナさん、見た目通りの典型的な魔法使いだそうです。外見は少し明るい赤髪を持ち、同様の瞳の色をしています。手には、いかにも魔法使いが使ってそうな杖を持っています。彼女はパーティー最大の火力を持つマジックキャスターですね。
彼女の更に隣には、神官服を着た少し大人な女性、イリーナさんが優しい笑顔でこちらを見てきます。彼女は金髪に青い瞳で、長い金髪を腰のあたりまで伸ばしています。彼女の手にもレオナさん同様、杖が握られています。彼女はヒーラーでしょう。
見た感じとてもバランスの良さそうなパーティーの様です。前衛にアタッカーとタンク、後衛にマジックキャスターにヒーラーと冒険者パーティーにおいては典型的なパーティー構成です。
「初めまして、誓いの剣の皆さん。ご紹介に預かりました、旅人のグレイシアと言います。短い間ですがよろしくお願いします。そしてこちらが・・・」
「旅人のロシエルと申します。シア様共々、よろしくお願いします。」
私は彼らに自己紹介します。一様旅人だと言う事を言いましたが、ロシエルが普通に私のことを様付けして読んだことで、明らかに普通の旅人ではないと感じ取ったのか、困惑した表情を浮かべます。
「・・・ねえ、あれ絶対普通の旅人じゃないよね・・・」
「・・・ああ、明らかにどっかのお偉い貴族様の御令嬢だろう・・・後ろの美人な彼女も、見た感じメイドか従者っぽいしな・・・」
と言う感じで、後ろの方でカイさんとレオナさんが、コソコソと話していますが、吸血鬼であり普通の人間より五感が優れている私には、これぐらい距離が離れていてもばっちり話が聞こえます。
ヘンリさんも、彼らのコソコソ話が聞こえたのか、それとも自分でも同じことを思っていたのか、苦笑いを浮かべます。イリーナさんは終始笑顔のままです。
「じゃあ、改めて紹介させてもらうよ。俺はヘンリ。リカレオで誓いの剣のリーダーをやっている。」
「俺はカイだ。同じくリカレオで冒険者をやっている。よろしくな。」
「私はレオナよっ。街までの間だけど、よろしくね。」
「私はイリーナです。このご縁も神の思し召しでしょう。よろしくお願いします。」
改めて誓いの剣の方達が代わる代わる自己紹介してくれました。私が彼らと直接接してみた感じでは、悪い方達ではないと言うことは、今のやり取りだけでわかりました。
普通であれば例え、臨時のパーティーメンバーからの紹介でも、こんな森の中で怪しい二人組を連れて紹介したのにも関わらず、きちんと接してくれました。
そこから分かる通り、彼らは優秀でいい冒険者なのでしょう。私みたいなフードで顔を隠して接して入りにも関わらず、何も追求してこないところなどが、好感が持てます。
ヘンリさんは、自分たちが名乗り終わったことで、ラティナさんと改まって次の話に移りました。
「未だに信じられませんが、ラティナさんが言うのであれば、信じましょう。それで、ジェネラルの死体はどうしたんですか?もし、そのままの場所に置いてあるなら、急いで回収しに行きますが。今回のは、ちょっといつもと事情が違いますから、討伐証拠の部位だけでは、ダメでしょうし・・・」
これも、合流するまでにラティナさんから聞いた話ですが、どうやら今回の討伐目標であるジェネラルは普通とは違うそうで、何やら厄介事が絡んでいるそうだとか。
なので、どんな厄介事が潜んでいるか知るためにも、情報は多い方がいいらしいので、普段は地面に埋めたり火葬するゴブリンの死体をギルドに持っていこうと言うことらしいです。
ちなみに普通の魔物であれば、死体から素材が剥ぎ取れるのですが、ゴブリンからは装備以外の有益な物は回収できません。その装備でさえゴブリンが使っていた物なので、手入れがされておらず、まともに使えません。
「そのことなんだけど、実はグレイシアちゃんがジェネラルの死体を街まで持っていってくれるそうよ。」
「えっ?それはどう言う・・・」
ラティナさんの話にヘンリさんが困惑の表情を浮かべます。それも当然で、今の私は何も持っていませんし、後ろにも2メートルを越すゴブリン・ジェネラルの死体はどこにこありません。そのためヘンリさん達は余計に困惑の表情を浮かべ、私とラティナさんの間で視線を彷徨わせています。
「実は彼女、マジックポーチ持ちなのよ。だからジェネラルぐらいの大きさなら楽々持ち運べるそうよ。」
「えっ!?マジックポーチをっ!?」
「「「・・っ!?」」」
ラティナさんから話を聞いた誓いの剣の方達は、私がマジックポーチを所持していることに驚いて、次いで私のことを凝視してきます。
「マジックポーチと言やぁ、貴重な魔道具じゃねえかっ・・・!?」
「そうよっ、最低でも金貨10枚はするわっ・・・!」
カイさんとレオナさんの二人が今の話を聞き、少し興奮した様子で、今度はさっきよりも大きな声を上げて驚きました。
「やっぱりこの様な魔道具は貴重なんですか?」
「それはもちろんよ。ランクの低い物だったら、数年前から技術の発展で、それなりに市場に出回って、以前よりは身近なものになったけど、それでも十分貴重よ。」
常識を知らない私にラティナさんが丁寧に教えてくれました。
どうやらマジックポーチなどの物をたくさん持ち運べる類の魔道具は、一級魔道具職人の様な凄腕の職人か、ダンジョンや遺跡などの宝箱からしか入手できないとても貴重な物らしく、以前は大体貴族の中でも裕福な者たちか、大商人、あるいは高位の冒険者しか、所持している人はいなかったそうです。
私のこのマジックポーチは、女神様からの贈り物なので、そんな貴重な認識はありませんでした。それに、私にはブラッドボックスと言う収納系のスキルも持っているので余計に。
「気をつけたほうがいいわよ。貴重な魔道具を狙って、襲ってくる輩とかたくさんいるから。」
貴重な魔道具を狙われて襲われることはよくあるそうです。最悪の場合殺されてしまうことも。
そんなことを聞くと、人前では使うことを躊躇してしまいます。
「でも、今ではマジックポーチとかを持っている人がそれなりにいるから、使うことを躊躇しすぎることはないわ。それに、収納系のスキルを持っている人もいるから、それに比べたらマシな方よ。」
収納系のスキル保持者よりはマシな方・・・取り敢えず、ブラッドボックスは人前では使わない様にします。
「ご忠告ありがとうございます。これから注意していこうと思います。」
ラティナさんのアドバイスにお礼を言い、取り敢えずは様子見をしていこうと思います。
襲われるにしても、ロシエルは護衛として強いですし、私も戦うことはできますから、余程のことがない限りマジックポーチが奪われることはないでしょう。
「じゃあ、挨拶もこれぐらいにしてリカレオに帰還しましょうか。日も大分落ちてきたし、暮れる前には森を出ておきたいので。」
ヘンリさんが空を見上げつつ、そう言ってこれからの予定を皆んなに伝えました。
確かに彼らと合流してからそれなりに時間が経ちましたから、そろそろ移動しはじめたほうがいいでしょう。
完全に日が暮れてしまうと、森の中は真っ暗になってしまうので、動けなくなってしまいます。
それに、夜の間でも森の中ではいつ魔物が襲ってくるか分かりませんから、余計に危険です。
まあ、私は吸血鬼なので暗視のスキルで夜でも快適に過ごせますが、普通の人ではそうも言ってられませんからね。
私とロシエルはそれからラティナさんや誓いの剣の方達の先導の下、森の中を移動し、森を抜けていきます。
私たちは移動しながらも、あれやこれやと話しながら進んでいきました。
そんな途中で、レオナさんがこんなことを聞いてきました。
「そういえば、グレイシアちゃんたちはこの森の中で五日間も彷徨ったんだよね。森の様子って、どうだったの?」
「どうだったとは?」
「この森って、サルトレアの森って言って、つい最近まで立ち入りが規制されてた所なんだけど。何か変わったことってなかった?」
ラティナさんからこの森のことは大体説明されましたが、一ヶ月前となるとちょうど私が森を出てリカレオの街を目指そうとしはじめた時ですね。
しかし街を目指した初日には、グランドベアの異常種と遭遇し、ロシエルが倒したことがありました。
もしかすると、グランドベアの異常種とこの森の異変には何か関係があるのかもしれません。
どうやら今回のゴブリン・ジェネラルの件でも、怪しい男性が使役していたと言うことなので、無関係ということは恐らくないでしょう。
でも、そのことを話すとなると、転生のことや家のことなどを説明する必要が出てくるかもしれないので、ここでは言わないことにします。
「いえ、私にはそう言う変化というものは分かりませんでした。それに私は旅人なので、普段の森の様子を知りませんから、すみませんお役に立てず。」
「あ、いいの。ごめんね、無理言って。そうだよね、よその所から旅して来たんだから知らないのも当然だよね。」
そのあと、少し気まずい空気が漂いはじめたのを感じて、私は新しい話題を出しました。
「皆さんっ、リカレオの街はどんな所なんですか?」
「えっ、リカレオを知らないの?共和国でも結構有名な街なんだけど。」
「すみません・・・私たちこの国に来て日が浅く、まだこの国のことよく知らないんです。」
ふと思い立って、今向かっているリカレオについて彼らに聞いてみると、どうやらこの国ではそれなりに有名な都市の様で、すごく驚かれた、と言うよりも少し呆れられた様です。
「そうなのですか?・・・いい街ですよ、リカレオは。私たちもまだ一年程しか住んでいませんが、街の治安は他のところに比べてもいいほうですし、各種ギルドも揃っていますから、施設も充実しています。」
「そうそう。それにだ。街の近くに森や川、少し離れているが山もあってそこに鉱山まである。リカレオは豊富な資源があるからな、商人も大勢やって来て流通もいいぜ。」
「そして、なんといっても、リカレオは凍てつく山脈から一番近い都市だからね。あの山脈には竜が生息しているから、ドラゴンスレイヤーの称号を求めて、冒険者もたくさんやって来るよ。」
まず最初にイリーナさんが率直な感想を延べ、カイさんが街の周辺のとこを教えてくれます。そして、ヘンリさんが冒険者達の目標を教えてくれました。
彼らから聞くと、どうやらリカレオとは思った以上に栄えている都市のようです。
日記の中にはあまり街のことは書かれていなかったので、この情報はとてもタメになりました。
「ヘンリさん達も、名声を求めてリカレオに来たんですか?
先程イリーナさんが一年程しかまだ住んでいないと言っていたので、彼らも他の町から来たのか聞いてみると。
「いや、俺とカイは元々リカレオの出身だよ。小さい頃は憧れたけど、今では無謀なことはせずにコツコツと強くなる事を目標に冒険者をやっているよ。」
「もちろん強くなってAランクまで上り詰めたら、挑戦しようと思ってるぜ。」
ヘンリさんとカイさんは、子供の頃からの憧れていた竜退治は、冒険者になって強くなってからだそうです。
「私とイリーナは王都近くの街の出身だよ。リカレオには冒険者になるために来たの。ヘンリとカイとはリカレオに来てから知り合ったよ。」
どうやら、レオナさんとイリーナさんは別の町出身だそうで、二人とも子供の頃からの親友で、魔法学校を出た後はリカレオで冒険者となり、ヘンリさんとカイさんに出会った様です。
ヘンリさんとカイさんも小さい頃からの親友だそうで、そのまま一緒に冒険者になったそうです。
「どうしてリカレオで冒険者になったんですか?」
思いついた素朴な疑問をレオナさん達に聞いてみました。
「うん〜〜っ、リカレオはさっきも言ったけど、共和国の中では結構有名で、リカレオで冒険者になるのは、密かなみんなの憧れなの。」
「へえ〜そうなんですか?私たちも成ってみるのもいいかもしれませんね。ねっ、ロシエルっ。」
「そうですね。少々路銀も心許なく成って来たので、冒険者としておらいをこなし、お金を稼ぐのもいいかもしれません。」
これは、私とロシエルがリカレオについた後の、冒険者になるときの理由として、事前に考えていた設定です。
これで自然な形で冒険者になることができます。
それからしばらく街のことや冒険者の事を聞いていると、今度はラティナさんが私たちのこのについて尋ねてきました。
「そう言えば、貴方達はこの国の人じゃないといっていたけど、どこ出身なのかしら?」
「あ、ええと・・・ロシエルは元々この国の人で、私は・・・とても遠い島国の出身です。」
ラティナさんからの質問に、私は戸惑いながらも少し誤魔化して、私たちの出自を言います。
「へえ〜、ロシエルさんはこの国出身なんだね。グレイシアちゃんはもしかして、陽光ノ国出身なの?」
「陽光ノ国?」
陽光ノ国とは、まさかファンタジー系の物語によく出てくる、日本文化を持つ国の事でしょうか?
「あれ、違うの?」
「あ、いえ。・・・多分その国に近くですね。」
実際は私は陽光ノ国さえ知りませんが、ここはレオナさんの話に合わせておいたほうが、色々と都合が良さそうなので、そう言うことにしておきましょう。
「そろそろ森を抜けるよ。」
そして、そうこうしているうちに先頭を歩くヘンリさんが教えてくれます。
どうやらもうすぐ森の出口に到着するそうです。大分日も暮れて、周りは少しずつ闇に包まれ始めています。
いよいよこの森から出ることができます。ここまで来るのに本当に長かったです。
森を彷徨っていた間、時々魔物も襲って来るため、油断することはできませんでしたので、これでやっと気を休めることができそうです。
まあ、まだ街に着いたわけではないので、引き続き警戒は必要でしょうが、必要以上に警戒しなくてすみます。
それからすぐに視界の先で今まで永遠と続いていた森が唐突に途切れているところ
が見え始めました。
そして、黄金色になりつつある視界の光りの先に、私は転生してから数ヶ月の時を経て、やっとのことで森以外の景色を、紅に照らされた美しい壮大な平原をその目に焼き付けました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みくださりありがとうございます。誤字・脱字やアドバイスなどのご意見があればコメントしてください。
次回もよろしくお願いします。
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「はぁ〜〜〜」「ほぇ〜〜〜」「・・・・・」
私たちを(より正確に言えばロシエルを) 見つめる 4人の目には、未だに驚きの感情が色濃く表されていました。
「えっと・・・それでこちらの二人が・・・?」
「ええ、こちらの黒髪の彼女がロシエルちゃん。フードを被ってる子がグレイシアちゃんよ。ジェネラルを倒したのはロシエルちゃんの方よ。」
ラティナさんはそう言って私たちを彼らに紹介しました。
今ラティナさんは、私たちが旅人として5日間の間森を彷徨っていたこと、偶然ラティナさんが追っていたゴブリン・ジェネラルをロシエルが華麗に討伐したこと、森から出るために一緒に同行することなどを掻い摘んで説明してくれています。
私たちの目の前にいる方達が、ラティナさんと一緒に依頼を受けた冒険者パーティーの「誓いの剣」のメンバーでしょう。
彼らについては事前にラティナさんから説明があり、大雑把に誰が誰だかは分かりました。
最初に、他の方より一歩前に出て、ラティナさんと話をしている方がこのパーティーのリーダーのヘンリさんでしょう。
ヘンリさんは茶髪に茶色の瞳を持つ、一見好青年と言った顔立ちの男性です。装備は、所々に金属が使われた革鎧の軽装です。腰にはバスターソードと思われる剣を挿していて、腕には小楯を装備しています。恐らく遊撃を行いながら攻撃するアタッカーでしょう。
彼の後ろでは、全身を金属の鎧で固めたちょっとヤンチャそうな男性、彼がカイさんと言う方でしょう。こちらは焦茶色の髪で黒い瞳をしています。彼の傍には、身の丈ほどの大きな盾が置いてあり、腰にも片手剣を挿しています。彼だけすごく頑丈そうな見た目なので、彼がパーティーの守護者的な存在であるタンクでしょう。
彼の隣には、いかにも魔法使いですよと言った装いの少し小柄な女性が立っています。彼女がレオナさん、見た目通りの典型的な魔法使いだそうです。外見は少し明るい赤髪を持ち、同様の瞳の色をしています。手には、いかにも魔法使いが使ってそうな杖を持っています。彼女はパーティー最大の火力を持つマジックキャスターですね。
彼女の更に隣には、神官服を着た少し大人な女性、イリーナさんが優しい笑顔でこちらを見てきます。彼女は金髪に青い瞳で、長い金髪を腰のあたりまで伸ばしています。彼女の手にもレオナさん同様、杖が握られています。彼女はヒーラーでしょう。
見た感じとてもバランスの良さそうなパーティーの様です。前衛にアタッカーとタンク、後衛にマジックキャスターにヒーラーと冒険者パーティーにおいては典型的なパーティー構成です。
「初めまして、誓いの剣の皆さん。ご紹介に預かりました、旅人のグレイシアと言います。短い間ですがよろしくお願いします。そしてこちらが・・・」
「旅人のロシエルと申します。シア様共々、よろしくお願いします。」
私は彼らに自己紹介します。一様旅人だと言う事を言いましたが、ロシエルが普通に私のことを様付けして読んだことで、明らかに普通の旅人ではないと感じ取ったのか、困惑した表情を浮かべます。
「・・・ねえ、あれ絶対普通の旅人じゃないよね・・・」
「・・・ああ、明らかにどっかのお偉い貴族様の御令嬢だろう・・・後ろの美人な彼女も、見た感じメイドか従者っぽいしな・・・」
と言う感じで、後ろの方でカイさんとレオナさんが、コソコソと話していますが、吸血鬼であり普通の人間より五感が優れている私には、これぐらい距離が離れていてもばっちり話が聞こえます。
ヘンリさんも、彼らのコソコソ話が聞こえたのか、それとも自分でも同じことを思っていたのか、苦笑いを浮かべます。イリーナさんは終始笑顔のままです。
「じゃあ、改めて紹介させてもらうよ。俺はヘンリ。リカレオで誓いの剣のリーダーをやっている。」
「俺はカイだ。同じくリカレオで冒険者をやっている。よろしくな。」
「私はレオナよっ。街までの間だけど、よろしくね。」
「私はイリーナです。このご縁も神の思し召しでしょう。よろしくお願いします。」
改めて誓いの剣の方達が代わる代わる自己紹介してくれました。私が彼らと直接接してみた感じでは、悪い方達ではないと言うことは、今のやり取りだけでわかりました。
普通であれば例え、臨時のパーティーメンバーからの紹介でも、こんな森の中で怪しい二人組を連れて紹介したのにも関わらず、きちんと接してくれました。
そこから分かる通り、彼らは優秀でいい冒険者なのでしょう。私みたいなフードで顔を隠して接して入りにも関わらず、何も追求してこないところなどが、好感が持てます。
ヘンリさんは、自分たちが名乗り終わったことで、ラティナさんと改まって次の話に移りました。
「未だに信じられませんが、ラティナさんが言うのであれば、信じましょう。それで、ジェネラルの死体はどうしたんですか?もし、そのままの場所に置いてあるなら、急いで回収しに行きますが。今回のは、ちょっといつもと事情が違いますから、討伐証拠の部位だけでは、ダメでしょうし・・・」
これも、合流するまでにラティナさんから聞いた話ですが、どうやら今回の討伐目標であるジェネラルは普通とは違うそうで、何やら厄介事が絡んでいるそうだとか。
なので、どんな厄介事が潜んでいるか知るためにも、情報は多い方がいいらしいので、普段は地面に埋めたり火葬するゴブリンの死体をギルドに持っていこうと言うことらしいです。
ちなみに普通の魔物であれば、死体から素材が剥ぎ取れるのですが、ゴブリンからは装備以外の有益な物は回収できません。その装備でさえゴブリンが使っていた物なので、手入れがされておらず、まともに使えません。
「そのことなんだけど、実はグレイシアちゃんがジェネラルの死体を街まで持っていってくれるそうよ。」
「えっ?それはどう言う・・・」
ラティナさんの話にヘンリさんが困惑の表情を浮かべます。それも当然で、今の私は何も持っていませんし、後ろにも2メートルを越すゴブリン・ジェネラルの死体はどこにこありません。そのためヘンリさん達は余計に困惑の表情を浮かべ、私とラティナさんの間で視線を彷徨わせています。
「実は彼女、マジックポーチ持ちなのよ。だからジェネラルぐらいの大きさなら楽々持ち運べるそうよ。」
「えっ!?マジックポーチをっ!?」
「「「・・っ!?」」」
ラティナさんから話を聞いた誓いの剣の方達は、私がマジックポーチを所持していることに驚いて、次いで私のことを凝視してきます。
「マジックポーチと言やぁ、貴重な魔道具じゃねえかっ・・・!?」
「そうよっ、最低でも金貨10枚はするわっ・・・!」
カイさんとレオナさんの二人が今の話を聞き、少し興奮した様子で、今度はさっきよりも大きな声を上げて驚きました。
「やっぱりこの様な魔道具は貴重なんですか?」
「それはもちろんよ。ランクの低い物だったら、数年前から技術の発展で、それなりに市場に出回って、以前よりは身近なものになったけど、それでも十分貴重よ。」
常識を知らない私にラティナさんが丁寧に教えてくれました。
どうやらマジックポーチなどの物をたくさん持ち運べる類の魔道具は、一級魔道具職人の様な凄腕の職人か、ダンジョンや遺跡などの宝箱からしか入手できないとても貴重な物らしく、以前は大体貴族の中でも裕福な者たちか、大商人、あるいは高位の冒険者しか、所持している人はいなかったそうです。
私のこのマジックポーチは、女神様からの贈り物なので、そんな貴重な認識はありませんでした。それに、私にはブラッドボックスと言う収納系のスキルも持っているので余計に。
「気をつけたほうがいいわよ。貴重な魔道具を狙って、襲ってくる輩とかたくさんいるから。」
貴重な魔道具を狙われて襲われることはよくあるそうです。最悪の場合殺されてしまうことも。
そんなことを聞くと、人前では使うことを躊躇してしまいます。
「でも、今ではマジックポーチとかを持っている人がそれなりにいるから、使うことを躊躇しすぎることはないわ。それに、収納系のスキルを持っている人もいるから、それに比べたらマシな方よ。」
収納系のスキル保持者よりはマシな方・・・取り敢えず、ブラッドボックスは人前では使わない様にします。
「ご忠告ありがとうございます。これから注意していこうと思います。」
ラティナさんのアドバイスにお礼を言い、取り敢えずは様子見をしていこうと思います。
襲われるにしても、ロシエルは護衛として強いですし、私も戦うことはできますから、余程のことがない限りマジックポーチが奪われることはないでしょう。
「じゃあ、挨拶もこれぐらいにしてリカレオに帰還しましょうか。日も大分落ちてきたし、暮れる前には森を出ておきたいので。」
ヘンリさんが空を見上げつつ、そう言ってこれからの予定を皆んなに伝えました。
確かに彼らと合流してからそれなりに時間が経ちましたから、そろそろ移動しはじめたほうがいいでしょう。
完全に日が暮れてしまうと、森の中は真っ暗になってしまうので、動けなくなってしまいます。
それに、夜の間でも森の中ではいつ魔物が襲ってくるか分かりませんから、余計に危険です。
まあ、私は吸血鬼なので暗視のスキルで夜でも快適に過ごせますが、普通の人ではそうも言ってられませんからね。
私とロシエルはそれからラティナさんや誓いの剣の方達の先導の下、森の中を移動し、森を抜けていきます。
私たちは移動しながらも、あれやこれやと話しながら進んでいきました。
そんな途中で、レオナさんがこんなことを聞いてきました。
「そういえば、グレイシアちゃんたちはこの森の中で五日間も彷徨ったんだよね。森の様子って、どうだったの?」
「どうだったとは?」
「この森って、サルトレアの森って言って、つい最近まで立ち入りが規制されてた所なんだけど。何か変わったことってなかった?」
ラティナさんからこの森のことは大体説明されましたが、一ヶ月前となるとちょうど私が森を出てリカレオの街を目指そうとしはじめた時ですね。
しかし街を目指した初日には、グランドベアの異常種と遭遇し、ロシエルが倒したことがありました。
もしかすると、グランドベアの異常種とこの森の異変には何か関係があるのかもしれません。
どうやら今回のゴブリン・ジェネラルの件でも、怪しい男性が使役していたと言うことなので、無関係ということは恐らくないでしょう。
でも、そのことを話すとなると、転生のことや家のことなどを説明する必要が出てくるかもしれないので、ここでは言わないことにします。
「いえ、私にはそう言う変化というものは分かりませんでした。それに私は旅人なので、普段の森の様子を知りませんから、すみませんお役に立てず。」
「あ、いいの。ごめんね、無理言って。そうだよね、よその所から旅して来たんだから知らないのも当然だよね。」
そのあと、少し気まずい空気が漂いはじめたのを感じて、私は新しい話題を出しました。
「皆さんっ、リカレオの街はどんな所なんですか?」
「えっ、リカレオを知らないの?共和国でも結構有名な街なんだけど。」
「すみません・・・私たちこの国に来て日が浅く、まだこの国のことよく知らないんです。」
ふと思い立って、今向かっているリカレオについて彼らに聞いてみると、どうやらこの国ではそれなりに有名な都市の様で、すごく驚かれた、と言うよりも少し呆れられた様です。
「そうなのですか?・・・いい街ですよ、リカレオは。私たちもまだ一年程しか住んでいませんが、街の治安は他のところに比べてもいいほうですし、各種ギルドも揃っていますから、施設も充実しています。」
「そうそう。それにだ。街の近くに森や川、少し離れているが山もあってそこに鉱山まである。リカレオは豊富な資源があるからな、商人も大勢やって来て流通もいいぜ。」
「そして、なんといっても、リカレオは凍てつく山脈から一番近い都市だからね。あの山脈には竜が生息しているから、ドラゴンスレイヤーの称号を求めて、冒険者もたくさんやって来るよ。」
まず最初にイリーナさんが率直な感想を延べ、カイさんが街の周辺のとこを教えてくれます。そして、ヘンリさんが冒険者達の目標を教えてくれました。
彼らから聞くと、どうやらリカレオとは思った以上に栄えている都市のようです。
日記の中にはあまり街のことは書かれていなかったので、この情報はとてもタメになりました。
「ヘンリさん達も、名声を求めてリカレオに来たんですか?
先程イリーナさんが一年程しかまだ住んでいないと言っていたので、彼らも他の町から来たのか聞いてみると。
「いや、俺とカイは元々リカレオの出身だよ。小さい頃は憧れたけど、今では無謀なことはせずにコツコツと強くなる事を目標に冒険者をやっているよ。」
「もちろん強くなってAランクまで上り詰めたら、挑戦しようと思ってるぜ。」
ヘンリさんとカイさんは、子供の頃からの憧れていた竜退治は、冒険者になって強くなってからだそうです。
「私とイリーナは王都近くの街の出身だよ。リカレオには冒険者になるために来たの。ヘンリとカイとはリカレオに来てから知り合ったよ。」
どうやら、レオナさんとイリーナさんは別の町出身だそうで、二人とも子供の頃からの親友で、魔法学校を出た後はリカレオで冒険者となり、ヘンリさんとカイさんに出会った様です。
ヘンリさんとカイさんも小さい頃からの親友だそうで、そのまま一緒に冒険者になったそうです。
「どうしてリカレオで冒険者になったんですか?」
思いついた素朴な疑問をレオナさん達に聞いてみました。
「うん〜〜っ、リカレオはさっきも言ったけど、共和国の中では結構有名で、リカレオで冒険者になるのは、密かなみんなの憧れなの。」
「へえ〜そうなんですか?私たちも成ってみるのもいいかもしれませんね。ねっ、ロシエルっ。」
「そうですね。少々路銀も心許なく成って来たので、冒険者としておらいをこなし、お金を稼ぐのもいいかもしれません。」
これは、私とロシエルがリカレオについた後の、冒険者になるときの理由として、事前に考えていた設定です。
これで自然な形で冒険者になることができます。
それからしばらく街のことや冒険者の事を聞いていると、今度はラティナさんが私たちのこのについて尋ねてきました。
「そう言えば、貴方達はこの国の人じゃないといっていたけど、どこ出身なのかしら?」
「あ、ええと・・・ロシエルは元々この国の人で、私は・・・とても遠い島国の出身です。」
ラティナさんからの質問に、私は戸惑いながらも少し誤魔化して、私たちの出自を言います。
「へえ〜、ロシエルさんはこの国出身なんだね。グレイシアちゃんはもしかして、陽光ノ国出身なの?」
「陽光ノ国?」
陽光ノ国とは、まさかファンタジー系の物語によく出てくる、日本文化を持つ国の事でしょうか?
「あれ、違うの?」
「あ、いえ。・・・多分その国に近くですね。」
実際は私は陽光ノ国さえ知りませんが、ここはレオナさんの話に合わせておいたほうが、色々と都合が良さそうなので、そう言うことにしておきましょう。
「そろそろ森を抜けるよ。」
そして、そうこうしているうちに先頭を歩くヘンリさんが教えてくれます。
どうやらもうすぐ森の出口に到着するそうです。大分日も暮れて、周りは少しずつ闇に包まれ始めています。
いよいよこの森から出ることができます。ここまで来るのに本当に長かったです。
森を彷徨っていた間、時々魔物も襲って来るため、油断することはできませんでしたので、これでやっと気を休めることができそうです。
まあ、まだ街に着いたわけではないので、引き続き警戒は必要でしょうが、必要以上に警戒しなくてすみます。
それからすぐに視界の先で今まで永遠と続いていた森が唐突に途切れているところ
が見え始めました。
そして、黄金色になりつつある視界の光りの先に、私は転生してから数ヶ月の時を経て、やっとのことで森以外の景色を、紅に照らされた美しい壮大な平原をその目に焼き付けました。
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最後までお読みくださりありがとうございます。誤字・脱字やアドバイスなどのご意見があればコメントしてください。
次回もよろしくお願いします。
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