邪神の力の一部で不死になったんだが!?

Mikuzi

誕生日に愕然としよう


 顔が少しヒリヒリする感覚がある。少しずつ日の光も増していき、だんだんとその痛みが強くなる。身体全体が痛みを感じ始めると氷餓はそこで目が覚めた。


 「痛い!?なにっ一体!?」


 高いソプラノボイスで悲鳴のような驚きの声が響いた。

 痛みに飛び起きて周囲を見回して見ると、どうやら何処かの建物の中に寝かされていたようだ。


「ここは・・・どこ?なんでこんなところで寝てるんだろう。それに身体中ヒリヒリする。」


 その呟きはどこから聞こえてくるのか、僕が感じていることと全く同じことを呟いた。

 僕の体はまるで酷い日焼けをした後のようなジリジリと焼ける痛みが身体中を突きさす。


 「どう言う事?」


 また鈴がなるような綺麗な声がすぐ側から聞こえた。と、そこで異常に気が付いた。


 「うん?この声、もしかして僕が喋ってるっ!?なんでこんな異様に高い声に・・まるで女の子のよう・な・・」


 (それにやけに視線がいつもより低いしそれに空気が直接体にあたってる感覚がする。)


 体の違和感に気がつき視線を下に下げると・・そこには発育途中の小山に膨らんだ胸が存在し、股には男ならあって然るべきアレが無い。


 「えっ・・なんで胸が膨らんで・・それに・・無い!?どうなってるのっ!?」


 あまりの衝撃に思考停止して呆然と自分の身体を見下ろした。頭を下げたことで長くなっていた髪が垂れた。細くなった自分の指で髪を摘み目の前に持ってくる。髪は日の光を反射し銀色の輝きを放っている。


 「これじゃまるでって言うか、もう何処からどう見ても女の子の身体だよね・・」


 そのまま数分間の間放心状態が続いたが、しばらくして一旦落ち着き、状況を把握しようと周囲を見渡す。しかし、やっぱりと言うか、ここはまったく知らない建物の中だった。

 寝かされていた建物は小さな教会のような内装で周りに椅子こそないが壁は少しくすんだ色ガラスがはめられており天井はドーム状になっている。


 「気を失う前は、確か大学に行こうと駅に向かって・・それから・・そう、通り魔に襲われてそこから天国みたいな何もない白い空間でアストルティア様に出会って、そして転生したはず・・ってことはここが異世界?」


 (見る限り異世界とは分からないけど。
記憶が少し曖昧だけど、少しずつ思い出してきた。そうだ、あの空間でアストルティア様に出会って異世界へ転生させてくれたんだ。でも、なんで女の子になっているんだ?確かに性別とか選択していなかったけど、それは普通に考えて男のまま転生させてくれるものだと思っていたから敢えて何も言ってなかったけど。と、とりあえず一回落ちこう・・こう言う時は深呼吸が大切だ。)


 「スウ〜・・ハァ〜・・スウ〜・・ハァ〜・・よしっ、一回ここが何処なのか調べよう。それと何か着るものも探さないと。」


 (さっきは気にするが余裕はなかったけど、一回落ち着いたことで自分の身体を意識してしまう。それにまた取り乱しちゃうから早く何か見つけないと。)


 「て、言うかさっきから身体がヒリヒリするんだけど、なんでだろ?」


 (まだ、この綺麗な声が自分の物だと思えなくて違和感を感じるけど、今は目が覚める要因になったこの謎の痛みは一体なんなのか考えよう。それに身体が少し怠い感じがするし。)


 「もしかしてって言うか、これって絶対《吸血種》の特性だよね。どうしようかな。あっ、でも〔不死の回復〕で常時回復され続けるから大丈夫かな?」


 確か僕が持っている邪神の力は〔不死の回復〕。その力は常に肉体を回復し続け、常に正常な状態を保つ効果だ。恐らく大丈夫だと思う。でもやっぱり何か着るものが欲しい。


 「うぅ〜ん・・・あっ、アストルティア様・・」


 何か着るものがないか周囲を見回していると、寝かされていた場所のちょうど真後ろを見た時だ。そこには先ほどまで僕に異世界で生きていくための助言など色々と助けてくれた女神様が立っていた。
 しかし先ほどの白い空間で出会った時の様な白い肌に輝く金髪と青い瞳を持っていたアストルティア様と違い、このアストルティア様は全体が真っ白な石材でできた神像だった。


 「うん?・・何かある。なんだろう?」


 よく見てみると石像の足元には台座のようになっており、本来は供物のようなものを置くと思はれる所にはいくつかの物が置かれていた。
 眠っていた寝台から降りて床に足を下ろし石像の近くまで近寄ってみた。台座の上には小綺麗な女性用と思われる衣服とウエストポーチのような鞄、そして手紙とその上に鈍い光を反射する指輪が置かれていた。


 「これって僕が着ていいんだよね?たぶん・・」


 周りに誰か居るようには見えないけど、一様聞いてみたけど、やっぱり誰もいないのか返事は返ってこなかった。


 「取り敢えずこれを着るしか無いか。それに、いい加減裸は寒い。」


 台座に置かれた服を手に取って見てみると、やはりそれは女性用で見るからに上物の生地に手触りは滑らか、白を基調としたレースが編み込まれた清楚な印象を受けるそんな服だった。下も同じ様な基調で膝下まであるスカートでこちらもレースがあしらはれている。

 そして、やはり女性用の服なので当然『アレ』もある。


 「ウッ・・やっぱり付けないといけないよね、下着・・・」


 (当然こう言うものはきちんとつけなければ後で肌が傷付いたり腫れたりしちゃうし、身体を動かすときに違和感を覚えるだろうから付けない理由はない。けど、やっぱりコレを付けるには男としては抵抗が激しい。)


 「・・・はぁぁ〜、覚悟を決めるかぁ」


 ・・・数分後やっとのことで服を着終わった。当然であるが女性用の下着など着たことなどないためブラジャーのフックなど付けようとして五分は掛かった。それからスカートは股がスースーして未だに落ち着かない。

 改めて台座の上を見る。まずはウエストポーチを見てみるが特に変わったものではなくベルトと一体化している様な形だ。中身は何も入っておらず、アストルティア様からの選別なのかもしれない。ただ少し違和感の様なものを感じるが今は他のものを見てみることにしよう。
 

 「あとは手紙と指輪だけだけど、この指輪からも何か違和感を感じる、でも取り敢えず指輪は詳しくはわからないから先に手紙を見よう。」


 便せんの中から紙を取り出して開いてみる。そこには今まで見たこともない文字で文章が綴られていた。


 「あぁそっかぁ〜ここは異世界なんだし日本語が通じる訳ないか。そうだよなぁ〜でも、どうしたものか。」


 しばらく「うぅ〜ん」と読めない文字を見ながら唸っていると、急に頭の中で知らない知識が思い出される様に浮かび上がってきて、目の文字に変化を起こし始めた。


 「えっ!?なんで文字が・・あ、いやっ違う。文字が変わってるんじゃなくて僕が少しずつ読める様になってきてる?もしかして異世界の文字が読めるスキルか何かを獲得したのかな。」


 (実際のところは分からないけど、これで手紙が読める。早速読んでみよう。)

 『これを読んでいると言うことは無事に転生できたようですね。よかったです。改めまして、先ほどぶりですね神崎さん、そして本当に申し訳ありませんっ!今神崎さんは女性の身体となっていて混乱していると思います。これは私たちの不手際が原因です。実はまたヴェルディトルが何か細工をした様で貴方の持つ彼の力〔不死の回復〕に性別が女性になる様にされていたのです。神崎さんが転生する時、すでに性別は女性に固定されており、そのまま転生が完了してしまったため、肉体は女性で生成され性別の変更は出来ないんです。一度だけでなく二度までも、本当にすみません。お詫びと言うにはおこがましいですが贈り物をしました。贈り物とその他の物の詳しい説明書は別の紙に書かれていますのでそちらを読んでください。それとステータスの確認なのですが、心の中でステータスオープンと呟けば転生する前に見ていたあの板が出現されます。貴方の名前なんですが貴方が自由に付けてもらって大丈夫です。ただ《吸血種》の〈始祖〉はミドルネームが生まれた瞬間に決まるので、そこは御了承ください。是非もう一度確認してください。何度も申し訳ありませんが貴方の人生に幸いあらんことを。』


 「やっぱり身体が女の子になってたのって邪神のせいだったのか。まあ、そんな気はしてたよ。そして元に戻れないと・・あ〜ちょっとショックだなぁ。」


 女の子になった体で頭を垂れ、しばらくまた放心した。


 「はぁ〜さっきのもそうだけど、いつまでもグダグダしてる訳にもいかないし、前向きに行こう。時間は永遠に近いくらいあるけど、何をするにしても早い方がいいに決まってるからね。」


 (・・て、言うか今気がついたけど、なんか喋り方が女の子っぽくなってる。精神が体に引っ張られてるのかな?)


 そう思ったものの今は後回しにして、先ずはステータスを確認してみた。

 書かれていた通り心の中でステータスオープンと呟いてみた。


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 Name:    ・アル・
 Race:《吸血種》〈始祖〉
 Age:1    Sex:女
 Level:1    Exp:0/10000
 Blood:0/1100
 Skill: 
  ・武器系〈体術I〉
  ・魔法系〈闇魔法I〉〈水氷魔法I〉〈生活魔法I〉〈魔力感知I〉〈魔力操作I〉
  ・補助系〈暗視I〉〈鑑定I〉〈言語理解I〉
  ・種族系〈吸血I〉〈眷族化I〉〈再生I〉〈霧化I〉〈血の契約I〉〈ブラッドアームズI〉〈ブラッドボックスI〉〈魔眼I〉
 Ability: 
  ・強化系〈魔力強化I〉〈生命力強化I〉〈五感強化I〉
  ・補助系〈魔力効率I〉〈生命力回復I〉〈魔力回復I〉
  ・耐性系〈魔法耐性I〉〈光・神聖属性耐性−II(-III+I)〉〈日照耐性-II(-III+I)〉〈苦痛耐性I〉〈精神異常耐性I〉
  ・特殊系〈魔法の才〉〈武術の才〉
  ・種族系〈吸血効率I〉〈血液強化I〉〈血液操作I〉〈血液保有量増加I〉
 Gift:(〔不死の回復〕)〔冰血〕
 Title:〔異世界の転生者〕〔五人目の始祖〕

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 「アストルティア様が言ってたミドルネームって、この『アル』ってやつだよね。〈始祖〉ってミドルネームとかあるんだ。」


 吸血鬼については詳しく知らないが今は関係ない事だと思い名前を考えることに集中する。

 ミドルネームと言ったら中世ヨーロッパの貴族みたいだな。それに選んだ覚えのない〈言語理解〉のスキルがある。恐らくアストルティア様が言ってた経験を積む事で覚えたんだろうな。しかも称号のところ増えている。

 取り敢えず名前を決めて、次にアイテム確認、それからスキルを確認しようか。


 「うぅ〜ん名前かぁ、何がいいかな。こういうのって何か自分の特徴を名前にするのがテンプレってやつだけど・・単純に『神崎氷餓』の『氷餓』から『氷河』にして英語読みで『グレイシア』にしようかな。うん、ちょうど女の子の名前っぽいしちょうどいいね。」


 そんなこんなでファーストネームは『グレイシア』に決まった。そんな単純でいいのかとも思ったがまあいいだろう。


 「よし、ファーストネームは決まったから次はラストネームだね。うぅ〜んこういう時は印象に残ってることなんだけど。」


 この時僕が思いたしたのは、僕が転生することになったあの日のことだった。
 あの日あのとき死ぬ間際に見たのは、白銀に輝く綺麗な雪の降る景色だった。


 「そうだあの景色、『雪が降る』事からイタリヤ語で『ネヴィカーレ』にしよう。よしこれで名前は決まっね。」


 ちょうど大学の講義でイタリア語を習っていたからいい物が思いついた。
 そして見事に名前が雪とか氷に関係するものになったな。しかも魔法にも〈水氷魔法〉があるから、余計に寒い印象を受けるな。


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    ーーーーーーーーーー

 Name:グレイシア・アル・ネヴィカーレ
 Race:《吸血種》〈始祖〉
 Age:1    Sex:女
 Level:1    Exp:0/10000
 Blood:0/1100
 Skill: 
  ・武器系〈体術I〉
  ・魔法系〈闇魔法I〉〈水氷魔法I〉〈生活魔法I〉〈魔力感知I〉〈魔力操作I〉
  ・補助系〈暗視I〉〈鑑定I〉〈言語理解I〉
  ・種族系〈吸血I〉〈眷族化I〉〈再生I〉〈霧化I〉〈血の契約I〉〈ブラッドアームズI〉〈ブラッドボックスI〉〈魔眼I〉
 Ability: 
  ・強化系〈魔力強化I〉〈生命力強化I〉〈五感強化I〉
  ・補助系〈魔力効率I〉〈生命力回復I〉〈魔力回復I〉
  ・耐性系〈魔法耐性I〉〈光・神聖属性耐性−II(-III+I)〉〈日照耐性-II(-III+I)〉〈苦痛耐性I〉〈精神異常耐性I〉
  ・特殊系〈魔法の才〉〈武術の才〉
  ・種族系〈吸血効率I〉〈血液強化I〉〈血液操作I〉〈血液保有量増加I〉
 Gift:(〔不死の回復〕)〔冰血〕
 Title:〔異世界の転生者〕〔五人目の始祖〕

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