3話 異世界召喚って俺だけじゃないの？

　気がつくとそこは弱々しく光る小さな石しか光がない暗い石で作られている部屋だった。

　ここはどこだ？と考えた刹那フィレーナとの別れを思い出し、胸に穴の空いたような痛みと儚い気持ちに襲われる。

「ここはどこだ！ どうしてこんな所に？」

　暗闇の中声がする方を向くと、辛うじて男と分かる姿が見える

　光る石の近くに行き座っていると、男の他にも人が居たらしく2人集まってくる。

　近寄ってくる2人はどちらも女子高校生で美人のようだ。1人は女の子にしては大きく170cmぐらいのモデルのような体型で少し染めている茶色の長髪が見える。目が合うがすぐにそらして少し離れたところに座った。

　もう1人は身長155cmぐらいの短髪で、運動部なのか日に焼けて健康そうな褐色の子だ。目が合うと少し遠慮がちに話しかけてきた。

「すいません。ここがどこだか分かりますか？」

「ここは、ヴァーガンガルムっていう異世界ですよ。」

「えっ？ 異世界ですか？」

　すると最初に見えた男がこちらに詰め寄ってきて話してきた。

「おい！ あんたここが異世界ってどういうことだよ！説明しろよ！」

　男がそう言うとさっき目を逸らした女の子が話しかけてきた。

「もしここが異世界だとして、なんであんた場所をしてるの？ あんたがここに連れてきたの？」

「どういうことだ？お前が誘拐してここに監禁してるのか？」

「どういうことだ？お前らここに来る前に神様に合わなかったのか？ 」

「神様？ そんなのいるわけないだろ！真面目に答えろ！ 」

　と、男が胸ぐらを掴んだ瞬間部屋中に石が擦れる音と強烈な光が広がった。

　音と光の発生源を見ると石でできた扉が開き白いローブを着た人影が3つ入ってきた。

「勇者の皆様。この度は勇者召喚に応じて頂き誠に、ありがとうございます。会議室の方で国王様、王女様がお待ちです。そちらの方で説明などをしますので案内致します。」

　そう言うと、声をかけてきた人は女性だったようで、ローブをつまみ膝をまげ、頭を下げると部屋を出ていく。

「おい！まてよ！ 勇者ってなんだ？ なんでここにいるのか説明しろ！ 」

　そう言って詰め寄るとがたいのいいローブ男2人が出て来て、男はたじろぐ。

　女の子2人はローブの女性の後をついて行くので渋々喚いていた男も後に続く。

　部屋から出て窓の外に目をやるとそこには、とても美しく色鮮やかな庭園が拡がっていた。だが、立ち止まっていると、ローブに男に早く来るように言われた。

　外から見える建物を考えるにここはよくある中世ヨーロッパのようだ。そんなことを考えていると会議室に着いたようだ。ローブの女性はノックをすると勇者様を連れてまいりましたと言い扉を開ける。

　部屋に入った瞬間目に飛び込んできたのは大きなシャンデリア。それもとても大きい。さらに綺麗な宝石や、動物のような装飾がされていた。視線を下げると壁は白を基調として金色の模様が描かれていて、椅子はとても座り心地が良さそうで見ただけでアンティークの品と分かる。机は白に布をかけ果物や飲み物が置かれどれを見ても高級品だ。

　部屋を見渡していると座りたまえ言われた。声をかけてきた男は如何にも王様という格好をしている。その横には王女様だろうか、薄い蒼色のドレスを着飾り軽くウェイブのかかった美しい蒼色の長い髪に赤い宝石のついた髪飾りをしている少女がいた。

　椅子に近づくとメイドが椅子を引いてくれ、全員が座ると男が口を開いた。

「我はこの国を治めるガリウス・エルド・エルティースと言う。勇者の皆よ、この国を救うための勇者召喚に応じてくれたことに礼を言おう。」

「勇者召喚ってなんだ?! ここはどこなんだ?!」

　また、男が喚き散らし立ち上がると王の後ろにいた騎士に押さえつけられてた。

「国王陛下に向かってなんたる無礼。」

「よい。勇者も突然の事で混乱しているのだろう。少しの無礼は目をつむる。」

「現状の説明をして欲しいと思うが。自己紹介をしてくれぬか。」

「俺の名前は、佐藤京介だ。見ての通り高校生だ。」

「高校生とはなんだ？」

「高校生って学生のことよ。小学校、中学校、高校って3つあってそれぞれ6年、3年、3年あるの。それで私の名前は今井茉弥、高校生よ」

「私の名前は朱雀野真凛愛すさがのまりあです。私も高校生です。」

「俺の名前は鏑木燈夜だ。俺も高校生だ。」

「なるほど。4人とも学生なのか。なら娘のティアと同い年ぐらいか？ 
　」

「私の名前はティアと申します。歳は17です。皆さんよろしくお願いします。」

「ではなぜ勇者を召喚したのか説明をしよう。この国は魔族という存在に長い間苦しめられているのだ。魔族はとても強く我らが束になっても手も足も出ない。魔族領に近い村や町は魔族に襲われ無惨に殺されたり攫われたりしておる。」

「そんな時にティアが神様からの天啓を受けたのだ。 勇者を召喚しろと。召喚の方法はこの国の禁書庫の中にあると。 どうかこの国を救ってはくれぬか？頼むこの通りじゃ」

　そう言って王が頭を下げる。

「ちょっと待てよ！ 俺達にそんな力はないぞ！ ただの一般人だし！」

「召喚された勇者は皆、特別で強力な力を持っているとこの本には書いてある。ステータスを確認してくれぬか。」

「どうやって確認するんだよ！」

「ステータスと唱えてくれれば確認できるぞ。」

　そう言うとそれぞれステータスと唱えた。

　名前︰鏑木燈夜      種族︰ホムンクルス
　年齢︰170歳    ＬＶ：1

　ＨＰ：500/500         ＭＰ：500/500
　物攻：500                物防：500
　魔攻：500                魔防：500
　俊敏：500                器用：500
　知力：500                幸運：500

　技能スキル
　人工知能AI：Lvー
　亜空間庫アイテムボックス：Lvー
    　創造   ：Lv1
       　隠蔽    ：Lv5
       　神眼    ：Lvー

　ステータスを確認しているとスキルが増えているのに気づいた。

　〝 燈夜さん私はスキルのAIです。フィレーナからの伝言があります。〝 

　突然、頭の中でフィレーナの声がし燈夜は驚き立ち上がる。

「どうしたのだトーヤよ。」

　王に声をかけられ、再び座る。

　〝 燈夜さん頭の中で考えるだけで会話が出来ます。フィレーナからの伝言をお聞きになりますか？〝 

　〝 頭の中でって、どうやってやるんだ？ 伝言ってこの増えてるスキルのことか？〝

　〝その感じで大丈夫です。はいその通りです。伝言は。燈夜のステータスはこの世界じゃとっても高いの、だから悪い人に捕まったりするんじゃないかって思って隠蔽っていうステータスとかを隠せるスキルを挙げるね。あとひとつの神眼っていうスキルはこの世の全てを見ることが出来るスキルだよ。気をつけて生活してね。無茶しちゃめっ！だよ。これで以上になります〝

　俺は涙が出そうになるのを我慢し早く会いに行ってあげようと思うのだった。