ストレイ・ラム

Motoki-rhapsodos

第39話

二人で軽く食事を済ませてから学園に戻った俺達は、雨で運動場が使えない為に廊下や階段で基礎練習をする生徒達を縫うように避けて、自分達の隠れる場所を探した。

結局、全てのカーテンが引かれる頃には、俺達は屋上へと続くドアの前に座り込んでいた。

薄暗くなっていくと共に電気が消えて、人の気配も消えていく。暫くは外から聞こえていた、叫ぶようにはしゃぐ声もやがては聞こえなくなった。



辺りを闇と静寂だけが支配し始めた頃。

俺の隣。膝の上で顔を伏せるように寝ていた松岡が、不意に顔を上げた。

「暇だな……」

ボソリと呟いて、ゆっくりと階段を下りて行く。彼は真っ直ぐに中央階段へ向かうと三階に上がって手摺りに肘をつき、悩み出した。

「さて。何処に隠れるかな……」

ココココッ、ココココッ、と四本の指で手摺りを小突いてリズムを取る。自分の全身を映している筈の、黒い大鏡を見つめながら考え込んでいた。

「もし二人が現れるとしたら、この中央階段を上がって来るよな。それまで何処にいるべきだろ。各教室は鍵掛かってんし、西階段か東階段だよな……。でもそれだと、二人の動きが判りづらいんだよなぁ。どうするよ? 山下」

こちらを振り返った松岡に、肩を竦める。

「お前に任せるよ。それより、俺はこの真っ暗闇の方が気になる。あのペンライト、今日は持ってないのかよ?」

大して役に立たない代物だったが、まったく何もない闇よりは幾分もマシな筈だ。小さい明かりでも少しは気分を紛らわせてくれる。暗闇というのは、息苦しくなって仕方がないものなのだ。

大真面目で言ったのに、松岡はカクリと肩を落とした。ジッと俺を見つめる松岡の目は、さぞかし呆れているに違いない。

辺りが暗いお陰で、幸いそれを見ずに済んだが……。

「早く言え、そーゆう事は。アレは鞄の中だよ。……仕方ねぇな。取って来てやるから、ちょっと待ってろ」

そう言ってクルリと背を向けた松岡は、トントンと階段を下りて行った。踊り場を曲がって姿が見えなくなったと思った、――次の瞬間。

勢いよく舞い戻って来た松岡が、俺の手首を引いた。

「なっ……!」

もう少しで落ちそうになった俺の口を、松岡の手が塞ぐ。

「黙ってろ! 西階段から、来やがった……」

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